登録会員限定記事 現在はどなたでも閲覧可能です

 情報法制研究所(JILIS)は2018年9月2日、「サマータイム導入におけるITインフラへの影響に関するシンポジウム」を開催した。

立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授
[画像のクリックで拡大表示]

 登壇した立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授は「サマータイム導入には数多くのシステムの改修が必要で、残り2年弱では間に合わない」と強調した。

 上原教授は、8月上旬に安倍晋三首相が自民党にサマータイム導入検討を指示した直後に「2020年にあわせたサマータイム実施は不可能である」というスライドを公開し、問題提起した。熱心なサマータイム導入反対論者として知られる。

 シンポジウムの場で上原教授は、家庭の電波時計やネット家電、気象庁や地方自治体が設置する地震計システム、地方自治体の戸籍システム、食品流通業界の受発注システムなど多くの具体例を挙げて、サマータイム対応にかかる工数の膨大さを解説した。

多摩大学ルール形成戦略研究所の福田峰之客員教授(元内閣府副大臣、左)と日本IT団体連盟の別所直哉政策委員会委員長
[画像のクリックで拡大表示]

 多摩大学ルール形成戦略研究所の福田峰之客員教授(元内閣府副大臣)はこれに同調し「サマータイム導入のような重大な政策決定は、IT分野の対応が可能かどうかという根拠に基づいて『エビデンスベース』でするべき。今の議論は何となく五輪の暑さが大変だという『エピソードベース』で進んでいる。このまま導入してしまうと後で大変なことになる」と述べた。

 IT業界団体の1つである日本IT団体連盟の別所直哉政策委員会委員長も「我々IT連盟としてはサマータイム導入に反対の立場。日本ではIT人材が不足している。限られたIT人材をサマータイム対応ではなく、もっと前向きなイノベーションに振り向けるべきだ。今意見書をまとめているところで、今後、自民党への働き掛けをしていく」と述べた。

 JILISは同じ日に「著作権侵害サイトによる海賊版被害対策に関するシンポジウム」を実施し、上原教授らが登壇した。