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伝統・騒音 苦情配慮も… 浜松まつり

◆自治会長「子ども主役、心に留めて」

見学者の前で激練りを披露する参加者=5日、浜松市中区の鍛冶町通りで

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 浜松市の初夏の風物詩、浜松まつりが五日、閉幕した。一説では約四百五十年の歴史があるといわれる市の一大イベントだが、まつりの特色であるラッパの演奏を伴う練りのにぎやかな音には、住民からの苦情の声も毎年上がる。地域に根付いた伝統行事を守るため、まつりの組織委員会は、熱く盛り上がるまつり衆たちと、まつりに無関心な住民との温度差を埋めようと対応に苦心している。

 最終日の五日午後六時半、御殿屋台引き回しが始まると、市中心部は喧噪(けんそう)に包まれた。大音量のラッパに加えて、大小さまざまな太鼓、「キンキン」と甲高い鉦(かね)の音、重なり合ったしの笛の音色。若衆の「オイショ」という掛け声や先導者が鳴らすピーという笛の音も夜の街に大きく響く。大太鼓の重低音は、街中から少し離れた建物内でも感じられるほどだ。

 三~五日、ツイッター上には、浜松まつりについての投稿があふれた。凧(たこ)揚げや御殿屋台の動画や写真など、まつりを満喫する投稿がある一方で、「子ども寝かしつけてるのに練りがうるさい」「明日、仕事なんだよ!寝かせろや」といった批判的な投稿もあった。

 ラッパを吹き、掛け声を合わせて歩き回る練りは、まつりの規約で午後十時までと定められている。だが、初子が多い町では、まつり衆が各家庭を回って祝福する時間が長引き、練りが十時を回るケースもある。町自体の練りは終わっているにもかかわらず、一部の参加者だけが盛り上がり、ラッパを吹いていることもあるという。

 組織委は毎年、練りの時間の厳守を各自治会に呼び掛けている。各自治会も、注意事項を記載した冊子を参加者に配るなどして、ルール順守を訴えている。また約十年前から、期間中は地元警察署に組織委の人間が詰め、署に苦情が来ると直接町の幹部に指導もしている。これらの効果があってか、組織委は「ここ数年で、確実に苦情の件数は減っている。午後十時以降は駄目というルールが、各町に浸透しつつある」と手応えを感じている。

 それでも、街中でまつり衆たちが深夜まで騒ぐ姿は散見される。戦前からまつりに参加している五十八町の一つ、田町の仙田治興(はるおき)自治会長(76)は、「まつりに参加している人だけが楽しむのでは駄目だ」と力を込める。「お酒を飲んで騒ぐのがまつりだと勘違いしている人も多数見受けられる。子どものためのまつりだという原点に立ち返ってほしい」と続けた。

 まつりのタイムスケジュールや各町の指導を担当する組織委統監部の丸井通晴部長(70)は「練りにラッパを使う浜松まつりは、日本で一番騒音対策が必要なまつりかもしれない」と指摘する。組織委の別の担当者は「磐田市の見付天神裸祭は深夜まで練りがあるが、苦情はあまりないと聞く。神事ではない浜松まつりは、神様に悪いという気持ちが働かないのでは」と話す。

 今後の浜松まつりの展望について、丸井部長は「各町で、事前に『まつり期間中はご迷惑をお掛けしますが、よろしくお願いします』と言って地域を回るなど、住民への理解を募ることが大事」と、まつりに参加しない人たちへの配慮の必要性を唱えている。

(鎌倉優太、佐藤浩太郎)

 

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