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この「極言暴論」の読者ならご存知の通り、私は「SIerの死滅」を主張し続けている。以前ならその主張をせせら笑うSIerの経営幹部が多かったが、クラウドの時代になりデジタルの世が訪れてユーザー企業のIT投資動向の変化を実感したのか、最近では自ら「人月商売を続けていては先が無い」と危機感を吐露する経営幹部が増えてきた。ところがである。「SIerの存在意義は不滅だ」と真っ向から否定する人がIT業界に現れた。
いやぁ、なかなか面白い理屈だった。その人からすると、SIerには客の代わりにリスクを取るという重要な役割がある。あらかじめ言っておくが、客とは一義的にはユーザー企業ではない。より狭い意味、つまりIT部門である。で、「IT部門はリスクを取りたがらないから、SIerがシステム開発と共にリスクを引き受けてあげる。そんな無責任なIT部門は山のようにあるから、SIerが食いっぱぐれる心配は無い」という理屈だ。
確かにこの人の言う通りで、客のIT部門のほとんどはシステム開発だけなく、全てのリスクをSIerに丸投げする。システムのQCD(品質・コスト・納期)が担保できないというリスクは、SIerが当然負うものだと考えている。IT部門にとって、特にコストと納期の厳守は絶対の条件だ。開発費の超過やカットオーバーの遅延は経営者やユーザー部門に一目瞭然のため、あってはならないリスクだ。
こうしたIT部門にとって、実はシステムの品質は二の次だったりするのだが、それでもIT部門が最も恐れるシステム障害は絶対に現実化してはならないリスクだ。だからIT部門はSIerに向かって「ITのプロである君らを信頼しているからな」などと言う。「君らはプロなのだから、何かあったら全責任を取ってもらう」という意味だ。だが、SIerにリスクや責任を押し付けても、実際に何かあったらIT部門も当然責任を問われるはずだが……。
この疑問について、「SIerの存在意義は不滅だ」と語った冒頭の人は明確な答えをくれた。私が「こりゃ面白い」と思ったポイントなのだが、その答えはこうだ。「何かあったら、SIerの経営幹部が客の社長に土下座して謝罪するのですよ。そうすれば、客の社内は全て丸く収まります」。もう笑ってしまった。確かに「何かあったらSIerの経営幹部が土下座」という担保が付けば、IT部門は安心していられる。無罪放免というわけにはいかないが、せいぜいシステム部長が譴責(けんせき)処分を受けるぐらいで済む。