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公共財として責任果たす 決議採択 山形で新聞大会
現場に密着、多彩な報道を
第69回新聞大会は10月18日、山形市の山形テルサで開かれ、新聞協会会員社幹部ら506人が参加した。大会式典では新聞協会賞を5社6人に贈賞し「現場に密着した取材と多面的な報道で民主主義の発展に貢献し、社会の公共財としての責任を果たす」との決議を採択した。研究座談会では、各社の経営トップがデジタル時代の情報発信戦略や、働き方の多様化などについて意見を交わした。
開会あいさつで山形の寒河江浩二代表取締役社長・主筆は「少子高齢化やネット社会が進展しても新聞が果たす役割は変わらない」と強調した。その上で「公平で公正な社会を築くジャーナリズムの原点に返り、国民の知る権利に応えるため、読者に質の高い新聞を届ける覚悟を新たにしたい」と述べた。
続いて新聞協会の白石興二郎会長(読売)が、定期購読の新聞に軽減税率が適用されることに触れ「これまで以上に民主主義や文化の発展に尽くし、公共財にふさわしい役割を果たさなければならない」とあいさつした。販売改革の実現、改正個人情報保護法への対応、無購読者対策、新聞広告の活性化といった課題を挙げ「新聞人としての自覚を忘れず、この難局を一致して乗り越えていきたい」と呼び掛けた。
新聞協会賞の贈賞式では、編集部門でNHKの橋口和人、毎日西部の和田大典、フジテレビの米川一成・鈴木健司、岩手日報の神田由紀の5氏、経営・業務部門で中国の北村浩司氏が表彰された。
天皇陛下が生前退位の意向を持っていることを特報した橋口氏は「当局取材の目指すところはあらゆる情報を入手し、真実の隠蔽(いんぺい)や歪曲(わいきょく)の抑止力であり続けることだ」と述べた。「しかし若い記者は当局回りを避ける傾向があり、1次情報に迫る力が弱まりつつある。今回の受賞で、情報をいち早くつかみ、正確に伝えることの意義を実感した」と振り返った。
和田氏は熊本地震直後から、被災地を歩き回って救助現場を撮影した。取材した被災者から、熊本の状況が多くの人に伝わることで災害への備えが進むことを願っている、と言葉を掛けられたと明かし「これからも被災地の歩みを追っていきたい」と述べた。
昨年9月、鬼怒川の堤防が決壊した大規模水害の航空取材で、濁流に巻き込まれた親子が救助されるまでの経過を撮影した鈴木氏は「助かってほしいという思いと、記録に残さなければならない使命感の中で必死にカメラを回した」と振り返った。米川氏は「今後も防災意識を高める報道を心掛けたい」と語った。
岩手日報は東日本大震災で家族を失った2400人に取材を重ね、津波で亡くなった人の足取りを検証。「震災犠牲者の行動記録」としてウェブサイトで公開した。神田氏は「亡くなった人の声なき声と、遺族の思いを積み上げた。記者が築いた被災者との信頼関係があったから取材できた」と話した。
夕刊に代わる新媒体・中国新聞SELECTの創刊で受賞した北村氏は「活字媒体は大きな力があることが分かった。今後も新たな可能性を探りたい」と述べた。
座談会に先立ち、工業デザイナーの奥山清行氏が「これからの100年をデザインする」と題して講演した。「ものづくりは顧客にストーリーを伝えることが重要。報道に携わる人も同じではないか」と語った。