先の記事
で、
遺伝性乳癌、遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)
と、その治療薬、PARP阻害剤のことを
書きました。
認可されたのは今年度ですが、
私が乳癌の初期治療をしていた3~4年前、
それ以前から、期待され話題になっていた
薬剤です。
2011/8/2
『卵巣がんや乳がんにPARP阻害薬 (日経BP社 がんナビ)
で、当時、国立がんセンター中央にいらした
勝俣先生も、「大いに期待している」と
語られていました。
2011/8/2
(日経BP社 がんナビ)
では、
2011年1月のNEJMに、
トリネガ乳がんへの第2相臨床試験で
PFSが改善された結果が発表され
期待されたイニパリブ(PARP阻害剤)が、
2011年のASCOで、
第3相臨床試験では、PFSの改善が示せない
残念な結果が発表されたのを受け、
中村清吾先生がこう述べていらっしゃる、
「トリプルネガティブ乳がんのうち、
BRCA1遺伝子変異は2~3割にすぎない。
今回の試験対象には、BRCAの機能不全が
ない患者が含まれていたため、
有意差が出なかった可能性がある」
まさに、ゲノム解析によるプレシジョン
メディシンに向けて重要な点で、
既に2011年から検討され、
BRCA遺伝子変異のある患者に絞って
臨床試験が組まれるように進展し、
今年度のオラパリブの認可に至った
のですね。
日本では、BRCA1/2遺伝子検査が保険適用
となっておらず、普及もしていない状況を、
日本乳癌学会、中村先生やがん研有明(新井先生、西村先生)が、
2011年から打開活動をされてきて、
ようやく、今年2018年6月に、
オラパリブの認可に伴う、
そのコンパニオン診断として、
BRACAnalysis診断システム(アストラゼネカ)が、保険適応になった、のですね。
遺伝学専門で7月にシカゴから帰国され
がん研有明の「がんプレシジョン医療研究
センター」に着任された中村佑輔先生も、
2015年に、NEJMで
前立腺がんにPARP阻害剤が有効な結果を
出した発表を受け、
2015/10/30
『PARP阻害剤から考える「PrecisionMedicine」の重要性・必要性』』
で、こう書かれています。
「 この論文を通して私が訴えたい点は、
遺伝子解析とそれを利用した臨床試験
の重要性である。
もし、今、がん患者すべてのがん組織に
おける遺伝子情報がデータベース化されて
いるとすれば、DNA修復関連遺伝子
(BRCA1/2、ATM, FANCA, CHEK2など)
に変異を持っている前立腺がん患者、
あるいは、その他のがん患者に対して
でも、 DNA修復遺伝子変異があれば、
この薬剤を優先的に投与する臨床試験の
実施が可能となる。
現状では何も治療法がない患者さんに
とって光明となるし、
薬剤の評価を迅速に進めることができる。」
まさに、先生方の仰る通りの展開に
なってきていますね。
しかし、オラパリブの乳がんへの
認可のためには、やはり
第3相臨床試験(RCT)が必要だった、
その対象として、アンスラサイクリン
またはタキサンの化学療法歴のある患者に
限定され、その結果、認可の条件として
それが入っている、
それが私には不可解ではあります。
標準治療として多くの抗がん剤が
認可されてはいる乳がんは、
少し事情が異なる部分はあるかも
しれませんが、
上記記事の中で、中村佑輔先生は
「 頑迷な医師は、二重盲検試験
(医師にも患者にも、
本物の薬が投与されたのか、
偽薬が投与されたのかわからない試験)
にこだわるかもしれない。
しかし、この論文を読んだ上でも、
何も投与しないコントロール群を設定せよ
というのが倫理的とは、私は思わない。
わずかな差を統計学的にはじき出すのでは
なく、科学的な論理を優先した評価方法が
必要になってきている。 」
まさに、まさに、私が疑問に思い、
臨床試験も視野にいれて治療を検討している
患者の立場から、RCTは非人道的、
(言葉が強かったのかバッシングされた
わけですが…)
と書いたことへの答えだと思います。
是非、遺伝子解析に基づく「科学的な論理
を優先した」評価方法
で臨床試験が組まれ、認可される仕組みに
改革していただきたい!
今を生きる患者として、
切に希望、期待しています!