戦中・戦後を広島・呉で暮らす女性を主人公とした漫画『この世界の片隅に』では、当時の市井の人々のささやかな喜び、楽しみ、哀しみ、苦しみを物語に込め、日常の暮らしがユーモラスにかつ淡々と描写されています。作者のこうの史代さんは、昭和館などでの資料調査や聞き取り調査を踏まえ、当時の暮らしぶりや使われていた道具などを克明に描いています。
本展では、戦中・戦後の「この世界」をリアルに感じてもらうため、作品に描かれた当時の様子を実物資料や写真とともに展示します。さらに常設展示室、映像・音響室、図書室など、昭和館全体を通じて戦中・戦後という時代について理解を深め、漫画の世界から現実の世界へと一歩踏み出し、当時の人々の生活上の労苦を語り伝えるために、自分たちに何ができるかを考えるきっかけになれば幸いです。
【主催】 |
昭和館 |
---|---|
【特別協力】 |
株式会社双葉社 |
【後援】 |
千代田区・千代田区教育委員会 |
【会期】 |
平成30年7月21日(土)~9月9日(日) |
【会場】 |
昭和館3階 特別企画展会場 |
【入場料】 |
特別企画展は無料(常設展示室は高校生以上有料) |
【開館時間】 |
10:00~17:30 |
【休館日】 |
毎週月曜日 |
【イベント】 |
(1)みんなで作ろう!「昭和のくらし イロハカルタ」、 |
【チラシ】 |
昭和館で学ぶ『この世界の片隅に』 チラシ 表、 チラシ 裏 |
漫画『この世界の片隅に』の連載(漫画アクション・双葉社刊)は、昭和19年(1944)1月のエピソードが平成19年(2007)1月に連載というように、昭和と平成がシンクロしながら、平成21年2月まで続きました。28年11月に公開された劇場アニメは好評を得て、ロングランとなっています。さらに今年7月からはTBSテレビでもドラマ化され、様々な形で多くの人々に愛されています。
この作品は、広島市や呉市に住む市井の人々がどのように戦争や空襲を見ていたかという視点で描かれています。このコーナーでは、展示を見学していただく前に、『この世界の片隅に』について知っていただくため、登場人物紹介や、漫画の中の出来事、広島・呉の出来事、全国の出来事を記した年表を通じて、作品の時代背景について紹介します。
作品の時代背景を知った上でご覧いただければ、より一層展示を楽しんでいただけると思います。
また、見学後に漫画を読み返して、作品の新しい魅力を発見していただければ幸いです。
『この世界の片隅に』では、登場人物の家庭の様子や衣食住のシーンなど、それぞれの暮らしの場が描かれています。
昭和12年(1937)に日中戦争が始まると、軍のために多くの物資や食糧などが必要とされました。
そのため、人々の暮らしには、配給をはじめ、様々な制限が加えられるようになりました。
作中では、当時の暮らしが淡々とした日々のように描かれています。その一方で、戦時下ならではの様々な工夫も見ることができます。
1.着る
2.食べる
3.住まう
4.楽しむ
昭和13年(1938)5月に「国家総動員法」が施行されると、人的・物的資源が動員・統制されるようになり、戦時色が濃くなっていきます。16年4月には、それまでの尋常小学校が国民学校に変わりました。
隣組や婦人会など地域の繋がりが強化されるとともに、労働力確保のため、学徒勤労動員が行われたり、女子挺身隊が組織されたりしました。また人々は、空襲から身を守るために様々な備えをしました。
1.地域と戦争
2.空襲への備え
徴兵制のもとでは、召集令状が届けば、必ず応じなければなりませんでした。各地で、出征する人たちの無事を祈りつつ見送る家族の姿が見られました。一方、無事戻ってくる人たちを迎える人々や、無言の帰還を迎える家族の風景もありました。
戦争で亡くなるのは、戦地にいる兵士だけではありません。国内にいても、空襲で多くの人々が危険にさらされたり、命を落としたりしました。
1.出征と帰還
2.空襲の中で
昭和20年(1945)8月15日、「玉音放送」とともに戦争が終わり、空襲の心配はなくなりました。しかし、食糧や物資の不足は戦中よりも悪化し、食糧を手に入れることがますます難しくなりました。
空襲などの戦災で多くの人々が亡くなり、身寄りのない戦災孤児が生まれました。そのような中、GHQ(連合国総司令部)の進駐軍が日本に上陸し、占領下での暮らしが始まりました。
1.終戦
2.食糧難
3.戦災孤児
こうの史代さんは漫画という手法を使い、戦時中の人々に寄り添うかたちで、戦争の日常を描きました。
『この世界の片隅に』について、「戦争を描く事」というエッセイに次のような言葉を残しています。
絶対忘れてはならない事がある。わたし達は、戦後に生まれたからといって戦争を知らない世代では決してないという事だ。今という時代を生きている我々は、この国の戦争を経験した人に触れられる、ほぼ最後の世代の人間と「なろうとしている」
(こうの史代『平凡倶楽部』平凡社、平成22年、13頁)
昭和館では、戦中・戦後の人々の暮らしに焦点を当てた常設展示室をはじめ、写真・映像・音楽を視聴できる映像・音響室や、約13万冊の蔵書を有する図書室があります。『この世界の片隅に』を通して知った戦中・戦後の人々の暮らしについて学びを深め、身近な体験者に直接話を聴き、自分なりの手法で語り伝えてください。
(1)記念撮影をしよう!(会期中)
『この世界の片隅に』の絵を背景に記念撮影ができるコーナーを2階広場に設けます。
(2)会期中、常設展示室や図書室、映像・音響室など昭和館全体で、『この世界の片隅に』を学べる企画を行います。時間に余裕を持って、見学してください。
(3)期間中、3館連携スタンプラリーを実施します。
昭和館・しょうけい館・平和祈念展示資料館の3館を見学すると、それぞれの施設の特製グッズをプレゼント!昭和館では「昭和館で学ぶ『この世界の片隅に』」特製トートバックをプレゼント!ふるってご参加下さい。
特別企画展の会期中、ポケット学芸員アプリを利用して、展示している漫画の頁数と解説、昭和館内でのイベントなどの情報を提供しています。アプリをダウンロードしてご利用ください。
※漫画は見られません
ポケット学芸員
http://welcome.mapps.ne.jp/pocket