エ・ランテル近くの街道にモモンたちはいた。
モモン、ナーベ、ぺテル、ルクルット、ダイン、ニニャ、そしてンフィーレア。
彼ら7人は歩いていた。ンフィーレアのみ馬車に乗っている。
ンフィーレア・バレアレの依頼とは薬草採集であった。ただし薬草採集するに至ってカルネ村なる場所に拠点を置いて活動するとのことだ。モモンは名指しの依頼でこそあったが先約として『漆黒の剣』と依頼を受けることを決めていたため一度は断った。しかしぺテルたちから受けるように言われたことに悩むとナーベから「依頼内容を聞くだけ聞いて二つ同時に出来たら受ける。それが出来なければ断るのはどうですか」と言われたのでその提案を受けて内容を聞いた。ちなみにその際にルクルットが「流石はナーベちゃん。頭いいっ!」とふざけた様に言ったのでナーベから睨まれていた。
結果として『漆黒の剣』の「ゴブリン討伐」とンフィーレアさんの「薬草採集」は同時にこなせると判断し『漆黒の剣』のメンバーの許可も取った為、現在行動を共にしている。
(しかし何故・・銅級である俺なんだ?)
ナーベは自慢げな顔をしてさも当然という様な顔をしていた。しかしモモンにとっては疑問であった。
(何かしたっけ?そもそも昨日冒険者の登録をしたばかりだぞ。俺たち。そんな俺たちの名前が知られているとも思えないし・・・。まさか宿屋で投げ飛ばした奴の友人だとか。それであの時の借りは返させてもらうぜとか・・・ありえそうだな。)
この時のモモンはほとんど世間を知らなかった。
実際にはンフィーレアは酒場の一件の詳細など知らず、あることのみを知っていたのだが。
モモンたちが知るのは少し後になる。
「ンフィーレアさんの生まれ持った才能<タレント>って凄いですよね!」
そう言って高揚しているのはぺテルであった。
「まぁ・・僕自身はともかくこの『生まれながらの異能<タレント>』は凄いと思いますよ。」
ンフィーレア・バレアレ。彼の持つ生まれながらの異能<タレント>は『あらゆるマジックアイテムを制限なく使用可能』というもの。その性質は本来であれば使えないはずの系統の違う巻物<スクロール>も使えるし、使用制限で人間以外とされているアイテムでも使えるらしい。これはぺテルの推測ではあるが王家の血が流れていなけらば使用できない様なアイテムでも問題なく使用できるとのことだ。
「・・・」
(彼自身は気が付いているのかしら?そのタレントは非常に便利でこそあるけどそれ以上に危険であることを・・・先程から彼と話している感じからして彼には悪意が無い、だけどもし誰か悪意のある者によって利用されたら・・・。そう・・例えばスレイン法国の様な国なら放っておかないだろう。)
ナーベはそう考える。
「どうしたナーベ?難しい顔をして。」
「いえ・・何も。少し考え事をしていただけです。」
この時ナーベが危惧したことは現実のものとなることをこの場にいる者は誰も知らなかった。
「・・・」
ルクルットがナーベを見ていることに気が付いたぺテルが声を掛けた。
「どうしたんだ?ルクルット。」
「いやー。考え事をしているナーベちゃんも可愛いと思ってな。」
「黙れ。ウジ虫。指を折りますよ。」
「いやー。勘弁してよぉ~。」
そう言って片方の手で頭を掻いて笑う。
(あっ・・これ反省してない時の顔だ。)
そうぺテルたち『漆黒の剣』のメンバーは気が付いたが口には出さなかった。
(・・・少しだけ・・ほんの少しだけチーノに似ているな。)
モモンは少しだけ感傷に浸る。
(・・・)
何となくナーベを見る。
(あれ?・・)
「この・・・」
ナーベがその様子を見て苛立ちを見せる。眉間に皺が寄る。
「そういえば、この辺りで何か危険なモンスターなどはいないのですか?」
モモンが場の雰囲気を変える為に話を切り出した。
「あっ・・この辺りには色々なモンスターがいますが・・」
ぺテルはモモンの意図をくみ取り話を合わせた。
それから場の雰囲気が変わる。
モンスターの話題はやがてシフトしていく。
「・・中でも『森の賢王』は強く、魔法を使うとか。」
「その者は警戒しなくてはなりませんね。」
(森の賢王・・・一体どんな奴なんだ?)
「モモンさん。」
ぺテルに声を掛けられた。
「ん。どうしましたか?」
「そろそろ森の横を通ります。警戒しておいて下さい。」
「分かりました。」
「ルクルット。お前も警戒しておいてくれ。」
「了解。リーダー。」
そう言ってルクルットは先程の雰囲気とは異なり真面目な顔をする。
(リーダーの一言で真剣になるか。良いチームだな。)
(・・・)
「噂をすれば来たぜ。」
そうルクルットが言うと森からゴブリンやオーガたちが現れた。
(さて・・やるか!)
そう考えるとモモンは背中の大剣を抜いた。