漆黒の英雄譚 作:焼きプリンにキャラメル水
<< 前の話 次の話 >>
エ・ランテルの街中を歩くパーティがいた。
その者たちの首から銀<シルバー>のプレートをぶら下げており、冒険者であることが分かる。
このパーティは今日は依頼を探すために冒険者組合に向かっていた。
「今日は何か良い依頼があるといいな。」
「そうだな。この前みたいにまたゴブリンでも狩るか?」
「それもいいですね。」
「だが油断は禁物なのであーる。」
「そろそろ冒険者組合ですよ。」
_________________________
ペテル・モーク
ルクルット・ボルブ
ダイン・ウッドワンダー
ニニャ
彼ら四人は『漆黒の剣』という銀級冒険者である。
________________________
エ・ランテル冒険者組合
「すみません。何か依頼はありますか?」
リーダーであるぺテルが受付嬢と話す。
「『漆黒の剣』のぺテル様ですね。」
そう言うと受付嬢はぺテルの首にぶら下がったプレートを確認する。
「銀級で受けられる依頼は・・・現在無いですね。」
そう言って受付嬢は一枚の紙を手渡す。ペテルはそこに書かれた内容に目を通す。
「ゴブリンの討伐は?」
ぺテルの言った内容はエ・ランテルの周辺にいるゴブリンたちの討伐。街の治安維持の為に冒険者組合が独自に出している依頼だ。
「えぇ。この依頼を引き受けられますか?」
ぺテルは仲間たちを見る。誰もが首を縦に振った。
「受けます。」
「かしこまりました。それでは手続きの方をしますのでお待ちください。」
・・・・・
・・・・・
・・・・・
・・・・・
それからぺテルたちは待合席に座って待っていた。
「ゴブリンの討伐・・・」
ニニャがふとそう漏らす。
「どうしたニニャ?考え事か?」
心配になったぺテルが問いかける。
「えぇ。どういう状況でどう戦うべきかなって・・」
「流石は我がチームの頭脳っ!」
ルクルットがウィンクをしながら大声で言う。
「茶化さないで下さいよ。ルクルット。」
「あまり大声で言わないでやった方がいいのであーる。」
「そうですよ。周囲にも聞こえて・・・ん?」
ニニャが周囲を見渡す。先ほどの会話はどうやら聞こえていなかったらしい。どうも他の冒険者たちが全員受付を見ていたのだ。
(受付嬢を見ている?)
最初はそう思った彼らであったがすぐに違うと気付いた。彼らが受付の方を見るとそこには漆黒の全身鎧を着込んだ人物と黒いロングの髪の美女が立っていたのだ。
「綺麗な女だな。」
そうルクルットが言ったのを他の三人は全面的に同意した。
「あの全身鎧・・・かなりのものであろうな。」
「やっぱりそうですよね。」ぺテルが言う。
「・・・」
そこにいた二人に対して一人だけ尊敬の眼差しと同時に異なるものを込めて見ていた。
(あの漆黒の大剣・・・案外、『暗黒騎士』が持っていた剣なのかな?)
十三英雄の一人、『暗黒騎士』。彼が持っていたとされる剣は四本ある。それらは彼の功績の凄さも相まって四大暗黒剣と呼ばれていた。それぞれ邪剣ヒューミリス、魔剣キリネイラム、腐剣コロクタバール、死剣スフィーズである。
(魔剣キリネイラムは確か・・王国のアダマンタイト級冒険者のラキュースさんが持っているんだったな。)
そんなことをニニャは考えていた。
「ん?」
何やら受付嬢と漆黒の全身鎧を着た人物が話している。だが少し様子がおかしい。
明らかに受付嬢は困惑した様子だった。
(もしかして冒険者組合は初めてなのかな?)
ぺテルはそう思った。
「あの。」
ぺテルは思わず漆黒の全身鎧を着た人物に声を掛けた。
「ん?」
一言だけ聞いて推測するにその声は男のものであった。
「もしよろしければ私たちの仕事を手伝いませんか?」