新着記事を読むなら!
AI開発プロジェクトは、成功するまでには大体3回失敗する――こう語るのは、トランスコスモスでデータサイエンティストの立場から、数々のプロジェクトの成否を見届けてきた北出さん。
インタビューの最終回となる「後編」では、こうした失敗を乗り越え、新米オペレーターの離職防止に機械学習を使って成果を上げた、通信サービス会社の事例を紹介してもらいます。
「3カ月後に辞めてしまうであろう、オペレーターを予測してもらいたい」
北出さんは、コールセンターの運営責任者からそのような依頼を受けました。人手不足と時給の高騰が進む中、コールセンターの離職防止はどの企業でも重要な経営課題となっています。
採用コストと手間をかけて何十人も採用し、数々の研修や面談を経てオペレーターとして戦力化できたのに、数カ月後に辞めてしまう。しかし、事前に離職を予測し、予防できれば、大きなコスト削減や業務品質の安定化をもたらします。とはいえ、コールセンターは全国に拠点があり、そこからオペレーターの退職予測に役立つデータを集めるのは容易な話ではありません。
「勤怠情報ですら各拠点でデータの集め方や内容、形式などが異なっていました。それもExcelで管理されていれば良い方で、紙やPDFでしか残っていないものもありました」と北出さんは振り返ります。
その中でも、大阪にある事業所のデータは、他拠点に比べてデータの内容もリッチで“きれい”な状態だったため、大阪から始めることに。まずは、運営責任者にいきなり指示されて困惑している現場担当者にプロジェクトの趣旨や経緯を説明し、通常業務の合間を縫って教師データを用意してもらったとのこと。そのやりとりだけで、数週間かかったそうです。
しかも、受け取ったデータはオペレーターの名簿と勤怠情報くらいしかなく、こちらが望む内容や形式とは異なるものでした。とはいえ、現場が頑張って用意してくれたデータです。細かいことは言わず、まずはそのデータを使って予測モデルを作ってみました。すると、案の定失敗してしまったそうです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.