漆黒の英雄譚 作:焼きプリンにキャラメル水
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声を掛けられたモモンは戸惑った。
「そうですね・・」
モモンはそう言いながらナーベの方に目を向けた。
「私は構いませんよ。」
(冒険者のこと実はよく知らなかったし・・・聞いてみよう。)
「お話を聞かせてもらってもよろしいですか?」
「っ・・ありがとうございます!」
話を聞くと言ったことが嬉しかったのかぺテルが笑顔を見せた。随分と爽やかな表情だ。
(こういう人のことを好青年というのだろうなぁ・・)
そうモモンは思った。
「それでどこでお話を聞かせていただけるのでしょうか?」
「あそこです。」
ぺテルが指さした所には階段を上がった場所にスペースがある場所だ。
「あの場所は冒険者たちが話し合う場所として使用を許可されています。」
「そうなんですね。初めて知りました。」
そう言いながらモモンは二階へと上る階段を上がろうと・・
「あっ!すみません。実はその場所は許可を取ってからでないと使用できないんです。」
「許可・・ですか?」
許可という言葉を聞いてナーベの眉間に皺が寄る。「何故私たちが許可を取らねばならないのだろう」といった顔だ。
「はい。受付嬢の方にプレートを提示して許可を貰ってからでないと使用できないんです。まぁ・・ミスリル級にまで昇級すれば顔パスで通れるんですがね。」
「ならば早くミスリル級冒険者になりましょう。モモンさん。」
ナーベが口を開く。
「まぁ落ち着け。」
モモンがナーベを宥めている内にぺテルが受付でプレートを提示していた。
「それでは行きましょうか。」
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冒険者組合2F
「では自己紹介から始めましょうか。」
全員が同意を表す相槌を打つ。
「私が『漆黒の剣』のリーダーのぺテルです。」
いかにも好青年そうな雰囲気を出している。
「そこにいる弓の使い手が野伏<レンジャー>のルクルットです。」
「よろしくねぇっ。」
「そちらの椅子に座っているのがダインです。」
「よろしくなのであーる。」
「そして最後にこちらが我がチームの頭脳『術師<スペルキャスター>』のニニャです。」
「よろしく・・ぺテル、やっぱりその二つ名止めましょうよ。恥ずかしいですよ。」
「良き二つ名なのであーる。」
「以上です。そちらのお名前を伺っても?」
「・・私たちのチーム名はまだ決めていません。ですが・・私がリーダーのモモン。こちらがナーベです。」
「・・・よろしく」
ナーベが顔を僅かに上下させる。了解の意なのだろう。
「それで早速ですが依頼とは?」
「えー、実はですね・・・」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
「以上です。」
「成程。ゴブリンの討伐ですか・・」
「共同で受けて頂けますか?」
「はい。受けましょう。」
「ありがとうございます。」
「所で同じ依頼を受ける以上、顔を見せないのは失礼でしたね。」
そう言ってモモンは兜を脱いだ。
その顔を見て「漆黒の剣」のメンバーが全員感心する。
(黒髪黒目、僅かに浅黒い肌、この辺りでは見ない容姿であるだろうがナーベさんと同じ『人間』なのは確かだろう。そういえば南方ではこういった容姿の人たちがいると聞いたことがあるが・・南方の人間なのかな?)
「意外と歳いってるんだな。老け・・」ルクルット。
「男らしい顔つきなのである。」ダイン。
「男の人は顔じゃありませんよ。」ニニャ。
「これでも25歳なんですがね。」
「えっ。」
ぺテルが驚く。どう見ても30代の顔だったのだ。
要するに老けていたのだ。
「それでは行きましょうか。」
一同は階段を降りようとする。階段を降りようとしたモモンの前に受付嬢が飛び出てきた。
「すみません。モモンさん宛てに名指しの依頼が入ったのですが・・」
「私に?」
急な事でモモンは困惑する。
「それでその依頼主は?」
「こちらが今回の依頼人です。」
受付嬢が手を向けた先には少年が立っていた。
「初めまして。ンフィーレア・バレアレです。」
これがンフィーレア・バレアレとの出会いだった。
この時はまだお互いにどんな運命を辿るかなど知る由も無かった。