『あなたの声が聞きたくて…。』
次女の部屋で見つけたメモの切れ端。
メモ紙に斜めに書かれた小さな文字。
次女は決して詩人なんかではない。
父さんは、君にかける言葉が未だに見つからない。
あれから一年。君の彼氏がこの世を旅立ってから。
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娘達と彼と..。
性格が対称的な大学生の娘が二人いる。
一匹狼で、同性との付き合いが苦手な長女。
社交的で、人の輪の中にいて、生徒会長にも推薦されていく次女。人のうけがいいのか、高校も大学も学校長の推薦。試験を受けたことすらない。
お姉ちゃんのドタバタ劇場で、家の中が進行してきたから、次女はいつも放置してきた。君はいつだって大丈夫。親は都合よく思っていたけど…。
次女が高校の時から付き合っていた彼氏。何度も家に遊びに来ていた。幾度か遊びにも行っている。
長女と彼氏 + 次女と彼氏 + 父さん(僕)
運転手と財務省を兼ねて子供のデートに付き添う。
現代の子供は、親と普通に出掛ける。キモイ?キモくない? 違う?違くない? どっちが正解。
誘われたから出かけるだけで、自ら手を挙げて、過保護満載で付き添う訳ではない。
それじゃ、単なる馬鹿だ。まぁ、根本的に気持ちも身なりも若い。(☝︎ ՞ਊ ՞)☝︎
僕の世代は、親と歩いているだけで、隠れなければならない風潮があった。本当は、誰も何も思っていないはずなのにね。
サヨナラは突然に
昨年の夏のこと。突然の訃報だった。
他県の大学に進学して、一人暮らしをしていた次女の彼氏。死因は心不全。
誰にも気付かれずに、1週間後に遺体としてアパートの一室で見つかった。
享年 19歳の若すぎる突然の死。
当たり前であると思える日常は、決して、当たり前として続かない。
だから、何もないという平凡である日々の大切さをひたすら感謝して欲しい。
僕は、高校生の時に、幼なじみで、初めて付き合った彼女を白血病で亡くしている。
既に何十年にも遡る話。陽炎のように、想い出も曖昧になったかも知れない。
それでも、16年間を共に過ごして生きてきたから、大切な思いは自分の魂へと刻んできた。
愛おしく思いながら、歳を重ねていくのだと思う。
二人分を必ず生きると強く約束しているから。
試練のループ...。偶然...。天は、何を求めさせたいのか。人の儚さというものを、何の前触れもなく、躊躇もせずにぶつけてくる。
だから、不意に人生ってなんだろうと、首を傾げながら捉えてしまう。そんなことばかりを、日々考えてしまう。
当たり前のことだけど、人は死ぬために、今を一生懸命に生きている。
『命の回数券』テロメア
細胞分裂の回数制限。無限ループ構造ではない。
分裂ごとにカウント値がデクリメントされていく。そこに進化はない。細胞達は、命を守ろうと常に働こうとするのに改善すらしない。何故だろうね。
歩んできた道のり。目の前の我が子。全てに後悔はないよ。幸せだと思う。
娘にかける言葉が見つからない
娘が悲しみにふける。これも生きているという証。
最愛の一人息子を亡くされた、彼のご両親の心中を察すると、かける言葉は見つからない。
今年、二十歳になった次女。
来年の成人式に、執行部として協力して欲しいと役場から要請があった。
中学と高校の学校長から推薦があったらしい。
『いつも、元気で明るい人』
役場のお気楽なキャッチフレーズ
お馬鹿キャラのように見える。本当は....。臆病で脆くて弱い。何でも無理に受け止めようとする。
長女のように、腹の中にある黒いものを吐き出せば、少しは楽に生きられると思う。
そう、させなかった親が、全て悪いとは思っている。
次女は、時より、ふと考え込む仕草をする。
『私は大丈夫だから。』無理矢理、笑顔を見せる。
楽しく、笑いながらに時を過ごしていく。それが、故人に対しての何よりの正しい礼儀。
僕は、素直にそう思って生きている。
答えは、直ぐには見つからないかも知れない。
けど、父さんが言いたいこと…。
新しい恋を始めてください。
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