インターネット上に「イニはやりたいことをもうやったでしょ?」というコメントが付いた。イニとは文在寅(ムン・ジェイン)大統領の愛称だ。以前は「イニ、やりたいことをやって」というのが支持者の合い言葉だった。それが最近はもういい加減にしたらどうかというニュアンスがコメントに込められるようになった。
文在寅政権の政策を見ていると、まるで世の中を甘く見ているようだ。正義で平易で明快な答えがあるのに、悪い政権が正しい答えを阻んできたという考えだ。自分たちのように善人の側が政権を掌握したのだから、正義で平易で明快な答えで問題が解決されるはずだという。常に勝利する映画の中の主人公が現れた格好だ。
まず着手したのが「非正社員ゼロ」だ。非正社員は企業が勤労者を搾取する制度なので、主人公の大統領がなくせと指示すれば、それで終結する問題だと考えたようだ。非正社員が生じざるを得ない構造がある。韓国のように解雇がほぼ不可能で、労組が少しも自己利益を譲歩しない構造のままであれば、非正社員はなくならない。文大統領に真っ先に非正社員をなくすと報告した政府系企業はこれまで内部対立が絶えない。正社員が「不公平だ」と不満を爆発させるとは予想していなかったのだ。ほぼ全ての政府系企業と学校で同様の現象が起きている。世の中は映画のように単純ではない。
脱原発も安易に考えたようだ。これだけ大きな決定をしておいて、専門的な検討を行った形跡はない。門外漢が公約を作成した。福島原発事故があったのだから、脱原発を皆が喜ぶはずだと考えたようだ。原発の代わりに太陽光、風力などの自然エネルギーを使えば、さらに完璧だと考えたのだろう。それが映画のような話だということを大半の国民は知っている。