JASRAC 外国映画の上映使用料を値上げ「大きな前進」、さらなる増額目指す
日本音楽著作権協会(JASRAC)は9月6日、東京都内で記者会見を開き、外国映画で使われている音楽の上映時の著作権使用料額を変更することを発表した。従来の一律18万円から、上映スクリーン数に応じた6区分の金額に事実上値上げされる。
現行の外国映画の使用料はどのような作品であっても「1作品あたり一律18万円」だ。JASRACは「欧州諸国のように興行収入が反映されることはなく、国際的にみて著しく低い。さらに、算定方式が異なる日本映画の使用料と比較しても格差がある」と「50年前」から問題視し、昨年、「1作品あたり一律18万円」から「興行収入に応じた額」に変更するよう映画業界に求めていた。
これに対して、映画館などで組織する全国興行生活衛生同業組合連合会(全興連)は、「諸外国と比較して使用料は不当に低廉なものではない」などと反発していた。JASRACと全興連は協議を重ね、8月31日、今回の変更の合意に至った。
●「一律18万円」からスクリーン数に応じた「6区分の使用料額」に変更
2018年11月から2021年3月までに封切りとなる映画の使用料の算出方法については、封切時のスクリーン数に応じた6区分の使用料額表に基づいておこなう。
100スクリーンまでの「20万円」が一般的な使用料になることが見込まれる。主要な映画にかぎらず、いわゆる「アート系」とよばれる映画(全興連の契約の枠組みに参加していない配給事業者が配給する映画)についても、今後6区分の使用料額表に準じた取り扱いを開始することを予定している。
興行収入に応じた算定方式で使用料が決まる欧州諸国と比較すれば、その差はまだ大きい。JASRACの江見浩一複製部部長は「一律18万円の規定を終了できることや、映画興行についても一定程度反映させられるようになったことは評価できる」と話した。
一方で、今回の改定に伴い、映画館入場料の値上げを懸念する声もある。これについては、「コメントできる立場にはないが、映画業界関係者に聞くと『そのようなことはないようにしていきたい』と話している」とコメントした。
●「曲別算定方式」の採用に向けて 2020年12月までの合意を目指す
今回合意に達した6区分の利用料は、2021年3月までのもの。同年4月以降に封切りとなる映画の使用料の算出方法は、曲別の算定方式を採用することを目指す。日本映画の使用料の算定方式は現在、1曲あたり「映画録音使用料×5%×同時上映最大スクリーン数」となっている。これと同様の算定方式の採用に向け、詳細について全興連と協議をつづけ、2020年12月までの合意を目指すという。
「この算定方式が採用されれば、日本映画の使用料との格差を解消することが期待できます」(江見複製部部長)
この方式が採用されても、欧米並みの使用料徴収には及ばないが、今回の改定は「大きな前進」だという。江見複製部部長は「今後も使用料規定の整備を進めていきたい」と話した。