毎年、春になるとつらい症状が出るスギ花粉症。このアレルギーの原因になるスギ花粉を年単位で舌下から服用し、体を慣らすことで症状が出ないようにする治療法が、舌下免疫療法だ。これまでは液剤しかなかったが、子供にも使える錠剤が新たに登場した。
スギ花粉症の治療は内服薬や点鼻薬で症状を抑える対症療法が中心だが、「これはスギ花粉症を起こす体質自体を治す根本療法」と日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の大久保公裕教授。ある程度の花粉量を長期間、持続的に服用すると、逆にアレルギー反応を抑制する免疫反応が起こるのだという。
スギ花粉症に対する舌下免疫療法は2014年に健康保険が適用され、約9万人が治療を受けている。厚生労働省の研究班の患者アンケートによると、秋以降に治療を始め、翌シーズンにくしゃみや鼻水などの症状が改善した人は約8割。一般に治療期間が長くなるほど、効果は高まるとされる。
治療に用いられる薬は従来、スギ花粉のエキスを舌下に噴霧する液剤(商品名「シダトレン」)のみだったが、18年6月末に錠剤の「シダキュア」が登場。これには大きく3つの特徴がある。
1つめに効果が強いこと。シダキュアは1日1回、1錠を舌下に含むが、最初の1週間は花粉量が2000JAUのものを、その後は5000JAUに増やし、3~5年間服用し続ける。「シダトレンより花粉の含有量が多く、効果が強い」と大久保教授。花粉量が多い分、副作用の頻度は上がるが、多くは口の中の腫れやのどの刺激感などの一時的な局所症状だという。
2つめは使いやすいこと。液剤は冷蔵庫で保存する必要があるが、錠剤は室温保存が可能なので、容易に持ち歩ける。
3つめは使用年齢の制限がないこと。シダトレンは12歳以上にしか使えなかったが、シダキュアは子どもにも使える。「ただし、錠剤は舌下で1分間保持する必要がある。それができる年齢となると5歳くらいからが現実的だろう」と大久保教授。
■治療は11月頃までに始める
治療はスギ花粉が飛んでいない時期に始める。来シーズンでの効果を期待するなら、11月頃までには始めたほうがいい。
舌下免疫療法は根気のいる治療だが、錠剤の登場でこれまで以上に身近になった。とはいえ、効果が得られない人が1~2割いるのも事実。また新薬なので19年4月末日までは14日分しか処方されず、2週間に1回通院が必要なことも知っておきたい。
なお、舌下免疫療法は、血液検査などでスギ花粉症と診断された患者が対象。ただし、膠原病やがん、妊娠・授乳中の人などは受けられない。初回の服用は、副作用に対応できるよう、安全を期して医療機関で行われる。治療を受けられる医療機関はこちらのサイト(http://www.torii-alg.jp/mapsearch/cryptomeria.html)で検索できる。
(ライター 佐田節子)
[日経ヘルス2018年9月号の記事を再構成]