漆黒の英雄譚 作:焼きプリンにキャラメル水
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「モモン!!」
「モモンさん!!」
目の前に光が広がる。
「ここは?」
モモンは起き上がる。そこは自身が今まで使用していたベッドであった。
「驚いたぞ。一体何があったんだ?」
「実は・・」
モモンは全てを話した。エメラルドタブレットを触れた後にスルシャーナの声がしたこと、そこからまるで自身の記憶の様にスルシャーナたちと『破滅の竜王』との戦いを見たことなど全て話した。
「『六大神』のスルシャーナ・・・『破滅の竜王』・・」
「えぇ・・確かに見ました。」
「他にも気になる単語があるが・・・それに関しては今は放っておこう。」
そう言ってミータッチは懐からそれを取り出した。
「エメラルドタブレット・・・私や私の先祖はこれを『預言書』として扱ってきたが、どうやら違うようだな。」
「というと?」
「恐らく、この石板は『未来』へ何かを伝える為のものなのだろう。」
「過去の者が未来の者に何かを伝える為のものということでしょうか?」
ナーベが口を開いた。
「それが何かまでは分からない。ただ・・モモンが見たものが確かならば・・それは600年前のものだろう。」
「600年前!!?」
「600年前といえば『六大神』がスレイン法国を建国したとされる時期ですね。」
その場が沈黙に包まれる。
「難しい話は止めにしよう。それより夕食にしよう。」
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その日の夜・・
「モモン・・起きているか?」
「はい。」
「悪いが少し付き合ってくれ。」
モモンはミータッチに連れられて隠し地下室に入る。
「ナーベラルには聞かせたくない話でな・・」
「何かあったんですか?」
2人はエメラルドタブレットの置かれた台座の前にまで歩いた。
「モモン・・私がこれを読めないと言ったな。あれは嘘だ。」
「どうしてそんな嘘を?」
「私が嘘をついた理由はここに書かれていることが理由だ。より正確に言えば私ではなく私の『友人』がこれの解読に成功したのだが・・」
「『友人』?」
モモンは疑問に思う。10年もミータッチと一緒にいたが、ミータッチの『友人』という存在を見ることも聞いたこともなかったのだ。
「それに関しては私の口から言うつもりはない。話が逸れたな・・この石板に書かれた文字は・・」
『 流星の如く現れる者、「流星の子」
流星が降る夜、「流星の子」は生れ落ちる。
ある者は奇跡をもたらし、ある者は破滅をもたらす。
預言を残し、星となって去っていく。
それが「流星の子」である。
預言を繋ぐ者、「預言者」
世界が変わる時、「預言者」は現れる。
過去と未来を繋ぎ、永遠を造る者
究極の扉を開ける世界の主
始原にして終末の存在、
それが「預言者」である。 』
「・・・・ということだ。」
そう言ってミータッチはエメラルドタブレットを手に取る。
「師匠?」
「モモン・・預言を繋ぐとこれには書かれている。それはどういう意味か分かるか?」
「預言は少なくとも二つ以上あるということですね。」
「そうだ。そして恐らくだがこのエメラルドタブレットも二つ以上ある。そしてそれを悪しき者たちに渡す訳にはいかない。モモン・・私はお前を信頼している。だからこそ、エメラルドタブレットをお前に渡した。」
「そんなものを・・」
「モモン。お前に聞きたいことがある。」
「?」
「ナーベラルは好きか?」
「はい。」
「即答か・・嬉しいな。ちなみにどこが好きになったんだ?」
「ナーベラルは優しいですよ。少し言い方が不器用で分かりづらいですが。」
「確かにな。」
2人が笑う。
「モモン、この場にある全てのものをお前に渡す。」
「しかし!!」
「受け取ってくれ。使い方はお前に任せる。」
ミータッチがその場にある全てのものを革袋の様なものに入れていく。それを終えるとモモンに手渡す。
「これは?」
「これは無限の背負い袋<インフォ二ティ・ハヴァザック>。見た目はただの革袋だが、中身の容量はほぼ無限大だ。ただし総重量に限りはあるがな。」
モモンを腰のベルトにそれを結び付けた。
ミータッチが純白の鎧に付いた赤いマントを外す。
「モモン、今から言う言葉に嘘偽りなく答えてくれ。」
「?」
「『全ての血』を飲み干すと誓うか?」
「はい。」
不思議と口が勝手に開いていた。
「『全ての血』を受け入れると誓うか?」
「はい。」
「『全ての血』を守ると誓うか?」
「はい。」
ミータッチはそう言って赤いマントをモモンの目の前に差し出した。
「『全ての血』を背負うと誓うか?」
「はい。」
そう言ってモモンは受け取った。
「これで安心できる。」
モモンは赤いマントを黒い鎧に付ける。
「明日、ナーベラルと共にこの国から出てエ・ランテルに向かえ。」
「エ・ランテル?」
ミータッチから聞いた話ではエ・ランテルなる町は城塞都市であり、リ・エスティーゼ王国の領土とのことだ。
「あぁ。あそこで冒険者になるのも悪くないかもな。」
冒険者・・・
かつて『五人の自殺点』が憧れた職業。
十三英雄の様な冒険をするため、目指したもの・・・
(ウルベル・・チーノ・・チャガ・・アケミラ・・・ギルメン村の皆・・)
モモンは無意識に拳を作っていた。
「・・明日お前はナーベラルと共にエ・ランテルに行け。」