カリブ海に浮かぶ小国・ドミニカ共和国に住み、中南米の新興国を舞台に貿易事業を展開する風間真治さん。今回は、通貨単位を10万分の1に切り下げるデノミを実施した南米ベネズエラでの「仮想通貨DASHカンファレンス」のレポートです。
経済危機がますます加速する、南米ベネズエラでは今、国民たちの海外流出が止まりません。
私が住むドミニカ共和国の首都サントドミンゴは、ベネズエラから飛行機でわずか1時間半。ベネズエラ人は90日未満であればビザ免除で入国できるという協定もあって、日に日にベネズエラ人が増加しており、石を投げればベネズエラ人にあたる、と思うくらい、ベネズエラからの入国者が街に溢れています。
ベネズエラからドミニカ共和国への入国は、90日未満の滞在ではビザは免除されるものの、移住となると居住権を取得する必要があるので、多くのベネズエラ人がビザ免除で入国して、90日を過ぎた後もそのまま不法滞在していると思われます。
ベネズエラではハイパーインフレ解消の目処は立っておらず、今月に入りついにデノミ(通貨単位の切り下げ)が行なわれ、通貨の価値は10万分の1に切り下げられました。その影響で、銀行口座にボリバル通貨を持っていた人たちは、一瞬にして自分の財産を失うことになったのです。
更に、多くの失業者をうみ出し始めたことで周辺の国々も警戒感を強めており、特に元々移住者が多い、コロンビアやドミニカ共和国、エクアドル、ペルー、チリといった国々では、ベネズエラからの入国者についてはハードルを高めるだろうと予想されています。
実際、先月、私は仕事の関係で、ベネズエラ人を一人ドミニカ共和国に受け入れる予定でしたが、入国時にそのベネズエラ人が所有していた米ドルがわずかしかないという理由で、空港のイミグレーションで監禁されてしまい、次の日まで出してもらえないということがありました。最終的には入国は認められましたが、監禁されている間、ご飯も食べさせてもらえず、水も飲ませてもらえずということで、空港から出てきた時は若干衰弱していて心配しました。私もイミグレーション長官との折衝に立ち回らなければならず、大変苦労しました。
充分な米ドルを所有してドミニカ共和国に入国できるベネズエラ人など、今どき、ほぼ存在しないのはドミニカ共和国のイミグレーションも十分承知しているはずなのですが、それぐらいベネズエラからの入国者の増加に頭を痛めていて、対策をし始めたということだと思います。
今回、最低賃金の改正も行なわれ、8月20日からの改正法で、最低賃金は1億8000万ボリバル(約1900円)から1800ボリバルソベラノ(約3300円)になりました。これと同時に、ベネズエラ政府が定めたのは、国がICOで発行した仮想通貨ペトロに裏付けされたデノミ後の新紙幣の発行です。
1ペトロは現在の原油価格に相当する60米ドルに換算されますが、これが新紙幣になると、3600ボリバルソベラノにあたります。つまり、新紙幣のボリバルソベラノの価値は、1ペトロとペッグされているという状況です。1ペトロが金のように普遍的な価値を持つためには信用が大事になりますが、現状では1ペトロを所有していればオイルと交換が可能ということで、その価値を担保しているかたちです。
こうした状況下で、特に昨年から続くベネズエラ国内での仮想通貨の広がりは、ますます勢いづいています。
これまでもレポートしたとおり、私は現在ベネズエラでいくつかのビジネスを展開しており、そのすべての支払いを仮想通貨で送っています。それは、国際送金などができず、仮想通貨での支払い以外、替わるものがないからで、逆に言えば仮想通貨で支払いができる人だけが取引の対象となっているということです。
ベネズエラ政府は今年に入って、ペトロという国独自の通貨を発行しましたが、ベネズエラ国内でペトロに期待している人たちはほとんどいません。むしろ多くの人は長らく続いている政府の稚拙な舵取りに失望しており、ベネズエラ国民が現在、望んでいるのは政府に管理されない通貨と、それらが現実の生活でより多く使われること。ベネズエラ人たちは政府がコロントロールすることに対して懐疑的な目を通り越して、期待すら抱かなくなっているといえます。
ビットコインをはじめとした仮想通貨の取引量は、世界的にみると、一時のバブル時期に比べて低迷しているなかで、ベネズエラではビットコイン通貨の値段が下がろうと上がろうと、全体の取引高がいまだに多く、また特筆すべきは仮想通貨での実質社会での使用が増えてきており、世界でも類を見ない仮想通貨のユースケース大国となっている点です。
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