漆黒の英雄譚 作:焼きプリンにキャラメル水
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拾った赤ん坊にモモンと名付けた。
「後はこの子の存在をギルメン村の皆に教えとかないといけないね。」
「えぇ。スザァークおじさんの言う通りね。」
「今日は村のみんなで行う話し合いがある。せっかくだ。この機会にみんなにモモンを紹介しないか?」
「そうね。」
「私とタブラスで皆を呼んでこよう。それまで君は少し休むといい。少し疲れてるだろう?」
「・・・」
モーエが腕の中のモモンを見る。モモンは眠っているのだろう寝息を立てている。
「いや・・みんなに紹介するまでは・・」
「モーエ。君がモモンを心配する気持ちは分かる。村のみんなに認められてこの子の安全が保障されるまでは気が休まらないのだろう。だけどね、モーエ。この子にとって母親は間違いなく君だよ。そんな君が倒れちゃならないよ。だから君はモモンの為に休みなさい。休むことも子育てには必要だよ。」
「分かった。少し休むわ。」
「椅子に座るといい。私はみんなを集めてくるよ。」
「ありがとう。スザァークおじさん。」
スザァークが出ていくのを見てモーエは瞼を閉じた。
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ギルメン村の中心にある建物、スザァークの家の前で村人たちは座り込んでいた。立っているのはスザァーク、タブラス、モーエの三人だけだった。
「えー。みんなに話さなければならないことがある。」
スザァークが口を開く。
「?」ギルメン村のみんなが首をかしげる。
「モーエ。」
「はい。」
モーエが村人の前に立つ。
「実は・・私は薬草採集の時にこの子を拾ったの。私はこの子にモモンと名付けた。」
「みんなにはこの子がここで暮らすことを許してほしいの。」
「この子が村に暮らすのに反対の者は立て。賛成ならば手を挙げてほしい。」
全員が手を挙げる。
「ありがとう。みんな。」モーエが話す。
「ではギルメン村のみんな。」
タブラスが水瓶を置く。スザァークが器を一人一人に渡していく。
みなが水瓶にある水を器に入れていく。
「ギルメン村の41人目の住人。モモンに祝福を!」
村のみんなが器に指をつける。指についた水を飛ばす。それを三回繰り返す。
「天と地、そしてこの出会いに感謝を。」
こうしてモモンはギルメン村の41人目の住人として認められた。
黒髪黒目の男児モモン。流れ星が降る夜空に現れたこの男児はやがてギルメン村を旅立ち、やがて『漆黒の英雄』と呼ばれることとなる。
そして15年後・・・