日米両首脳は今、選挙のことで頭の中がいっぱいであり、他のことに目を向ける余裕がない。ドナルド・トランプ米大統領は11月6日の中間選挙、そして安倍晋三首相が9月20日の自民党総裁選と30日の沖縄県知事選である。
まず、トランプ大統領。同大統領の元顧問弁護士マイケル・コーエン氏の司法取引による不倫疑惑モミ消し工作の法廷証言、米大統領選時の元トランプ選対本部長ポール・マナフォート氏の脱税・銀行詐欺容疑有罪などのスキャンダルが出来しても、トランプ大統領の支持率は大きく下がることはなかった。
ところが、思わぬ伏兵がいたのだ。8月25日に81歳で死去したジョン・マケイン上院議員(共和党。アリゾナ州選出)である。
9月1日に首都ワシントンDCのワシントン大聖堂で告別式が行われたが、党派を超えて、バラク・オバマ前大統領(民主党)、ジョージ・W・ブッシュ元大統領(共和党)、ビル・クリントン元大統領(民主党)ら歴代大統領をはじめ、米上下院議員のほとんどと議会関係者など多数が列席した。
そして招待されなかったトランプ大統領は、何と土曜日ではあるが、午前11時16分~15時37分までワシントンDCからポトマック河を渡ったバージニア州スターリングのトランプ・ナショナル・ゴルフクラブでプレーに興じていたのだ。
告別式で共和党大統領の先輩であるブッシュ氏は弔辞で、故マケイン氏を「権力の乱用を何より嫌い、偏狭で威張り散らす暴君に我慢がならなかった人物」とまで言い切った。もちろん、亡くなる直前までトランプ大統領の政治手法を批判してきたことを念頭に述べものだ。
ベトナム戦争の英雄であり、2008年大統領選でオバマ氏と戦ったマケイン氏の知名度は、米上院軍事委員長など要職を務めたキャリアよりも、その誠実な人柄と保守政治家としての信念が高く評価され、全米レベルでも抜群であった。
事実、同氏を偲ぶ追悼式は8月30日の地元アリゾナ州を皮切りに、31日にワシントンDCの米連邦議会議事堂、9月1日のワシントン大聖堂で相次いで行われ、そして2日にはホワイトハウスから車で1時間ほどのメリーランド州アナポリスの海軍兵学校内に埋葬された(故マケイン氏はベトナム戦争に従軍、乗っていた戦闘機が撃ち落されて当時の北ベトナムに約5年間拘束されたベトナム帰還兵)。
当然ながら、これらの追悼式、告別式、埋葬式はテレビ中継などで大々的に報道された。だが、トランプ大統領はいずれにも招待されなかった。それどころか、ニュース報道の力点は、英雄マケイン氏の功績と人柄を讃えたのとは対照的にトランプ氏の言動と人格を比較することにあった。この際、「偏向報道」であるか、どうかはおく。