ブラジル大統領選、支持率首位の極右候補刺され重傷

Brazilian right-wing presidential candidate Jair Bolsonaro gestures after being stabbed in the stomach during a campaign rally in Juiz de Fora, Minas Gerais State, in southern Brazil, on September 6, 2018. Image copyright AFP/Getty Images
Image caption 腹部を刺された直後のジャイル・ボルソナロ候補

10月7日に大統領選を控えるブラジルで、支持率首位のジャイル・ボルソナロ候補(63)が集会で腹部を刺された。

極右・社会主義自由党のボルソナロ党首は6日、ブラジル南東部ミナスジェライス州で群衆に囲まれた際に、襲撃された。

病院関係者によると、ボルソナロ氏は腸に傷を負ったため手術を受けた。回復する見込みだという。

ボルソナロ氏は人種差別的、同性愛差別的な発言で物議をかもしているが、最近の世論調査で大きく勢力を拡大している。

ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ元大統領の出馬禁止が覆されない限り、10月の大統領選でボルソナロ氏が最多得票を獲得する見通しだ。

襲撃はどのように起こった?

事件はミナスジェライス州ジュイス・デ・フォラで起きた。現場映像によると、ボルソナロ氏は支持者らに担ぎ上げられ親指を立てた際に、ナイフのようなもので刺された。

痛みで前かがみになったボルソナロ氏を、支持者たちは直ちに降ろして車へ運んだ。

事件の後、ボルソナロ氏の息子フラビオ氏はツイッターには傷は「軽い」と書き込んだが、2時間後にはより深刻な状況を伝えた。

「残念ながら、思っていた以上に深刻だ。父は大量に血を失い、病院に着いたときの血圧は10/3だった。ほとんど死んでいた。今は容体が安定したようだ。祈ってください!」

病院関係者は、ボルソナロ氏は命に関わる「深い」刺傷を腸に受けており、容体は「重体だが安定」していると話した。

A handout photo made available by the Military Police shows Adelio Obispo de Oliveira, suspected of allegedly stabbing presidential candidate Jair Bolsonaro. Image copyright EPA
Image caption 軍警察はボルソナロ氏を刺したと見られる男の写真を公開した

ボルソナロ氏は2時間の手術の後、集中治療室で回復に向かっているが、少なくとも1週間から10日間の入院が必要だという。

警察は、「アデリオ・オビスポ・デ・オリベイラ」という男を実行犯として逮捕したと発表した。

事件への反応は?

ボルソナロ氏の対立候補はいずれも事件を非難している。ルラ元大統領に代わって労働党の擁立候補となる見込みのフェルナンド・ハダッド氏は、襲撃は「不条理で残念なもの」と話した。

現職のミシェル・テメル大統領も、このような襲撃は民主主義の国では「容認できるものではなく」、ボルソナロ氏の回復を願っていると述べた。

ジルマ・バナ・ルセフ前大統領は、今回の襲撃は必ず罰せられることで「他の候補者に同じことが起きないための例になるべき」だと話している。

ボルソナロ氏の支持層は?

ボルソナロ氏の支持者は、犯罪を取り締まる力強い指導者として、同氏に期待を寄せている。

ソーシャルメディアで数百万人にフォローされる同氏は、「ブラジルのトランプ」と大勢に呼ばれている。

銃規制の緩和を主張しているほか、強硬な反中絶論者として数百万の福音派のキリスト教徒から支持を得ている。

ボルソナロ氏の経歴

元陸軍大尉のボルソナロ氏は、1980年代に兵士の権利保護を掲げて政界入りした。

当時ブラジルは民政に移管したばかりで、1989年に初の大統領選が行われた。

当時、ボルソナロ氏が大統領選の主要候補になると考える人はほとんどいなかった。しかし、労働党政権の崩壊や2016年のルセフ前大統領の弾劾裁判などが、ブラジル政局の深い溝を浮き彫りにした。

ボルソナロ氏の歯に衣を着せない発言や法の秩序を守る姿勢に、汚職や経済危機で左派を非難する多くの有権者が共感を覚えた。

File photo: Jair Bolsonaro gestures during a campaign rally Image copyright AFP

ボルソナロ氏は2011年には米プレイボーイ誌の取材で、「同性愛者の息子を愛することはできない」と述べ、もしそのような息子がいたら「事故で死んでほしい」と語った。

2015年には、新聞社の取材でマリア・ド・ロザリオ下院議員について「とても醜いのでレイプする価値がない」と発言し、名誉毀損の罪で損害賠償を支払っている。

また現在、アフリカ系ブラジル人に対する人種差別的な発言をめぐって捜査されている。

(英語記事 Brazil poll front-runner stabbed at rally

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