漆黒の英雄譚   作:焼きプリンにキャラメル水
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『龍龍龍』さん、『竹刀』の設定を真似させて頂く許可を出してくれたこと感謝致します。
ありがたく使わせて頂きました。


青年モモン

モモンがミータッチの修行を受けて10年が経った。

 

ミータッチの屋敷の一室で二人の男は対峙していた。

一人の男は両手に漆黒の大剣を持ち構えていた。男の容姿は決して男前ではないが力強さを感じさせる顔つきである。10年前とは異なり体つきは戦士のそれであり全身からは力強さを感じさせた。

もう一人の男は純白の鎧を着用しており、何も身に着けていない頭部からは白くなった髪や髭が見えた。

 

「剣の握り方が甘い。まだまだ隙だらけだぞ。」

 

「はい!」

 

モモンとミータッチは剣を打ち合っていた。

モモンは「黒い蝋燭」の二刀流。

それに対してミータッチの持つ剣は「竹刀」と呼ばれる武器である。

その武器は決して相手にダメージを与えるものではない。頑丈さと扱いやすさだけが取り柄の剣だ。

 

「振りが甘い!」

 

ミータッチがモモンの頭を叩きつける。その後少し横にずらして肩に落とすと首を切断するように叩きつけた。

 

「遅い!今ので二度は死んだぞ。」

 

「はい!」

 

2人の実力差はかなり埋まったといえなくもないが、それでもミータッチが次元の違う強さであるのは確かであった。

 

「空間斬!」

 

モモンが武技を使い四度剣を振るう。「空間斬」という武技は飛ぶ斬撃である。その武技をミータッチは最低限の身のこなしでかわしていく。

 

「武技に頼りすぎるな。」

 

「はい!」

 

モモンがミータッチ目掛けて走る。右手にだけ大剣が握られていた。

 

「なっ!?」

 

ミータッチの目の前に漆黒の大剣の剣先が飛んできた。

 

「くっ・・」

 

ミータッチはそれを右手に持った竹刀で弾き落した。

 

モモンが右手に持った大剣を両手持ちに変えて振り上げる。

 

「やるな・・」

 

ミータッチの頭部目掛けて振り下ろす。

 

ミータッチはそれを竹刀で受け止めた。

 

それがモモンの狙いであった。

 

モモンは竹刀が構えられていない死角を突く。左足を蹴りだしてミータッチの腹部を蹴る。

 

「ぐっ・・」

 

ミータッチが突き飛ばされる。

 

モモンは大剣を突き出す形でミータッチの頭部を狙う。

 

「ほう・・」

 

ミータッチは横にずれてさけようとする。

 

しかしモモンの大剣がミータッチの頬をかすった。

 

「随分と成長したものだな。」

 

「あなたの教えがあってこそです。師匠。」

 

ミータッチに近づくのに五年、そして更に五年経ったモモンはようやくミータッチに傷一つつけることが出来た。

 

「あれから10年か・・」

 

モモンがミータッチに助けられてから10年の歳月が経った。

 

「父上、モモンさん、昼食の準備が出来ましたよ。」

 

そう言って二人を呼びに来たのはナーベラルであった。

 

「分かった。今行く。」

 

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その日の夜・・

 

モモンとナーベラルはミータッチに呼び出された。呼び出された場所はいつも修行の場所として使う場所であった。

 

「どうしたんですか?師匠。」

 

モモンがミータッチに問いかける。モモンがそう問いかけたのはミータッチの恰好が純白の鎧であったからだ。

 

「2人ともこちらに。」

 

2人はすぐに頷いた。

 

ミータッチが部屋の奥に歩く。奥には本棚が多く並べられており、その横には蝋燭の形をした永続光<コンティニュアルライト>があった。

 

ミータッチは蝋燭の台座を曲げる。それは曲げたというよりも最初から曲げられるように作られているように思えた。それを曲げると何か大きな音がしていることに気付く。すると本棚が横にスライドする。

 

「これは!?」

 

本棚の下から現れたのは地下への階段だった。

 

「2人ともついてきなさい。」

 

2人は驚きながらもついていった。

 

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階段を降りると薄暗い空間が広がる。

 

「暗いですね。」

 

「安心しろ。すぐに明るくなる。」

 

突然部屋に明かりが点きモモンは目がくらんだ。

 

やがて目が慣れるとその空間の全貌を見ることが出来た。

 

地下に広がっていたのは真っ白い空間。その空間は階段を降りると四角形の部屋があり、その中央には台座があり、その上には漆黒の全身鎧やポーションや見たことの無いアイテムが置かれていた。その更に奥にも台座が置かれており、その上には澄んだ薄緑色の石板のようなものが置かれていた。

 

「この部屋は一体・・」

 

ナーベラルが問う。

 

「この秘密の部屋は私の先祖が代々守り続けてきたものだ。私の持つこの純白の鎧もその一つだ。」

 

「師匠、あの奥に置かれた石板は?」

 

モモンが問う。

 

「あれは『エメラルドタブレット』。そこには預言が記されているそうだ。」

 

ナーベラルが興味本位でそれを掴む。

 

「?全く何も読めないのですが・・これはどこの国の言葉でしょうか。父上は読めるのですか?」

 

「いや私にも読めないよ。」

 

ナーベが台座に石板を置く。

 

「モモンは読めるか?」

 

モモンがエメラルドタブレットを手に取る。

 

「?いえ、読めません。」

 

モモンがそれを読むの諦めて台座に置こうとした時だった。

 

「----ことはス--------と----くれ----」

 

「何だ?これ・・」

 

頭の中に声がしたのだ。思わず周囲を見渡すがこの場には三人以外はどう見てもいなかった。

 

「モモン、どうかしたのか?」

 

「モモンさん?」

 

「--私--ことはス-----ナと呼ん--くれ--」

 

声が鮮明になっていく。何度も頭の中でその声がこだまする。

 

頭の中に何かが広がっていく。何故か分からないが男の声や骨の姿をした何者かが見える。

 

視界が霞む。目の前に見覚えの無い部屋が広がっていく。

 

「私のことはスルシャ―ナと呼んでくれ。」

 

足元がふらつき地面に倒れる。何故か何かに座るような感触があった。

 

モモンが最後に見たのは心配そうに見つめるミータッチとナーベラルの姿だった。

 

 

 








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