至高の兄(骸骨)と究極の妹(小悪魔)   作:生コーヒー狸
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出番が無くなったあの人のお話です。


その後のエ・ランテル

 ンフィーレア誘拐事件も無事に解決した事だし、一旦ナザリックへと帰還する事にした。お兄ちゃんからも「すごく美味しい奴らが来るぞ♪」と言われたので丁度いいタイミングだ。漆黒の剣(白)は頑張ったご褒美にしばらくお休みだ。ルクルットはさっそくナーベラルとデートしにいくみたいだ。

 

 人間を止めた?影響か、彼女の好感度も(僅かに)アップしたみたいで、ちゃんと名前を覚えたみたいだ。それまではペテルの名前をペテン(それはルクルットの事だ)とか、ニニャの名前をニャ(トロールの勇者ですね)と呼んでいたりした。なぜかダインの事は間違えなかったので、不思議に思って聞いたら、「ダイン・ウッホワンダー」という微妙な間違い方をしていた。

 よく調教されたファンであるルクルットは自分から「俺の名前が呼びにくいのが悪いからです。わかりました!そのまま下等生物と呼んで下さい」と言っていた。これはンフィーレアにも見習って欲しいと思う。ンが最初だとちょっとね…

 

 ついでにミスリル級昇格(本当はオリハルコン級もいけたけど一部からケチがついた)のお祝いに、装備をもう少し上のランクにしてあげようとしたら、「このままで(白いまま)大丈夫です」と言われた。激戦を潜り抜けた装備なので愛着が湧いてしまったみたいだけど本当にいいの?

 

 今日は新しく目覚めた力(笑)を試してみる予定だ。これから冒険者ギルドの訓練場を借りて、サンチャンと剣の練習だ。ンフィーレアから(本人に無断で)貰ったタレントは凄い!あらゆる武器・防具が自由に装備出来るようになったのだ。代わりに私が持っていた「水属性ダメージ5%上昇」という微妙なギフトが失われてしまったが、全然OKだ。さらにこの能力を使えば、系統に関係なく魔法のスクロールが使用可能という便利さだ。

 

「お早うでござるよ姫。さあ、それがしの背に乗って欲しいでござる!シズ殿とエントマ殿が手入れしてくれたおかげでフワフワでモコモコになったでござる♪」

 

「どれどれ~?わあっ!もこもこのふわふわだね~♪」

 

 ハムスケの体毛は見かけと裏腹に頑丈で、人間が武器で攻撃してもはじき返しちゃう強さだ。だからムギューってするとチクチクしてしまうのだ。それを聞いたプレアデスが全身シャンプー&トリートメントでお手入れしてくれたのだ。

このシャンプーは鎧が装備出来ない動物系キャラの為のアイテムで、使うと体毛の物理防御力と魔法防御力がアップする効果があるので、ぷーにゃんにも使っていたものだけど、こんなフワフワ効果まであったとは驚きだ!

 

 こうしてハムスケに乗って冒険者組合に向かったけど、周りからの注目が物凄い!

 

「あれが伝説の森の賢王か!?凄い迫力だな。」

 

「噂の「純白の英雄」達と一緒に、アンデッドの大群を倒して都市を救った正義の魔獣だ!」

 

「その背に乗っている美しくて可愛らしいお嬢様は誰だ?」

 

「お前知らないのか?さる偉大にして至高な御方の妹君だという話だ。」

 

「伝説の大魔獣もお嬢様の美しさに平伏して、自ら騎獣になる事を誓ったんだ!」

 

 おおっ!さすがハムスケだ。そして私もけっこう注目されているぞ。

 

「その御方とは、この近隣を荒らし回っていた帝国兵からカルネ村を救ったというアインズ・ウール・ゴウン様か?」

 

「アインズ・ウール・ゴウン様は王国の惨状に義憤を覚えて、都市長のパソナレイに人の道を説いたそうだ。」

 

「悔い改めたパソナレイはアインズ・ウール・ゴウン様に忠誠を誓ったんだ。おかげで税は今までの半分!治安も良くなった。」

 

「悪の王国に反旗を翻して、周辺の農村を加えて都市国家エ・ランテルとして独立する計画が進んでいるらしいぞ!」

 

「それは素晴しい!こんなクソったれな王国からはさっさとおさらばしたいもんだ!」

 

 あれ??何かおかしな方向に話しが進んでいる様な?これもお兄ちゃんの計画何だろうか。

 

「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!」「アインズ・ウール・ゴウン様万歳!」

 

「お嬢様かわいい!」「お嬢様かわいい!」「お嬢様かわいい!」

 

 何だこれは!!どうしてこうなった?

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

 エ・ランテルにある安酒場……そこのカウンターで1人の男が酔いつぶれていた。商売とは言え、男の見苦しいくだに店主も辟易しており、表情にこそ出さないものの、さっさと帰れよコノヤローと思っている。

 

「ちくしょお~……何であんなやつらが…俺だって、本当ならこのおれが…」

 

 男の名はイグヴァルジ。少し前まではエ・ランテルに3つしかないミスリル級冒険者チーム「クラルグラ」のリーダーとして一目置かれていたが、現在はとある理由から白金級へ降格された上に、冒険者組合での依頼受諾を禁止され、多額の賠償金まで課せられるという憂目にあっていた。事は昨日の昼過ぎに遡る…

 

「いったいどういう事だそれは!?」

 

 イグヴァルジ率いるクラルグラ達が依頼の報告に冒険者組合を訪れると、組合内は2つの話題で持ちきりだった。当然だが彼らにとっては初耳――彼らが依頼の為にエ・ランテルを離れていた数日の間で起きた事だった。イグヴァルジは冒険者組合が、帝国兵による襲撃事件の影響で都市外での依頼を凍結するらしいという情報を入手してすぐに、組合長であるアインザックへ強引な売り込みをかけて「エ・ランテル近郊の森に潜む盗賊団の調査」という依頼を受けた。事実、依頼を受けた直後に都市外での依頼を凍結するという発表がされ、彼はほくそ笑んだのだった。

 

 本来なら鉄~銀級で十分な依頼を、フォレストストーカーである自分の能力をアピールし、さらに不測の事態に対応するには銀級では不安という理論を展開して、既に依頼先が決まっていた案件に割り込んだのだ。ちなみにそのとき割を喰ったのが、当時は白くなかった漆黒の剣だった。

 

 彼がここまで露骨な行為をしたのは、当然だが自分達の利益の為である。国の事とは無関係なはずの冒険者である自分達が、なぜ国の都合で制限を受けなければならないのか?という考えから、合法的に都市の外へ出る名分を得るための行為だ。

 そして依頼事態は、ミスリル級としての実力はあったクラルグラは1日と経たずに達成していた。出発した日の夜には、森の奥にある盗賊の塒を発見している。このあたりは優秀なフォレストストーカーであるイグヴァルジの功績だろう。

 しかしイグヴァルジは、依頼事項を達成した後も2日間ほど森に滞在して、わざと帰還を遅らせてまで小金稼ぎに勤しんだ。帰還後の食いぶちを少しでも稼ごうという、ミスリル級にあるまじきセコさだ。

 

 そうして他の冒険者を出し抜いた事に気分を良くして帰還した彼を待っていたのは「エ・ランテルで初のオリハルコン級チーム誕生?」「新発見の遺跡より超高品質武具を持ち帰ったライバルチーム」という、彼をあざ笑うかのような事実だった。

 

「どういう事なんですかね組合長?新発見の遺跡なんて話は、この俺には全く知らされていなかったんですが?エ・ランテルで最高位のミスリル級チームである俺達を除け者にしたという事ですか!?」

 

 まずイグヴァルジは、組合長であるアインザックに喰ってかかった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()で、エ・ランテルを離れている間に情報が入ったからだが?(冒険者の情報収集は自己責任だろうが)」

 

「くっ…ですが、余りにも急な話しじゃありませんか?未発見の遺跡ならじっくり時間を掛けた調査ってものが必要でしょう?それに都市外での依頼は凍結されていたんじゃないですか?あいつらだけ特別扱いというのは不公平だと思いますがね?」

 

「早急に優秀な冒険者を複数派遣して欲しいという、遺跡の情報を提供して下さった御方の依頼でね。(銀級冒険者の依頼に割り込んだ貴様がそれをいうか?)」

 

「その御方とやらはそんなに偉いんですか?強引すぎやしませんかね?」

 

「とても身分も力もある御方だ。都市長からも絶対に無礼が無い様に言われている。可能な限り便宜を図る様にともね!(挨拶代わりとして戴いた、オリハルコン製の短剣は素晴しかった!しかも魔法まで付与されている!)」

 

 イグヴァルジが食い下がるが、アインザックは右の耳から左の耳へだ。そしてさっちんの賄賂は効果覿面だった様だ。ちなみに魔術師組合長も同様である。

 

「冒険者組合が貴族の横暴に屈するというのは、ちょいと…いや、かなりマズイんじゃないですかい?こんな事が冒険者に知られれば……」

 

「都市長の斡旋を無碍に出来る訳ないだろう!それに君だって…随分と色んな貴族へ売り込みを掛けていたらしいじゃないか?(知っているぞ!お前がパトロン欲しさに貴族へ声をかけていたのを。もっとも相手にされなかったらしいがな!ププっ)」

 

イグヴァルジの下卑た問いかけにも、アインザックは動じる事はないどころか、彼の素行を皮肉る余裕さえある。

 

「そ、そいつは誤解ってヤツですよ!あくまでいい依頼がないかという営業活動の一環です。」

 

「まあ、そういう事にしておこう。話しはそれでお終いかね?(帰れよ)」

 

 図星を突かれたイグヴァルジは慌てて誤魔化すが、アインザックはさっさと話しを打ち切る気マンマンだ。

 

「そ、それでしたら俺達クラルグラも、その貴族様へ紹介して下さいよ!俺達がその遺跡に行けば、あいつらより凄いお宝を持ち帰って見せますぜ。」

 

「ああ…その遺跡なら特に許可は必要ないぞ。お嬢様も「初回限定だよ♪」と仰っていたので行くのは自由だ。それにしても寛容で太っ腹な――おっと女性に対しての褒め言葉としては不適格だったな。オホン、お嬢様は準備金に金貨100枚(エ・ランテル予算)を各チームへ払ったうえに、遺跡から持ち帰られた武具についても全て冒険者の物にして良いと言って下さったんだ!(わかったら帰れよ)」

 

「なっっ!!(チクショー!そんな美味しい依頼だったとは)」

 

 イグヴァルジは逃した魚の大きさに地団駄を踏む。ちなみにクラルグラが今回の依頼で得た報酬は、討伐したモンスターの報奨金を合わせても金貨6枚ちょっとだ。話しを聞いただけの金・銀級チームでさえ金貨10枚の報酬があった事を考えると、彼の企みは大失敗だったようだ。

 

「彼らも感激していたよ。まあ…何人かはその武具を売却して「田舎へ帰る」と言って引退してしまったが…優秀な冒険者がもったいない――おお!感激といえば、重症を負った(負わされた)女冒険者に無償で治癒魔法を(メイドが)施したなんて事もあってね。まったく素晴しいお嬢様だよ。(だから帰れよ)」

 

「そりゃルール違反でしょうが?神殿が黙ってないはずだ!?」

 

「神殿からも献身的で慈愛溢れる行為だとコメントがあったが?(帰れ)」

 

 ここにも賄賂が炸裂していた。神官のギグナル・エルシャイもニッコリだった。

 

「ま、まだだっ!漆黒の剣だっ!あいつらがオリハルコン級とか何の冗談ですか?いったいなぜ?」

 

「墓地で起きた事件を聞いていないのかね?千体以上のアンデッドを殲滅、あのズーラーノーン幹部2名の撃破、さらに拉致されたリイジー・バレアレ氏の孫の救出。十分にオリハルコン級と認められる偉業だよ。」

 

 現在は彼らの功績を組合で協議中だが、オリハルコン級で問題なしという意見だ。この後で正式発表してから、後日プレート交換になる。

 

「そ、それ位の事は俺達だって……」

 

「まず不可能だろう。首謀者の一人であるネクロマンサーのハゲはスケリトル・ドラゴンを2体同時に召喚したそうだし、もう一人の女戦士はその所持品から、多数の冒険者を殺害した事が確認された。殺害された者にはミスリル級はおろかオリハルコン級も含まれている。」

 

「それこそ銀級ごときには不可能なはずだ!あいつらは出鱈目を言ってやがるんだ!」

 

「衛兵にも目撃者が大勢いるんだがね。それに漆黒の剣(白)は、例のお嬢様が後見をされているチームだ。それを疑うなんてとんでもない!口を慎みたまえ!」

 

「何だそりゃ!?何であいつら如きが?」

 

 あまりにも見苦しいイグヴァルジに、いよいよアインザックも困り果てて来た。

 

「お嬢様が遺跡探索とは別にエ・ランテルでの案内を探していてね。品行方正と言う事で紹介したんだ。君に依頼を融通した件の詫びもあってね。しかしさすがはお嬢様だ!きっと彼らの将来性を見抜いていたに違いない。そして私の目に狂いは無かった。彼らならいつかやってくれると信じていたよ。」

 

「ぐぐぐぐ…だがやはり、いきなりオリハルコンはっ……」

 

「わかったわかった。そういった意見もあるという事をこの後の会議でいっておくよ。シッシッ(それでは忙しいので失礼するよ)」

 

 イグヴァルジの執拗な意見に組合長が譲歩したのか、漆黒の剣(白)はミスリル級に留まる事になった。これには他の冒険者からも多少は同意の声があった。理由はあまりにも事件が迅速に解決した為に、エ・ランテルの被害が驚くほど少なかったので、冒険者達にも実感がなかったからだろう。

 

 こうして多少の溜飲を下げる事に成功したイグヴァルジだったが、翌日に怒りを再燃させる出来事があった。彼が街中を歩いていると、非常に端正な顔立ちと流れる様な美しい黒髪の女性、同じく端正な顔立ちで太陽の様な笑顔と魅力的な褐色の肌、燃えるような赤髪の女性を見かけた。彼女達はメイドの様で、彼がだらしなく鼻の下を伸ばしていると、女性と親しそうに話す白い男がいた。

 

「あいつはっ!間違いねえ…漆黒の剣のメンバーだ!(白くなってるけど)」

 

 イグヴァルジの目前では自分よりはるかに格下だったはずの男が、不当な評価で自分と同格扱いされているうえに、美女を2人も侍らせているという許しがたい行為の真っ最中だった。

 

「ささっ、どうぞナーベラル様!このフルーツにシロップをかけたヤツは絶品なんですよ!女性にも大人気!ルプスレギナ様もどうぞ!さあ遠慮なさらずに。」

 

「どうも…ルクルットさん。」

 

「いやー悪いっすね♪オマケの私にまで。ナーちゃんもファンにはもっと愛想よくしないとダメっすよ!」

 

「どうしてルプーが着いて来ているのかしら?」

 

「それはナーちゃんがルクルットと間違いを起こさないかと心配しての事っす。あれれ?もしかしてオジャマだったっすか?」

 

「なっ!?そんな訳ないでしょう?」

 

「ご安心を!確かにプレアデスの皆さまは魅力的ですが、このルクルットの推しメンはナーベラル様唯一人!浮気などするものですか!」

 

「ウシャシャシャ!いやーコイツ最高(のオモチャ)ッす♪」

 

 100人中99人が振り返る美女2人と親しげに話すルクルットを見れば、男だったら嫉妬の1つもするだろう。しかもルクルットを一方的に逆恨みしていたイグヴァルジにしてみれば「憎しみで人が殺せたら……!!」となるのは必然だった。

 

「おやぁ?何かオッサンがこっちを睨んできてるっすけど、ルクルットの知り合いっすか?私こわいっす♪(トラブルの臭いっす♪)」

 

「あんな下等生物(カマセイヌ)と関わりがあるとは……ルクルットさんにはお嬢様の僕として自覚が不足しているのでは?」

 

 ルプスレギナは楽しそうなトラブルの臭いを嗅ぎつけてわざと言っているが、ナーベラルは素で言っている。彼女にとっては人間=下等生物というのは不変の公式だ。

 

「とんでもない!あんなチンピラとは全く面識はありません!」

 

「誰がチンピラだっ?この前まで銀級だった分際であんまり調子に乗ってるんじゃねぇぞ!」

 

 売り言葉に買い言葉。こうなればイグヴァルジも引けなくなった。

 

「きゃー痴漢っすよー!!襲われるー助けてーっす♪」

 

「全く…(命令で仕方なくしている)デートの途中だというのに……」

 

「ご心配なく!皆様に不埒な真似を働こうと目論む悪漢は、姫の忠実な下僕であるルクルットが成敗して御覧にいれます!」

 

 彼らの言い合いに、周囲の人も何事かと興味をもちだす。

 

「痴漢だと?」「卑劣な!」「犯罪だ!」「痴漢を見逃すな!!」

 

「なっ…違う!俺はただ…」

 

 あっという間に痴漢にされてしまったイグヴァルジ、このままでは彼の名誉は地の底まで落ちる事は確実だ。どうしてこんな事になってしまったのか?あまりにも危機的な状況に彼がとった行動は……

 

「ウワアアアアアァオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

 子供の様に泣きじゃくりながら両腕をグルグルと振りまわしてルクルットへ突進するしか出来なかった。もちろんそんな技術も考えない出鱈目な攻撃が通じる筈も無く、レベルアップしたルクルットに返り討ちにされたイグヴァルジは「メイドに狼藉を働こうとしてボコられた変態野郎」とされ、未遂だった為に衛兵に捕まる事こそなかったものの、激怒した組合長から「白金級へ降格」「組合で依頼受諾禁止」「制裁金500金貨」という処分を受けた。

 

 こうして飲んだくれるしかなくなったイグヴァルジだが、彼には固い絆で結ばれた仲間達がいた。

 

「こんな所にいたのかイグヴァルジ。元気出せよ。」

 

「ウグヴァルジか?こんな俺を見捨てずに…」

 

「俺もいるぜ。お前だけにいいカッコさせるかよ。」

 

「エグヴァルジ…お前もか。」

 

「クラルグラは、お前だけじゃないんだぜ。」

 

「オグヴァルジまで……みんな、ありがとう!」

 

 こうして立ち直ったイグヴァルジは汚名返上の為に、仲間達と「謎の墳墓」へ旅立った。そこで財宝を見つけ出してクラルグラの名声を取り戻す事を夢見て……

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「あっ、あの、アインズ様、侵入者はこれで全部です……こ、これでよかったですか?」

 

 上目づかいで尋ねてくるマーレにアインズは満足そうに微笑む。

 

「完璧だ。少し汚い死体だが問題は無い。残りはどうした?」

 

「え、えっと……死体はその木の後ろに置いてあります。」

 

 冒険者組合の資料では、森林での活動に定評のあるチームとあったので、第六階層のジャングルへ転移させたが見るべき物はなかった。しかしミスリル級冒険者という事でそこそこの強者には違いない。丁度良い使い道があったとアインズは満足する。

 

「ご苦労だったなマーレ。さてと…こいつらはアンデッド作成の媒介にするか。上位冒険者が素材なら通常より優れたアンデッドになるのか?スキル《中位アンデッド作成》――死者の大魔法使い(エルダーリッチ)

 

 頭部がカチ割られた死体を黒い霧が包み込み、その霧を纏ったままゆらりと死体だったものが立ちあがる。霧がはれると、骨と皮からなる肢体を豪華だが古びたローブに包み、捩じくれた杖を持った死者の大魔法使い(エルダーリッチ)になる。

 

「ふむ…特に違いは見られないな。やはりアイツが特別だったのか?まあいい…お前の名は――」

 




彼がザリュースと戦うシーンは屈指の名場面だと思います。






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