10代の若者は「スマホ依存」を危惧している:調査結果

デジタルネイティヴである10代の半数以上が「スマートフォン依存」の自覚と危機感を強くもっており、スマホやSNSから距離を置こうとしていることが、米シンクタンクの調査で明らかになった。一方で、スマホから離れると不安や孤独を覚える矛盾も抱える若者たちを、オンラインプラットフォームが虎視眈々と狙っている。

TEXT BY HITASHA TIKU
TRANSLATION BY NORIAKI TAKAHASHI

WIRED(US)

Teens-Biz

PHOTO: DREW ANGERER/GETTY IMAGES

米国の10代はスマートフォンと、複雑な、ときには矛盾した関係にある。もちろん大人にも当てはまることだ。米非営利調査機関のピュー研究所が発表した最新の調査結果によると、子どもたちはスマホ利用時間が多すぎるのではないかという悩みと、スマホから離れたときに感じる不安とのはざまで、どうにか折り合いをつけようとしていることがわかる。

8月22日に発表された調査結果からは、米国の13〜17歳の若者のうち54パーセントが、スマホに時間を費やし過ぎていると悩んでいることがわかる。そして52パーセントが利用時間を減らすための対策をとっていて、57パーセントがソーシャルメディアにかける時間を減らそうとしている。

ところが、利用時間を減らそうとする努力は、必ずしも彼らを幸せにはしない。56パーセントの若者が、スマホから離れると不安や孤独、いらだちといった感情を覚えているからだ。

ほかにも、この調査でわかったことがある。スマホの画面を見ている時間が長すぎると感じていても、自分の行動を変えにくいということだ。スマホの利用時間が多いと答えている10代のなかで、実際に利用時間を減らしているのは53パーセントだ。一方、利用時間が少ないか、または適度だと感じているにもかかわらず、利用時間を減らした10代の割合は55パーセントで、両者はほとんど違わなかった。

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10代の若者のほぼ半数が、スマホから距離を置こうとしている──。この調査結果は何を意味するのだろうか。ピュー研究所上級研究員のモニカ・アンダーソンによると、同研究所にとって今回は10代を調査するのが初めてだという。このため「評価が難しい」と、彼女は言う。

10代の若者が自分自身をどう見ているかが、ひとつの指標になるかもしれない。自分たちの世代が直面する問題として9割以上が、「ネットに時間を使いすぎていること」を挙げている。6割は大きな問題として捉えている。

アンダーソンによれば、同じような悩みと行動との乖離は、大人を対象としたプライヴァシー調査でもはっきりわかるという。この調査では、監視されることや自分たちのデータが勝手に使われることを危惧していると答えた大人が、必ずしもネットの使用習慣を変える傾向にはないことを明らかにしている。

スマホを見たい衝動と親も闘っている

ピュー研究所の調査は、若者の「テクノロジー依存症」が及ぼす有害な影響に対する懸念が高まっているときに発表された。評論家はテクノロジー・プラットフォームの経営者たちを非難している。彼らは非良心的で、節度がなく、われわれが携帯機器を手放そうとするたびに、その行動をためらわせるような無言の圧力をかけてくる。

グーグルのデザイン倫理担当者だったトリスタン・ハリスのような業界インサイダーは、ユーザーを巧みに操るよう設計されたソフトウェアに問題があると強調する。それがユーザーの脳内に神経伝達物質のドーパミンを断続的に分泌させ、ユーザーの目をスクリーンに釘づけにしているというのだ。

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実際に今回の報告によると、10代の子の親も同じようにスマホを見たいという衝動と闘っており、ときには子どもよりも依存しているのがわかる。両親の39パーセントが「たびたび」あるいは「ときどき」、スマホをチェックすることで仕事への集中力をなくしたことがあると言っている。

それに対して、同じ理由から授業への集中力をなくすと答えた10代は31パーセントだった。さらに、10代の51パーセントが両親や保護者と話をしようと思っても、「たびたび」あるいは「ときどき」両親や保護者がスマホに気をとられていることがあると答えている。

大手テクノロジー企業は、ソーシャルメディアの利用時間を「有意義な時間」にしようと唱える運動の拡大に目を光らせている。さらに結果として、スマホの利用が子どもに及ぼしかねない精神的、身体的ダメージをめぐってモラル・パニック[編注:通常の社会規範に反するような事象が発生したとき、社会の大多数の人々が過剰に反応すること]が起きないか注視している。

その対策として、例えばフェイスブックは3月以降、10代の若者の親が抱く不安を和らげるために、新たな取り組みやツールをいくつか発表している。そのなかには、FacebookやInstagramにオプションとして「デイリー・リマインダー」機能を設定できることも含まれる。これは、1日の上限利用時間を設定し、それに達するとユーザーに通知する機能だ。

子どもの心を奪うフェイスブックの戦略

それでも主要なオンラインプラットフォームにとって、10代の若者は利益を生み出す主要なユーザーであることに変わりはない。各社の成長が鈍ってきたいまでは、なおのことだ。

オンラインメディア「BuzzFeed News」が入手したフェイスブックの社内メモには、子どもの心を奪うための戦略が書かれていた。フェイスブックはこれを現実化しようと思えば、できる可能性があるのだ。

その社内メモの内容は、若者に人気のソーシャル投票アプリ「TBH」[編注:「To be Honest(正直に言うと)」の略。友だちについての質問に匿名で答え、その結果の褒め言葉が本人に通知されるというもの]の創設者が述べたもので、高校生をとりこにした「心理的トリック」の要点が書かれている。TBHはフェイスブックが2017年10月に買収した。

とはいえ、10代の若者はトリックにひっかかることにいずれ飽きるはずだ。その証拠に、フェイスブックは今年7月、利用状況が低調であるとして、TBHを閉鎖した。

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