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 格安スマホの先駆けとして知られる日本通信。競争激化でレッドオーシャン化した個人向け市場に早々と見切りを付け、現在は通信プラットフォームの開発・提供に専念する。ただ足元の業績は厳しく、営業損益は3期連続の赤字だ。

日本通信の売上高と営業損益の推移
出所:日本通信の資料に基づき日経 xTECH作成
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 そんな同社が巻き返しに向けた取り組みとして自信を見せるのは、FinTech向けのプラットフォーム事業である。唐突な印象を受けるかもしれないが、同事業で重要な役目を果たすのが「サブSIM」。通常のSIMカードに貼って使うシール状のSIMカードだ。日本通信が2年以上も前から用意周到に準備を進めたもので、エイチ・アイ・エスと共同で設立したH.I.S.Mobileが2018年7月に始めた海外渡航者向けSIMサービス「変なSIM」でも採用された。

H.I.S.Mobileの「変なSIM」。通常のSIMカードに貼って使う
出所:H.I.S.Mobile
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サブSIMに2種類の電子証明書を格納

 2018年6月の改正銀行法(銀行法等の一部を改正する法律)の施行を受け、金融機関はオープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の導入を迫られている。政府の「未来投資戦略2018」によると、全邦銀139行のうちインターネットバンキングを提供していない9行を除く130行がオープンAPIの導入を表明済みである(2018年3月時点)。

 そこで日本通信が狙うのは、安全なトランザクションを担保できる通信プラットフォームの提供だ。オープンAPIを活用するFinTech事業者と金融機関をつなぐ通信はもともとセキュリティを確保しやすいので心配が少ないとして、同社が懸念するのはFinTech事業者と顧客との間のセキュリティである。

FinTechプラットフォームの位置付け。図のJCIは日本通信
出所:日本通信
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 インターネットバンキングでは専用のハードウエアトークンや乱数表を用いた認証が一般的となっているが、どちらかと言えば家庭のパソコン向け。今後は出先でもスマートフォンで気軽に利用する形態が主流になっていくと想定すると、トークンや乱数表を持ち歩くのは不便である。

 最近ではスマホのアプリやSMS(ショートメッセージサービス)経由でワンタイムパスワードを発行する動きも見られるが、スマートフォンを紛失してしまうと悪用されるリスクがある。