1978年7月、ペニー・ファーマーさんの実の兄とその恋人の遺体がグアテマラの海で発見された。
その遺体は縛り上げられ錘(おもり)がつけてあり、拷問をうけた跡がうかがえた。
長いこと犯人は見つからなかったが、妹の執念が実った。37年後、ペニーさんはその犯人をFacebook上で発見したのだ。
スポンサードリンク
突如謎の失踪を遂げたイギリス人カップル
当時グアテマラを旅していたペニーさんの兄クリスさん(当時25歳)と、彼女のペタさん(当時24歳)のイギリス人カップル。
ところが、ペタさんが家族に宛てた「これからアメリカ人の小さな漁船に乗ってホンジュラスに行く」という手紙以降ぷっつりと連絡が途絶えた。
心配になった両方の家族は現地当局に通知し、その捜索が行われた。
ペニーさんの父は現地の港長に連絡を取り、手紙に書かれていた漁船を突き止めた。
漁船を運航していたアメリカ人男性、サイラス・ボストンはイギリス総領事館の取り調べを受けたが、失踪した彼らの行方に関わったという証拠はでなかった。
カップルは海に浮かぶ遺体となって発見される
1978年7月、グアテマラ沖にカップルの遺体が浮かんでいるのが発見された。検死官は両方の死体の状況はひどく恐ろしいものだったと語った。
体中に拷問の跡が残る遺体は紐でぐるぐる巻きにされ、錘(おもり)がつけられていた。おそらくは海に沈められたものと思われる。
きわめて残虐な事件にもかかわらず、犯人は見つからない。
唯一怪しいのはサイラス・ボストンだ。彼には数々の前科があった。かつて、暴行、銃の隠匿所持などで逮捕されている。
更にはサイラスの7人いた妻のうちの3人目の妻が10年前に失踪しており未だ行方不明となっている。要注意人物ではあるものの、彼が犯人であるという決定的な証拠は見つからなかった。
結局グアテマラ、アメリカ両国の警察の協力も得られず、事件は闇に葬られていった。
謎の失踪を遂げたクリスさんとペタさん
image credit:facebook
長い月日を経て、事件の真相が明らかに
犯人が見つからないまま月日は流れていった。
絶対に犯人を見つけてやる。強い意志でこの事件を追い続けたペニーさんの父親は、その真相を知ることなく2013年に他界した。だが父親の強い意思はクリスさんの妹、ペニーへと引き継がれていった。
事件当時17歳だったペニーさんはジャーナリストとなった。
2015年ペニーさんはFacebookでサイラス・ボストンを探すことを思いついた。そしてついにサイラスのアカウントを発見する。サイラスのみならず彼の5番目の妻と2人の息子のアカウントも見つけることができた。
事件の真相を追ったペニーさん
image credit:facebook
犯人はやはり、あの船のアメリカ人だった!
ペニーさんは2人の息子に連絡を取った。すると意外な事件の真相が判明した。
サイラスの二人の息子、ラッセルとヴィンスはこの30年間、父親がクリスとペタをグアテマラで殺害したのを目撃したと警察に訴え続けていたのだ。ラッセルとヴィンスは事件当時同じ船に乗っていたという。
彼らはアメリカの警察だけでなく、スコットランドヤードやFBI、インターポールにまで通知したが、誰も取り合ってくれなかったという。
だがようやく、事件は動く。
2015年、ラッセルとヴィンスがアメリカ・サクラメント警察に、失踪したサイラスの3番目の妻はサイラスが殺害したという事実を明かし、この事件の調査が再開された。
このタイミングでペニーさんがイギリス警察を通してサクラメント警察に連絡したことで、グアテマラでの殺人事件も進展する。
事件に関するラッセルとヴィンスの目撃調書もペニーさんと母親らの元に届いた。
Facebookでサイラスを発見してから6ヶ月後の2016年3月、ペニーさんと母親らはようやく事件の真相を知ることができたのだ。
調書で分かった事件の残虐性
目撃調書によると、ペニーさんの兄は酷い状況で甲板に縛られ、ペタさんは下の船室で暴行されていた。その後二人は殺害され、おもりを付けられ海に投げ捨てられた。
クリスさんは頭蓋骨を含め複数の骨折を負った状態であったが、最後までペタさんを安心させようと声を掛けていたという。
また、ラッセルによれば、サイラスはクリスさんとペタさんを殺害した後、自らの息子達に対し、これを秘密にしないと殺すと脅したという。
事件の終わりはあまりにもあっけなく...
実はFacebookでサイラスが発見されたのは偶然だった。
サイラスは数年前よりカリフォルニア州の老人ホームで暮らしており、友達がいないことを愚痴っていたために介護士にFacebookアカウントを作ってもらっていたのだ。
だがこの偶然のおかげでペニーさんはサイラスとその家族を見つけ、長年暗闇の中にあった事件に日の光を当てることができた。
2016年12月、ペニーさんがFacebookでサイラスを見つけてから14ヶ月後、事件から38年の時を経て、サイラスはグアテマラでのクリスとペタの殺人罪で逮捕起訴された。
しかし2017年4月、サイラスは臓器不全で入院先の病院で息を引き取った。
法廷で裁判を受けさせたかったペニーさんにとっては残念な終わりとなってしまった。家族を若くして失った苦しみは決して消えることはないが、事件の真相とその犯人を知ることはできた。
ペニーさんはこの事件をまとめた『Dead in the Water』を出版した。
他にも犠牲者が?
こうしてペニーさんとその家族の事件は一応の結末を迎えたが、サイラスにより殺され、未だその真相を知らない犠牲者の家族はまだまだ存在するのかも知れない。
ラッセルによれば、グアテマラでの殺人の2週間後にもサイラスは二人の観光客を殺しているいう。またラッセルは、サイラスが殺した人数は確実に33人はいるという。
SNSなどの普及で情報検索が容易になったことで解決したとも言える今回の事件。
近年は同様にSNSを通じて解決した事件も多く存在するが、逆にSNS絡みの犯罪もある。SNSはまさに諸刃の剣といったところだろう。
References:distractify/ written by abcxyz / edited by parumo
あわせて読みたい
- 適者生存ではなく怠け者生存?種の絶滅の謎を解くカギは?(米研究)人類(2018年8月30日)
- ジョン・レノンの息子とポール・マッカートニの息子のツーショット写真人類(2018年8月19日)
- 自閉症スペクトラム障害の人は数学が得意である場合が多い。その謎が明らかになりつつある(イタリア研究)人類(2018年8月16日)
- 【朗報】男の脂肪は簡単に落ちるということが判明!その方法とは?PR(マッスル-NET-)
- 「ジムってほんとに必要?」AYAさんのダイエット法がSNSで絶賛の嵐PR(MORE STYLE編集部)
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
いいね!しよう
カラパイアの最新記事をお届けします
「知る」カテゴリの最新記事
- 太平洋の海底に無数の巨大な足跡が!新種の巨大生物なのか?(太平洋)
- 雨にも負けず風にも負けず。暴風雨の中、律儀にショッピングカートをカート置き場に戻すおばあさんの姿
- 大雨の中、店の外に繋がれていた犬を発見した店員男性、犬が濡れないようジャケットを被せてあげる(アイルランド)
- 殺虫剤で依存症?ミツバチが殺虫剤を好んで食べるようになることが判明(英研究)
- オーストラリアの海岸に打ち上げられたクジラの巨大な舌。いったいなぜ?(※舌注意)
- 生きることを放棄する。スウェーデンで発生している「あきらめ症候群」の子供たち
- プロの写真家が写真に魔法をかけていた。美しい写真の舞台裏、ビフォア・アフター
- ヤギだって笑顔が好き!ヤギは人間の気分がわかり、笑っている人を好む(ブラジル研究)
「人類」カテゴリの最新記事
- 雨にも負けず風にも負けず。暴風雨の中、律儀にショッピングカートをカート置き場に戻すおばあさんの姿
- 生きることを放棄する。スウェーデンで発生している「あきらめ症候群」の子供たち
- ふっさふさやないか!大毛量のロングヘアに魅了される人が続出中!5歳のモデル少女、ミアちゃん
- ホタルの光ならぬマクドナルドの光。マクドナルドの照明を頼りに路上で勉強していた少年に世界が感動(フィリピン)
- 幽霊?脱獄囚?それとも・・・。拘束具を付けた女性が深夜にドアベルを鳴らすという恐ろしい事件が発生。その顛末は?(アメリカ)
- 人間捨てたもんじゃない。小さな灯はいたるところに。心が温まる10の話
- 粗大ゴミの不法投棄対策。ゴミの中に住所を記した伝票が入っていたので持ち主に返却
- 落雷による傷跡。人体に刻まれた稲妻のような樹状の図形「リヒテンベルク図形」(※閲覧微注意)
この記事をシェア : 90 56 4
人気記事
最新週間ランキング
1位 5700 points | 残念なお知らせ。飲酒に適量はなく、総合的にみると健康に悪影響を及ぼすという研究結果(米研究) | |
2位 1895 points | 引っ越し先の家に1通の置き手紙が。それは先住人が裏庭に住み着いた足の不自由な野良猫を思いやる手紙だった(アメリカ) | |
3位 1730 points | 弱い犬ほどよく吠えるというが...睾丸の小さいサルほど鳴き声が大きいという研究結果(英研究) | |
4位 1641 points | シルバーバックの大きなゴリラの親友は、その指先ほどの小さな動物。やさしくいたわり一緒に遊ぶ(カメルーン) | |
5位 1488 points | ここ3年の地球の夏は12万年ぶりの暑さだったかもしれない件(NASA) |
スポンサードリンク
コメント
1. 匿名処理班
??
船に同乗してた息子二人が目撃して警察に訴えてたにも関わらず30年放置されてたのはどういうことなん
これ、警察側の過失の問題が大きいような気がするけど(´・ω・`)
2. 匿名処理班
やるせねぇな…
3. 匿名処理班
これだけ解り易い犯人を放置し続けてたグアテマラ警察無能過ぎない?
4. 匿名処理班
小説、映画の特捜部きゅ〜に似たような話がありました。
5. 匿名処理班
33人も殺してるのに野放しとかてん
6.
7. 匿名処理班
タイトルだけみたら映画に出来そうだと思ったけど
警察の怠慢がひどいな
裏で繋がってたとか?
8. 匿名処理班
複数国家が関わる事件だと、捜査する側も面倒臭いのかなあ。
グローバリズムの時代、気をつけなきゃ。
9. 匿名処理班
米国では保険が不十分だから、逮捕されなかったら病院に行けなかった可能性もあるね
モヤモヤするなぁ
10. 匿名処理班
※3
サイラスはアメリカ人だし息子たちが訴えつづけてたのもアメリカの警察
グアテマラ警察への風評被害イクナイ!
11. 匿名処理班
ラッセルとヴィンスが行動したおかげで犯人が逮捕されたのであって
ペニーは何も役立っていないし、本にして儲けただけじゃん
タイトルの謎なんて最初からなかった
犯人はラッセルとヴィンスが知っていて警察に訴えていたのだから
ペニーが知らなかっただけ
この事件の本当の謎は、アメリカの警察およびスコットランドヤードや
FBI、インターポールが30年間も訴えを無視続けたことであって
その謎は全く解明されていない
12. 匿名処理班
※1
同じく。
13. 匿名処理班
世の中にどれだけの殺人鬼が過去の犯罪を隠して生活しているのかね
14. 匿名処理班
グアテマラ含め中米は事件の件数がハンパないのでまともに警察が機能してないで有名
今でもあれなのに40年前じゃもっと酷かったってのは容易に想像つく。
....もちろん犯人はそれを狙ってたのでしょう
狡猾な殺人鬼が寿命を全うってのも後味悪いね
15. 匿名処理班
なぜ息子が訴えているのに何も動かなかったんだろ??
イミフ過ぎる。
16. 匿名処理班
こういうのを見てるとそのうちAIで犯人探せるようになりそうだなと思う
17. 匿名処理班
そんな殺人鬼でも友達いないとか愚痴るんだな
わからん
18. 匿名処理班
人間の暗部に触れたみたいでズーンとくるなぁ
19. 匿名処理班
※1
日本を含めたどこの国の警察も、いくら証言があったとしても何かしらの証拠がないと動けないんや…
33人殺したと言ってても、殺されたとされる人間の失踪届が出てなかったり、死体も遺留品も全部処分されてて身元がわからなければ捜査のしようもないし、捜査権の問題もあるから管轄外の地域の事件は動きたくても動きにくいって現実もある
まあ、3番目の妻の件も含めて身内が散々言っても全く動いてないってのは流石に怠慢と言われてもしゃーないけど
20. 匿名処理班
警察が何故そんなにも長い間何もしなかったのかがただただ不可解だし後味悪い
21. 匿名処理班
こんな極悪犯でもこれだけの女召し抱えてた(恐らく)のに俺らと来たら
22. 匿名処理班
あんまりにも不条理な話しだ
23. 匿名処理班
アメリカの銃問題の元々は警察が信用出来ないのが始まりらしいから、なかなか取り合ってもらえなかったのも理解出来る気がする。大変な国だ。犯人は反省する事無くなくなったってゆうのがほんと遣る瀬無い
24.
25. 匿名処理班
※7
裏でつながってるとか映画の見すぎ
めんどくさいってだけ
26. 匿名処理班
>アメリカの警察だけでなく、スコットランドヤードやFBI、インターポールにまで通知したが、誰も取り合ってくれなかったという。
取り合わなかったこいつらも同罪だ。
魂は汚れた。
地獄行きだ。