電波時計が夏時間を表示する場合、JJYで夏時間が送信されるならその時刻そのものを表示すればいいが、JSTが送信されるなら夏時間に変更する処理を行う必要がある。電波時計だけでなく、JJYを基に時刻を提供するシステムにも影響が出る。

アプリがそのように組まれているか?

 前述のように、パソコンやスマホの主なOSはサマータイムに対応できる仕組みがすでに用意されている。ただ、その上で動くアプリケーションが同様の仕組みを備えているかどうかは別の問題だ。

 アプリケーションが「タイムゾーン情報から得られる時差をUTCに加える」方法で時刻を取得していれば、サマータイムへの対応は容易だ。しかし、コンピュータシステムが作られるようになって以来、日本ではサマータイムが導入されていないので、設計者やプログラマがそれを考慮する習慣があまりできていないとみられる。

 具体的には、「UTCに9時間を加える」という決め打ちで日本時間を計算していることが多いと思われる。そのように作られたプログラムでも、これまでのように日本時間が固定された世界ではまったく問題なく動作してきたのだ。だがサマータイム対応のためには修正が必要だし、そのためのテストも行わなければならない。

「サマータイムで障害を起こすシステムは、本来やるべき国際化対応をやっていないと言える」とGLOCOMの楠氏は指摘する。「UTCやタイムゾーン情報などを使い、国際標準に沿って設計・開発していれば、問題は起こらないはず。OSや標準ライブラリなどは夏時間の変更にも対応している」。

 ただし同時に「現実にいますぐにサマータイムに対応できるかというと心もとない」とも述べた。「システム開発の仕様書にサマータイムの記述があるものはおそらくほとんどないので、開発元に責任を負わせることは難しい。テストをやり直す必要があるが、テストが自動化されていないことが多いので、人海戦術で検証するしかない」。