「乱暴すぎる」返礼品是正、戸惑う自治体も 総務省、ふるさと納税法改正へ
ふるさと納税を巡り、過熱する自治体間の寄付獲得競争の是正に総務省が本腰を入れ始めた。返礼品が高額だったり、地場産品以外だったりする点を問題視し、8月までに見直す意向がないと答えたとして九州の7市町を含めた計12市町名を既に公表。制度からの除外もちらつかせる。自治体間の不公平感を解消する狙いだが、名指しされた自治体側からは戸惑いの声も漏れる。
「地域活性化に貢献」も例外認めず
「最終的には従わざるをえないが、国のやり方はしゃくし定規であり、乱暴すぎる」。名指しされた自治体の一つ、佐賀県嬉野市の担当者はため息をつく。
換金性の高い金券や家電など、豪華な返礼品が増えたことを受け、総務省は2017年と18年、寄付額に対する返礼額の割合を3割以下とすることや、地場産品に限ることなどを求める総務相通知を出した。
嬉野市の場合、返礼率は5割程度で、確かに通知を上回る。ただ、嬉野温泉の宿泊券など取り扱う78品全てが地元に関係しており、「返礼品そのものが地域活性化につながる」と訴えたが、例外は認められなかったという。
地場産品の定義を巡っても、意見の相違がある。
同県基山町は、対馬藩(現・長崎県対馬市)の飛び地だった歴史的経緯も踏まえ、対馬市で取れた魚を返礼品としているが、総務省から問題視された。単に返礼品目的で他都市と連携する自治体との線引きが難しい、というのが理由。「あまりにも一律的。残念だ」と担当者は不満を漏らす。
大分県佐伯市の場合、地元産の魚や野菜を使った料理を出す東京都内のレストランの食事券が問題視され、今月中に返礼品から外すことを決めたという。
民間業者との契約上、見直したくてもすぐには難しいという自治体もある。
国は自治体間の不公平感解消急ぐ
一方、総務省は自治体間の不公平感の解消が急務という。背景には、通知に従い寄付を減らした自治体や、不満を抱える都市部への配慮がある。
そもそも、08年に始まったふるさと納税制度は、都市部に暮らしながら出身地などを応援できるのが本来の趣旨。返礼品の充実や手続きの簡素化も相まって人気が高まり、受け入れ額は14年度の388億円から、17年度は3653億円と、過去最高を更新した。
民間研究機関の試算では、人口減が止まらない「消滅可能性都市」は地方に多い。そんな中、ふるさと納税は地域活性化につながっており、佐賀県みやき町のように、小中学校の給食費や18歳までの医療費の無償化を実現した例もある。
減収に苦しむ都市部、制度を疑問視も
その陰で、都市部は減収に苦しんでいる。東京都によると、16年の場合、東京23区や市町村に入るはずだった住民税計約466億円が他都市に流出した計算になる。行政サービスに影響が出かねないと危機感を強める区もある。「受益と負担のバランスが著しく崩れている」(都担当者)と、制度そのものを疑問視する声は都市部に少なくない。
九州ではふるさと納税人気の先駆けとなった長崎県平戸市は、16年度の寄付受け入れ額は約16億円に達したが、今年度は現時点で1億円程度にとどまっている。通知を受け、返礼率を3割以下にするよう改めたことも要因とみられる。
ふるさと納税制度は古里応援が本来の目的。市の担当者は「地方も都市部も共通のルールに基づき、同じ土俵で地域の魅力を発信し、ファンを増やしていくことが健全な姿ではないか」と提案した。
=2018/09/06付 西日本新聞朝刊=