なんかこのブログに記事書くの、ほんと久々だなと思うんですが。
最近ずっと思ってたことがあったので、つい勢いで書きなぐってしまいました。若干炎上商法かもしれませんが、まぁたまには?いいや。
長文ですがお付き合いください。特に、ソフトウェア工学の研究している皆さん。
昨日、とあるソフトウェア工学のシンポジウムにて、機械学習モデルをWebサービスにデプロイするためのハンズオン、という企画がありました。
僕が運営委員やってるMLSEとの共同企画で、僕は発案者の1人ですが、当日は1人の参加者として中に混じっていました。
4人グループに分かれての作業だったんですけども、僕以外の3人は、いずれもソフトウェア工学の研究をしている修士の学生さんでした。
で、ハンズオンも後半になって「Dockerの使い方」の演習になったのですが、その3人ともDockerに触ったことがなさそうな雰囲気でした。いちいち確認したわけではないので勘違いだったら申し訳ないのですが、少なくとも僕の隣に座った学生さんはインストールで四苦八苦していました。
ただ正味な話、いまソフトウェア開発やっててDockerを全然使わないって、想像しづらいなぁ、とか思います。
いや、いうて僕も前職では業務では使ったことはなかったですし、所詮は単なるツールなんで、使い方を知らなければ覚えればいいだけで、それ自体は問題でも何でもないんです。
ただ、Dockerを知らない・わからないとなると、まず今流行のKubernetesなんて知らないだろうし、何するものかも理解できないですよね。 というかそもそも、「コンテナ」って概念もわからないと思うんです。
そういや(少なくとも日本語の)ソフトウェア工学の論文で「コンテナ」なんて単語、見たことないんですよね。
それどころか、「運用」「デプロイ」といった単語すら、みかけることは稀です。
そもそも運用やデプロイを主題として扱った論文なんて、国内のソフトウェア工学の論文ではたぶん1本もないです。僕の知る限り。
一方、それこそKubernetesの勉強会が都内で開催されたら、結構な数のエンジニアが集まるはずです。「これが俺の考えたさいきょうのデプロイ環境だ」的な話をする発表者もたくさん現れるのではないですかね。
何が言いたいかというと、今の(少なくとも日本の)ソフトウェア工学って、今のソフトウェア開発現場と相当乖離しているように思うんです。最近のソフトウェア開発現場で採用されてる開発形態・開発プロセスを全く想定していないし、だから実務家が持ってる課題意識を、今のソフトウェア工学の研究者は全く把握できてないし、把握しようともしてない感がすごくあります。
ぶっちゃけますが、特に今年になって、ソフトウェア工学関連の学会やイベントの参加者数、論文投稿数が激減してます。特に企業勢の参加が相当減ってるイメージです。
そんでもって、今参加している学会で発表されてる論文、ざっと眺めましたが、申し訳ないけどレベル低いなーと思います。基本的に小粒な研究ばかりだし、発展すれば実務でそのうち役に立ちそう、と思わせる論文がほとんどありません。アカデミックな観点から、新しい領域にチャレンジするようなheavyweightな論文もありません。どこを目指して研究しているのか、さっぱりわからない論文も多々あります。
まぁ、国内学会というか日本語論文のレベルが下がっているのはソフトウェア工学分野に限らなくて、最近はみんな、研究で良い成果が出たらすぐ国際会議にチャレンジする傾向にあるので、それもむべなるかな、というところもあるのですが。
ただソフトウェア工学の場合、日本人がトップカンファレンスで論文採択されることも非常に稀なんですよね。ICSEに日本人の論文が採択されることって、数年に1本あるかないかとか、そんなレベルです。
まぁ要するに、国内のレベルが低いんです。
そういうのもあって、学会への参加者が顕著に減ってるように思います。一方、IT勉強会はどこも大盛況です。
アカデミアの人はもしかすると「エンジニアの参加する勉強会と研究者の集う学会では扱う内容の質が違う」と思ってる人も多いかもしれませんが。
実際のところ、トップカンファレンスで発表された論文の輪講会をやる勉強会とかたくさんありますし、そうじゃなくても、「〇〇で発表された論文を参考に、自分達でこういう工夫をしてみました」なんて発表もしょっちゅう聞きます。ガチガチに最新の論文サーベイして、それに基づいてる発表なんかもあって、結構学術的にもレベル高いですよ。
そもそも、そういう場で発表する人、最近はPhD持ってる人も多いですしね。
要するに今のソフトウェア工学の研究会って、日本のそこかしこで開催されてるIT勉強会に客食われてるんじゃないかと思います。実際、企業人だとそっちの方が面白いしためになるし、と言う気がします。
研究者の全てが開発現場での流行を追う必要はないとも思いますが、誰も追わないってのもソフトウェア工学という学問の特性上まずいと思いますし、追わないなら追わないなりに、基礎研究としてレベルの高いものを見せてほしいんですが、そういうのも(国内では)ありません。
これは僕だけが抱いている「危機感」ではなくて、同じような話を複数のソフトウェア工学に携わる企業人から聞いてます。昨日も、終了後にある人と話してて、「このまま行くと、日本のソフトウェア工学の研究会って数年以内に消滅するんじゃないか」という話をしていました。
なので、国内にいるソフトウェア工学の研究者の皆さん、ぜひ、一度ゼロベースで、色々考えてみてほしいんです。 あなたは誰の方を向いて研究してますか?