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ここまでの成果が出るまでの期間は、モデル作成に3カ月、予測に基づく面談などの離職予防トライアルに3カ月と計6カ月。今後は、データの取り方を全国の拠点で標準化し、レポートをExcelではなく、BIツールでダッシュボード化するなどの仕組み作りを進めていくとのことです。
「Excelでの管理には限界があります。今は実務に役立つツール開発という、第3のカベに直面しています。でも『儀式』を終えたこの現場なら大丈夫でしょう。何より、やらされ仕事ではなく、当事者意識を持ったメンバーと仕事ができるのは楽しいですね。本当にやる気があるのかどうか分からない人たちと、不毛なAI談義をしている暇はありません。
逆に、こういう経験を何度もすると、世間で『AIが人間の仕事を奪う』とか『コールセンターは将来なくなる仕事の代表格だ』などと騒いでいることが不思議だと感じます。そもそも、人間の知恵や現場の創意工夫がないと、AI化なんてできやしない。一度、この手のプロジェクトに参加してみれば、誰もが分かることなんですけどね」(北出さん)
AIというと、デジタルなものだという印象を持つ方も少なくないでしょう。しかし、コールセンターでの離職予防の事例から分かるように、アナログな領域でもAIは活躍できます。データがちゃんと計測されていれば、アナログもデジタルも関係ありません。
しかしながら、アナログ領域のデジタル化はまだまだ進んでいないのが現実です。北出さんは、アナログ領域とデジタル領域の温度差を「デジタル化のねじれ」と呼んで問題視しています。
「日本では、アドテクとかデジタルマーケティングをやっていた人が最前線で、デジタルトランスフォーメーションの担い手だという雰囲気があるんですよね。それは違うんじゃないかと。もともとデジタルなものをデジタル化するって、意味不明ですよね。IoTやサイバーフィジカルシステムなど、よりアナログの世界、つまりフィジカルをデジタル化するような方向。それが最先端なんです。いまさらアドテクでもないんですよ。
でも、一方のアナログな世界の人たちは、デジタルの世界で起きていることが、どこか他人ごとで、本当は自分たちが今、渦中にいて最前線に立っているという自覚がありません。『デジタル世界の人たちが何かやってくれるんだろう』と。今までの業務プロセスをAIで変えていくのは自分なんだという当事者意識が希薄です。だからデジタルトランスフォーメーションが進まないんですよ。現場を熟知したアナログの人たちが、自分たちこそ当事者であり、変革者であるという自覚と誇りを持たないと」(北出さん)
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