マーベルシリーズのなかでもデッドプールの次におちゃらけていると言ってもいいアントマンことスコット・ラング。
前作ではやり手の泥棒である彼がハンク・ピム博士にその腕を買われ、なんやかんやあってアントマンに任命。そのまま面倒ごとに巻き込まれているうちにヒーローとしての自覚(市民のためというよりは娘のためだが)が芽生えるというドタバタヒーローコメディだったが、今作も装いはそのままに更にアクションとコメディが増量された傑作だった。
MCUシリーズのファンなら観なきゃ損!ていうか観ないという選択肢はあり得ない!そのくらいオススメの作品です。
いやー、やっぱりMCU作品は、すべらんなぁ(松本人志ふう)
魅力たっぷりの登場人物たち
まず本作の面白さを語るうえで特筆したいのは登場人物が実に魅力的であるということ。
ストーリーの面白さやアクションシーンのカッコよさも前作以上だが、出てくる主要な人物に捨てキャラがいないというのが素晴らしかった。
スコットがシビル・ウォーにてソコヴィア協定に反発するキャプテン・アメリカに加担した罰として2年間の自宅軟禁と3年間の観察保護が言い渡されている状態から物語が始まる。
この2年間で彼の周囲の環境がいろいろ変わっているのだが、そのあたりは作中でしっかりと説明してくれるのでありがたい。とりあえずスコットがどこかの海賊王みたいに脳筋になったりしていなかったので安心した。
2年の間にすっかり前妻のマギーとその夫のバクストンとは有効な関係を築いており、娘のキャシーとも前作以上にしっかり親子の絆で結ばれている。特にキャシーが前作以上にパパ大好きっ子になっているうえに大人顔負けの的確なアドバイスをしたりスコットがピンチのときにはFBIをかく乱し、スコットを心の底から勇気づける言葉をサラッと言え、終いにはスコットとホープの恋のキューピットにまでなってしまうあたり、将来大物になる予感がものすごい。
よくできた子です
スコットの元泥棒仲間であるルイスたちは本作でも存在感を発揮していた。特にルイスは終始、物語に絡むキーキャラクターとなっていてカーチェイスもこなすなど大活躍で前作以上に魅力的なキャラとなっていた。最後の最後まで引っ張る自白剤のくだり、ほんとすき。
また、敵役のエイヴァ(ゴースト)がアントマンたちと敵対する動機が純粋悪ではないところにマーベルコミックスらしさを感じられて良かった。自身に降りかかる呪いから来る恐怖によって感情的な言動を取ってしまう、そこからヒーローに負けて改心するというのはMCUシリーズお馴染みの演出だ。
そのうえ闇市場のディーラーであるバーチもいかにもアメコミチックな小物感が出ていてすごく良かったなぁと。
その能力はスーツのおかげちゃうんかーいっ!とツッコミたくなった
そして何よりスコットの元仲間というだけでFBIに追われ続けて激おこだったピム博士とホープがあっという間にデレるのがかわいい。ホープ、スコットのことメッチャ好きやん。クールビューティーがデレるとこってなんでこんなにキュンキュンするんでしょうかね。たまらん。
唐突にイチャイチャモードのスイッチが入るスコットとホープが微笑ましいし、それに呆れつつツッコミを入れるピム博士もすっかりバカップルの対応に慣れていて、すげぇホッコリするじゃん…なんだよこれ…すき…ってなる。
アントマン1からシビル・ウォーまでの間の話を30分とかでもいいんでスピンオフ作品で出してくれないだろうか。
ホープかわいいよ、ホープ
120分があっという間に感じられるほど濃密な内容
本作のストーリー構成はさすがマーベル映画といった感じで120分があっという間に感じられた。(これの前に観たのが銀魂2だったもんで余計にそう感じたということもあるんだろうけど…)
本作はアントマン目線、ゴースト目線、あとは大した活躍はしないがバーチ目線と3すくみでのバトルとなっており、展開がコロコロと転換する。そのうえ終盤には粒子に突入したピム目線も加わってくるのでもう画面上はゴッチャゴチャになるわけだが、これらすべてが絶妙に噛み合ってしっかり一連のアクションシーンの流れとして見事に纏まっているので観ていて非常に気持ちがいい。
特に中盤のピム博士のラボを奪い合うシーンの疾走感は凄まじいし、どこかしらでドタバタやってるもんだから映像が常に派手でとにかく飽きない。家族連れのなかにチビッ子もいたけれど、途中で飽きてモゾモゾしだすような子はいなかったように思えるのは、きっとそれほど画面にくぎ付けだったのだろう。まぁ、私自身くぎ付けになっていたため、単にチビッ子の挙動に気付いていなかっただけかもしれないが…。
ジャイアントマンにもなるよ!(事故だけど)
またアントマンならではのコメディ色も健在で、大真面目なアクションシーンの最中にもちょいちょいコメディ要素が入ってくる。しかしこれが全く物語を邪魔せず入ってくるうえにしっかり笑えるのだからお見事。やっぱり銀魂2と比べると(以下略)
深刻なシーンでは息を飲み、アクションシーンで度肝を抜かれたと思ったら、不意に来るコメディシーンで劇場全体が笑い声に包まれる。120分通して絶妙な緩急を楽しめるこの感覚は、デッドプールのそれに近いと感じた。デッドプールが好きな人はアントマン、オススメです。
吹替版を観た所感とネット上の評価
魅力的なキャラのなかにはFBI捜査官のジョン・ウーもいて、彼はFBIとしての職務を全うする(お手柄も欲している)真面目な人柄なのだが、どこか抜けていて、ゆるふわ系。スコットのことも実は好きだろ。
そんな彼の声の吹替を担当しているのはお笑い芸人の宮川大輔なのだが、実は宮川大輔は以前にも劇場版名探偵コナンのオリジナルキャラの声優をしていて、そのときはもうネット上でボロクソに叩かれまくったという過去がある。
それだけに割と出番の多いウー捜査官の声を担当することにネット上では非難の声が多くあがったらしいが、個人的には「あっ、本職の人ではないな」という程度で特に違和感は感じなかった。きっと事前に情報を全く入れずに観たため『宮川大輔が喋っている』という先入観がなかったのが良かったのかもしれないが、ネット上でボロクソ叩かれているほどの酷さではない。
ルイスほんとにいいキャラしてるよなぁ
そもそも吹替版を観たのは前作のアントマンをたまたま吹替版で観た際に、同じく芸人のブラマヨ小杉が演じるルイスの吹替が妙に気に入ってしまったのと、ホープ演じる内田有紀が続編でどのくらい上手くなっているのか気になったからであるが、小杉の演技は相変わらず癖になるし内田有紀は相変わらず内田有紀だった。(上手いとは言ってない)
洋画には「字幕がいいですか?吹替がいいですか?」という質問がつきものだが、こればかりは個人の好みの問題なので正解はないだろうと思っている。きっと宮川大輔の吹替に違和感を感じ、小杉と内田有紀の演技も鳥肌が立つほど嫌いな人もいるんだろう。
ということで前作の吹替版を観て「なんだ、吹替でもぜんぜんイケるやん!」と思えば本作も吹替で観ても問題なく楽しめるし、「ゲスト声優とか反吐が出るわ!」って人は素直に字幕で観ることをオススメする。
まぁ、ネタバレレビュー記事で今さらこんなこと言っても意味ないんじゃね?とは我ながら思うが。
実はインフィニティ・ウォーの続編に繋がる重要な話
「インフィニティ・ウォーに関係あるよ!」と公式に発表されたのは『マイティ・ソー バトルロイヤル』と『ブラックパンサー』だったが、この2作品はインフィニティ・ウォーに繋がる話としてのこと。実はアントマン&ワスプは公式には語られていないが、インフィニティ・ウォーにメチャクチャ関係のある内容だったりするのだ。
『アベンジャーズ3』ことインフィニティ・ウォーではアントマンの出番がなかったことを覚えているだろうか。サノスという強大な敵との死闘をアベンジャーズが繰り広げている最中にアントマンは何をしてたのかという答え合わせが本作にあたる。(ハッキリとした時系列は語られていないため、ピッタリ真裏で起きていた出来事かどうかは判断できないが…)
そのため、エンドロール後にはサノスが指パッチンをした直後に繋がる超重要な場面が流れる。「あぁん!ホープが消えちゃったぁ!」とか、「ジャネットさんせっかく量子世界から出てこれたのに指パッチンですぐ消されて草」とかいろいろ思うところはあるけれど、お決まりのテロップ「アントマンとワスプは返ってくる」に「?」がついていたのが何よりも気になる…!(監督曰く大した意味はないらしいが)
アントマン(スコット)とワスプ(ホープ)は是非ともアベンジャーズ4に出てほしいと思っていたけれど、あの感じから言うと三代目ワスプは彼女なのでは……。いや、もしかしたらアントマンが時間の渦に巻き込まれてというパターンか……!?(ここの考察は是非とも映画を観た人と語り合いたい)
ちなみに制作の裏話としては本作の脚本家はそもそもアントマンをインフィニティ・ウォーに出演させるつもりはなかったらしい。
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』にアントマンを参戦させなかった理由について脚本家のクリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリーは「アントマンというキャラクターの雰囲気は『インフィニティ・ウォー』のダークでシリアスなトーンと合わなかった。『アントマン&ワスプ』が数カ月後に公開されることを考えれば尚更だ。『アントマン』はとても楽しく、陽気なシリーズです」とマルクスは説明する。
「アントマンをこのようにヘビーな映画に登場させておいて、『アントマン』の制作陣に『彼は地獄のような目にあったけど、今から楽しい映画を作ってよ。その後、またシリアスに戻るから』と言うわけにはいきません。なので、作品の繋がりを調整し、観客が(『アントマン』続編を観ている時に)嫌な思いをしないようにしました」と語った。
また、社長のケヴィン・ファイギは本作について「ミクロ化して量子世界に消えた初代ワスプのジャネットを見つけ出す物語です。それ以外に、『アベンジャーズ4 (仮題)』に直接つながる物語でもあります。それにより本作に登場するキャラクターたちは、今後かなり重要になります。」と明かした。
この判断はグッジョブ。あの全編シリアスな内容じゃスコットの魅力が殺されちゃうもんね。
他にいろいろ気になった小ネタとしては
仕事を選ばないことで有名なハローキティだが、本作では超巨大なペッツとなって敵をなぎ倒す役目を担っている。これでええんか…。サンリオ…。
また、元S.H.I.E.L.D.の科学者でピム博士と研究仲間であったビルも本作において話の要になる重要なキャラなのだが、な~~んかどこかで見覚えがある。けれど最近見た記憶もないし…。う~~~む…。と上映中気になりっぱなしだったので、上映後すぐにググってみたらなるほど納得。
ビルを演じたローレンス・フィッシュバーンはマトリックスシリーズでモーフィアスを演じている俳優だった。見るんじゃない、感じるんだ。(手クイクイッ)のシーンは未だに鮮明に覚えているが、ずいぶんと歳を取ったなぁと思えばそれもそのはず。マトリックスは1999年に1作目、2003年に2、3作目が公開されている。
そっかぁ…。歳を取ったのはモーフィアスだけじゃないんだなぁ…(遠い目)
※インフィニティ・ウォーに繋がる他の作品のレビューはこちら