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 瞬間移動の仮想体験、乗ると元気になるヒコーキの開発、客室乗務員向けアプリの刷新、データセンター移転…。ANAホールディングスは様々な先進技術を使い、新たなビジネスモデルを構築する。奇想天外、超先進的なデジタルイノベーションの全貌に迫った。

 デジタル化でビジネスを効率化し、人にしかできない業務に、より多くの時間を割り当てる。多くの企業でこうした変革が求められている。全日本空輸(ANA)が進める客室乗務員の業務改革はその典型だ。デジタル技術でサービス品質を維持しつつ、個性を発揮しやすい接客環境を整えた。

 羽田空港の一角。隠れ扉をくぐると、客室乗務員が待機する客室センターがある。なかは一般的なオフィスそのもの。空港ロビーに立ち並ぶテナントショップの裏側に、こんな空間があるなんて、行き交う搭乗客の多くは全く気づかないだろう。

羽田空港の客室センターの様子
(写真:陶山 勉、以下同じ)
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 搭乗前の客室乗務員は、とにかく忙しい。時間との戦いだ。次の搭乗便で提供するサービス内容や機体設備、到着地の情報などを短時間で頭に入れる。同じ便に乗り込む客室乗務員同士でミーティングをして、機内でのフォーメーションや注意事項を確認する。

 テキパキと動く客室乗務員は全員、iPadを手にしている。このなかにANAの接客ノウハウが詰まった、門外不出の業務アプリが入っている。慌ただしい客室乗務員の業務負荷を少しでも軽減し、サービス品質を高めるための秘密兵器だ。ANAは2018年6月から、このアプリの利用を開始した。

iPadアプリで搭乗前の準備の抜け・漏れをなくす

 ANAの客室乗務員の業務は、このiPadアプリに従って進められる。「搭乗前の準備から機内作業まで、アプリに表示されるメニューの順番通りに仕事(タスク)を進めれば、抜け・漏れなく作業を進められるように設計した」と、ANAの松坂かん奈オペレーションサポートセンター品質企画部オペレーション企画チームスタッフアドバイザーは説明する。

ANAの松坂かん奈オペレーションサポートセンター品質企画部オペレーション企画チームスタッフアドバイザー
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 使い方はこうだ。客室乗務員は出勤するとまず、iPadアプリを立ち上げて、自分のその日のスケジュールを確認する。搭乗する機体や機内で提供する料理などの情報が全て、アプリ画面から得られる。搭乗前に確認しておくべきことが一覧できるのだ。

 やるべきことの項目をタップすると、それぞれの項目に対応した電子マニュアルが画面表示され、詳しい作業内容を見ることができる。例えば、飛行機の設備は機体ごとに異なるので、搭乗前には必ず設備を確認しておかなければならない。iPadアプリで搭乗便をタップすると、機体の見取り図や機内設備を簡単に確認できる。

 搭乗後もiPadアプリは大活躍。例えば、客室乗務員による機内アナウンス。搭乗客に伝えるべき内容は、便ごとに異なる。従来はアナウンスのマニュアルから、該当ページを探す必要があった。しかし今はアプリを見れば、自分の搭乗便で話すべき内容が分かる。

 「客室乗務員にタブレットを提供している航空会社は珍しくないが、ここまで細かく機内業務を支援できるアプリを搭載している企業はほかにはないと自負している」(恒川久美オペレーションサポートセンター品質企画部担当部長)。

ANAの恒川久美オペレーションサポートセンター品質企画部担当部長
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