「え、まさか私が羽布名人に勝ったの!?」 「CLASSY.」着回し企画に“女性初のプロ棋士”が登場 自由すぎるタイトル戦コーデに将棋クラスタ騒然
「詰将棋解いてたら彼氏に怒られる」というおちゃめな1シーンも。
「CLASSY.」2018年10月号が、将棋クラスタの間でじわじわと話題になっている。特集「毎日着ても飽きない カーデ6枚で9月の着回しDiary」という女性誌ではおなじみの“着回し企画”の主人公が、まさかの「女流初のプロ棋士」だったのだ。
着回し企画とは、数枚の服をあらゆるパターンで組み合わせることで、さまざまな着こなしを参考にできる女性誌の人気企画だ。単にいろいろなコーディネートを見せるだけではない。「広告代理店の営業として働くミホ」「アプリ会社の広報ユキ」などオリジナルキャラクターを仕立てて、彼女が恋に仕事に奮闘する中で、TPOに合わせたおしゃれを楽しむ姿をストーリー調で語るのはもはや定番だ。
筆者は将棋ファン歴4年で、女性ファッション誌をふんわりと読んでいるアラサー読者だ。中村真梨花女流三段が「表参道駅で見かけた広告、驚きました 女性誌で将棋をテーマに取り上げて頂けるのは、嬉しいですね」とツイートしたとき、「へえ~、着回し企画で将棋が登場するんだ!」と興味を引かれた。
どんなストーリーなんだろう。最近、将棋も女性の趣味として注目されつつあるもんな~。「最近将棋を趣味に始めたらハマっちゃった! マンネリ気味の彼氏には愛想つかされ気味。教室で教わってる〇〇四段とイイ感じになっちゃって、恋の予感……!?」みたいな感じかな? そんな風に想像を膨らませていた筆者は、見事にその期待を裏切られることになった(良い意味で)。
女流初のプロ棋士まどかの着回し企画
「今回の主人公は…女流初のプロ棋士となり、タイトルを次々と獲得している30歳のまどか」――マジかよ! プロだった!!
ちなみに「将棋のプロ棋士」と「女流棋士」はまったく別物で、なるためのルートや棋戦も異なるので、男性棋士と同じ棋戦で戦う彼女は「女流初」ではなく「女性初のプロ棋士」の間違いだろうな……と思われるが細かいことは置いておこう。
現在、実際の将棋界にはタイトルが8つあり、9月4日現在、8人の棋士がそれぞれのタイトルを持ち合う群雄割拠の時代だ。その中で30歳未満は3人で、いずれもタイトル獲得は1期のみ。30歳でタイトルを「次々と獲得」できるのはかなりの実力者……というか超絶天才といっていいだろう。
そんな彼女は、仕事(将棋)だけではなく恋にも一生懸命。「商社に勤める彼氏とは付き合って1年になるが、自分の仕事をなかなか理解してもらえないのが悩み」という設定だ。才能にクラッとくる将棋ファンなら誰でも「いやいやいや理解しろよ! 相手は希代の天才棋士だよ? 間違いなく将棋史に名を残す人だよ?」と彼氏に詰め寄りたくなるところだがこれもガマンしよう。
季節の変わり目、温度調節もしやすくおしゃれにも使いやすいカーディガンを活用するまどかの日常はタイトルの防衛戦から始まる。通常、タイトル戦は和装で臨むことが多いが、まどかはビビッドなピンクのカーディガンに白いTシャツで見事タイトル防衛をキメる。
その後もコータ君(理解の無い彼氏)とデートしたり、対局相手のリサーチをしに図書館へ行ったり、棋士まどかの生活はカーディガンとともに続く。確かに、対局前に相手のことを調べる棋士は多いもんね~。……いや待てよ、図書館で何を調べるんだ……? 相手が最近指した棋譜を確認して、どんな戦法を使うか調べるとしても、自宅のPCに入れてる特別なソフトを使うことが多い気がするけども……。
まどかは将棋教室でも教えている。対局だけでなくイベントやメディアへの出演に忙しいタイトルホルダーが、将棋教室を持つことは非常にまれなので、まどかは普及にも超絶熱心な棋士だと推測できる。解説の仕事も積極的に受けているようだ。えらい。
一方で自己研さんも欠かさず、研究会にも参加している。ちなみに研究会というのは(さまざまな形式があるものの)棋士や奨励会員が実際に将棋を指す練習会のような形式が一般的なのだが、CLASSY.読者は知っているのだろうか。さらに戦術の復習も欠かさないまどか(手に持っているのが『5手詰めハンドブック』なのはツッコミどころ)。
まどかの恋に大事件
そんなまどかの日常に事件が起こる。将棋ファンにはおなじみの定食屋「みろく庵」でデートをしていたところ、ついつい将棋の本を開いてしまい、コータ君に「食事中に将棋の本を読むな」と怒られてしまうのだ。
しかしこれはどう考えてもまどかに非がある。そもそもまどかが読み始めた『7手詰めハンドブック』は7手で詰む詰将棋を集めた名問題集で、将棋ファンでも、ちょっとした空き時間や移動中などに、頭の体操も兼ねて解くことが多いものだ。直近で話題になっていた戦法について扱った最新の棋書の続きが気になって仕方ないならまだしも、詰将棋は1人でやろうね!
まどかは反省もせず「大目に見てよ」とコータ君の怒りもどこ吹く風。このマイペースさ、将棋に対する愚直な姿勢が女性初のタイトルホルダーを生んだのだ。
9月も終わりに近づき、まどかは憧れの羽布名人(“羽生”じゃないですよ、念のため)と対局の機会を得る。羽生善治竜王にそこはかとなく似ている、対局相手の方の棋士っぽさが絶妙だ。尊敬する相手が和服を着て待ち構えるタイトル戦でも、まどかは首にスカーフをあしらう余裕さ。羽布名人とは初手合わせなのにこの日の対局に勝てばタイトルを奪取できるということは、数回戦ってタイトル獲得者を決める番勝負形式ではないのですね。現在あるどの棋戦とも異なるけど、そこをツッコむのはヤボですね。複数冠おめでとう、まどか!!
……ツッコミどころがないわけではなかったが、女性初のプロ棋士でタイトルホルダーという設定の主人公が、強く美しく将棋界で活躍する姿をファッション誌で見られたことは、女性将棋ファンの端くれとして大変うれしかった。「みろく庵」など、将棋ファンなら誰もがくすぐられる小ネタを入れてくるところもウマい。
「CLASSY.」読者に大きな声で伝えたい。将棋の世界には斎藤慎太郎七段や都成竜馬五段といったイケメン棋士や、竹俣紅女流初段や里見咲紀女流初段といった美人女流棋士もいるんですよー! ひいきの棋士を見つけて応援するだけでも楽しいし、ルールを覚えて自分で指すともっと面白さが広がる。今回の企画を機に、オトナ女子の趣味として将棋がもっと盛り上がったら、まどかもきっと喜ぶだろう。
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