自作飛行機のコミケ? 米国「オシコシ」に絶句

日本の航空産業に足りないすべてがある「EAA AirVenture Oshkosh」

2018年9月7日(金)

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 「松浦さん、航空について何かを語るなら、是非ともオシコシに行くべきです」

 先般掲載した記事(一覧はこちら→「「飛べないMRJ」から考える日本の航空産業史」)の取材の際、オリンポスの四戸哲社長に強い調子で言われた。「オシコシには、航空に関するすべてがあります。航空の将来を考えるなら、あれを観なければ何も始まりません」。

 オシコシ(Oshkosh)――日本語ではオシュコシュとも表記される。米五大湖、ミシガン湖の西側に位置するウィスコンシン州の地方都市だ。このオシコシにあるウイットマン空港では毎年7月末の1週間、全米から航空機が集まってくる一大エアショーが開催される。正式名称は「EAA AirVenture Oshkosh」。1953年以来続いている息の長いイベントだ。

 7月初頭、四戸さんから連絡が来た。「今年は当社からも社員を行かせます。一緒にどうでしょうか」――こうなると、私も行かなければならない。7月末、私はオリンポスの設計技師Y氏と共にオシコシに向かった。

 オシコシで、私は大変な衝撃を受けた。
 確かにここには航空機のすべてがあった。

 より詳しく言うと、「MRJで航空日本復活を」という言説に代表される、日本の航空産業振興策に欠けているものがすべてあった。

EAA AirVenture Oshkoshの広い会場を一枚の写真で「こんな雰囲気」と示すのは難しい。これは、ホームビルト機の展示エリア。思い思いの自作航空機が、誇らしげに展示されている。

自分の飛行機で飛んできて、1週間のショーを楽しむ

 EAA AirVenture Oshkoshの主催者は実験航空機連盟(EAA:Experimental Aircraft Association)という民間団体だ。今年2018年は7月23日~29日の日程で開催された。

 米国では個人が自分で航空機を作り、自分が操縦して飛ぶことが趣味として定着しており、法制度も整備されている。EAAは自作航空機(ホームビルド機と呼ばれる)愛好家の団体であり、AirVenture Oshkoshは当初、愛好家の祭典として始まった。そういう意味では、まさに日本の「コミケ(※)」みたいなものだ。

(※ 正式名称はコミックマーケット、年2回開催される、国内最大の動員数を誇る同人誌の即売会。「読みたい本がなければ、自分で作る」という精神も共通しているところがある)

 が、現在のAirVenture Oshkoshは、単なる趣味人の集まりの域を超えた、「ここに航空のすべてがある」としか形容できない巨大なイベントに成長している。

 2005年には、ホンダエアクラフトカンパニーが、ビジネス機「ホンダジェット」の初めての一般向け公開を、このAirVenture Oshkoshで行った、といえば、その重要性がNBO読者にも届くだろうか。

今回、ホンダエアクラフトカンパニーは新型の「ホンダジェット・エリート」を展示していた。

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「自作飛行機のコミケ? 米国「オシコシ」に絶句」の著者

松浦 晋也

松浦 晋也(まつうら・しんや)

ノンフィクション作家

科学技術ジャーナリスト。宇宙開発、コンピューター・通信、交通論などの分野で取材・執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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