漆黒の英雄譚   作:焼きプリンにキャラメル水
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現代2
ある国のある少年


コナー・ホープは本を閉じた。

窓から差し込む朝日でハッとする。

 

「そう言えば・・忘れてたな。」

 

今日はケイトと会う日だった。

 

コナーは自分の部屋を出て階段を降りる。

 

「どうしたの?コナー。」

 

母親であるサラが聞く。

 

「ケイトの所に行ってくる。」

 

「ケイトちゃんの所?行ってらっしゃい。」

 

コナーは家を出た。

 

向かうは『灰色のネズミ亭』だ。

 

 

___________________________

 

コナーが『灰色のネズミ亭』に向かう途中で何か困ったような声をした人がいた。

 

「あぁ・・」

 

年老いた女性だった。見た所両親よりも年齢は上であった。細い手足を必死に動かしているものの、どこか怪我をしているように思えた。

 

「どうしたの?おばあちゃん。」

 

「買い物の帰り道で膝を痛めてしまってね。」

 

(大変だな・・・よし!!)

 

「家はどこ?送っていくよ。背中に乗ってよ。」

 

そう言ってコナーは老婆に背中を見せるとしゃがむ。

 

「いや、そんないいよ。」

 

「遠慮しなくていいよ。」

 

「・・ありがとうね。」

 

「いえいえ。誰かが困ってたら助けるのが当たり前だからね。」

 

昔、自分と家族・・いやエ・ランテルの『大恩人』であり『大英雄』と同じ言葉を言う。

 

 (昔俺たちを助けてくれたあの人みたいに、今度は俺が他の人を助けるんだ!)

 

 

____________________________

 

灰色のネズミ亭のウエスタンドアを開ける。

 

「おい!店はまだやってねぇぞ!」

 

顔に傷のある男であるロバート・ラムが怒鳴り散らす。

 

「俺だよ。ロバートおじさん。」

 

「あぁ・・すまねぇ。コナーか。ケイトなら二階にいるぜ。」

 

(いつもの酔っぱらいかと思ったんだが・・・)

 

ロバートの店には朝から酔っぱらいがいる。酒を飲む代金しか持っておらず、一杯の酒だけで一日中いられる面倒くさい客である。ただ今回は違ったようだ。

 

「ありがとう。おじさんは『漆黒の英雄譚』はもう読んだ?」

 

「いや、まだだ。今はケイトが読んでるはずだぜ。」

 

「そうなんだ。二階に上がるよ。お邪魔します。」

 

 

二階に上がると部屋があった。コナーは閉じられているドアをノックした。

 

「はい。どちら様?」

 

「俺だよ。コナーだ。」

 

「コナーっ!!!?来るの早くない!!?ちょっと待って!!」

 

部屋の中から何やら片付けているような音が聞こえた。

 

やがてドアを開けて顔を出す少女がいた。

 

「もう。いいよ。」

 

金髪碧眼。お下げ頭。可愛らしい顔は笑うとなお可愛い印象を与える。

ちなみにロバートおじさんの娘である。

 

「お邪魔します。」

 

そう言ってコナーは部屋にお邪魔する。

 

机やベッドが並んでいる。机の上には本が置かれていた。

 

「ケイトも『漆黒の英雄譚』を読んでたの?」

 

「うん。面白いもん。」

 

「確かにな。それでどこまで見たの?」

 

「第3部まで読んだよ。モモンさんが・・」

 

「ちょっと待って!ネタバレしないで!俺まだ第2部までしか読んでないから。」

 

「あっ、ごめん。」

 

「いいよ。それよりこの本について少し話そうよ。」

 

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コナーはケイトと『漆黒の英雄譚』について「あれいいね。」とか「これは酷いことをしている」などと話し、楽しんだ。

 

夕日が差し込んだことで二人は別れた。

 

今、コナーは自宅の自室にいる。

 

(ケイトもロバートおじさんも・・・みんなモモンさんが好きなんだな。)

 

『漆黒の英雄』と呼ばれた人間。エ・ランテルの『大恩人』。

 

「さてと・・・」

 

外は既に暗く、両親は眠っていた。

コナーは机の上の永続光<コンティニュアル・ライト>のランタンを点けると、本に触れる。

 

「読みますか・・」

 

コナーは再び『漆黒の英雄譚』を開いた。

 

 

 








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