至高の兄(骸骨)と究極の妹(小悪魔)   作:生コーヒー狸
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ついにニグン登場。
好きなキャラを優遇するのは二次創作の醍醐味です。


王国戦士長と陽光聖典隊長

 結局、私達兄妹の初戦闘はお預け?になってしまった。私の得意戦法である「ピューっと飛んでいってプスっ」が炸裂するはずだったのに…解せぬ。

 

 村に着く前に戦ったゴブリンの時と同様に、倒された相手はデータクリスタルに変換される事も無く、周囲は「絶対に検索してはいけないワード」もかくやとなっている。お兄ちゃんからも心配されたが、現実なら卒倒しているはずの光景にも、グロ耐性に定評ある悪魔系種族の恩恵で耐えられている。

 

 プレアデス達が、装備の剥ぎ取りと死体の焼却をしている側で、生き残った騎士たちは最低限の治療をされて拘束されている。相手の隊長は非常に饒舌な様で、聞いても居ない事までペラペラと捲くし立てている。

 

 要約すれば「帝国兵に偽装した法国兵による王国民の虐殺」「他にも本命の部隊が居るが、その目的は知らされていない」という、非常にナーバスな問題に巻き込まれてしまった訳だが、そういう難しい事はお兄ちゃんに任せてしまうのが一番だ。

 

「この世界での初ドロップは幾らかの硬貨、そして破壊されずに残った装備品か…ユグドラシルと違って装備品の全取りも可能とはお得だな♪」

 

「そんな事よりさあ、これからどうするの?」

 

「そうだな。セバスよ、村人達に安全を伝えてきてやれ。こいつ等はナザリックへ運んで色々な実験…ゴホンゴホン、あー情報提供に協力してもらうさ。」

 

 どうやら何か良からぬ事を企んでいるみたいだけど、ナザリックに無関係なやつらには情け無用だ。こいつらが他の村を襲って、大勢の村人を殺してきたのは聞いている。そしてこの村を襲おうとしていた事も…この村には知り合いになった子もいるのに!もし彼女達が酷い目に遭わされたりしたら、さすがに気分が悪い。

 

「それではナザリックに帰るとする――デミウルゴスか?何か問題でもあったか?」

 

 デミウルゴスからの報告によれば、この村に向かう二つの集団があるらしい。ひとつは馬に乗ってかなりのスピードで、この村を目指している30名程の集団。かなり粗末な装備で、平均レベルは10台前半の戦士職ばかり、ただし一人だけ30レベルが混じっている。監視していた行動からこの国の治安部隊と思われるとの事。

 

 もうひとつは、最初の集団を追跡するような動きをしている20名程の集団。ナザリックの基準では低レベルだが、魔法効果を付与されている統一された装備で、平均レベルが10台後半の信仰系魔法詠唱者、リーダーと思われる男はレベル26、この村を襲っていた騎士達を指揮していた部隊と思われる。

 

「まったく…次から次へと、さてどうしたものか?」

 

 連続イベントの発生に、さすがのお兄ちゃんも困惑ぎみのようだ。妹としてはこの辺りで兄孝行の一つでもしたいところなのだが…ポクポク…ポクポク…ッチーン!

 

「お兄ちゃん♪私とってもイイ事を思いついたんだけど(ウケケケケケ)」

 

 

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 リ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフは激しい怒りに燃えながら、部下達を引き連れて必死にカルネ村を目指していた。

 王より「国境周辺の開拓村を襲撃する帝国兵討伐」の命令を受けて駆けつけたが、既にエ・ランテル近郊の開拓村4つが襲撃されている。どの村も再建不能な壊滅的被害だったうえ、僅かに生き残った村人の保護に半数近い兵士を残してきた為、只でさえ不安な戦力が減ってしまっていた。部下からは反対されたが、自分達が守るべき民の為にと、強引に説き伏せた。

 

 思えば今回の任務は不可解な事が多かった。未だ状況がはっきりと確認されていないにも拘らず、考えられないほど迅速に決定された(ある貴族が強硬に主張)ガゼフ達戦士団の派兵。そして貴族派閥による不可解な提言による「ガゼフに達に与えられた装備の制限」等、色々な思惑が感じられた。

 努めて政治からは距離を置いてきた自分には理解出来ない事ばかりだが、何者かの悪意を感じられずにはいられない…いや、今考えるべき事ではない、一刻も早くカルネ村へ向かわなければ!何とか間に合ってほしいものだ…

 

 ようやくカルネ村が視界に入ると、襲撃された様子もない。間に合ったか!と安堵するが、帝国兵の存在を思い出して警戒を強める。最悪は村を守りながらの籠城戦も覚悟する必要がある。

 村に入ると様子がおかしい。帝国兵に荒らされた痕跡はないが、村人の雰囲気が尋常ではない。武装した集団が村に入ってくれば、そういった事に慣れない村人が怯えたりする事は理解しているが、どうも違うらしい。まずは村長に会って確認をせねばと考えていると、村の広場に人だかりができていた。

 

「私は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。王の命令でこの近辺を襲っている帝国兵を追っている!何があったか話を聞かせて欲しい。」

 

 広場の中心に帝国兵らしき男達が拘束されているのを、村人達が遠巻きにしている。兵の近くには何故かメイド?が控えている。メイド?は美しく手入れされた黒髪を結いあげ、縁の無い眼鏡をして、非常に整った容姿をしている。このような美女は王宮でもなかなか目にする事は無い。かなりの上級貴族に仕える者だろう。

 

「何があったかのかを聞かせてくれないか?」

 

 ガゼフは近くに居た村人に尋ねる。村が無事なのは事実だが、のっぴきならない状況の様だ。

 

「へ、へい。この村を襲撃して来た帝国兵を、お忍びでいらしていた貴族様(と村人は思っている)が退治してくれまして。」

 

「何だと!?」

 

 ガゼフは慌ててメイドに話しかける。信じられない事だが、この村に居合わせた貴族の私兵が帝国兵を撃退してくれたのだろう。それにしても自分が望んでいた「弱き者を助ける貴族」が王国にもいた事がガゼフの心を熱くさせる。

 

「私は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。この村を守って下さった、貴方の主人に是非ともお礼を申し上げたいのだが?」

 

「ボ、私は至高の主人アインズ・ウール・ゴウン様にお仕えする「戦闘メイド(フフン)」のユリ・アルファと申します。主人は現在、この村の村長と対応を相談なされております。御用がおありでしたらご案内いたしますが?」

 

「!?」

 

 初めて聞く名前にガゼフは困惑する。王国の貴族ではない?どういう事だ……いや、疑問は後でいい。自分に代わって王国の民を守ってくれたのは事実。相手が何者であろうと感謝の意を伝えるのが先だ。

 

「お願いするとしよう。この者達については部下達に監視をさせて問題無いだろうか?」

 

「かまいません。それではご案内いたします。」

 

 メイドに案内されて村長の家に入ると、村長らしき男と、非常に豪華な服装をした仮面の男、それに着き従う初老の執事がいた。

 

 

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「我らに代わってこの村を守っていただき、感謝の言葉もない。」

 

 非常に畏まった態度で礼を言われてアインズは困惑する。王国戦士長という立場にある男が、自分の様な初対面の、身分も不詳(あなたのお姿はどうみてもVIPです)な男に敬意を表しているのだから。特にこの王国では身分の格差が激しく、特権階級の人間は身分が下のものにはかなり横柄だったはずだ。アインズはこの実直そうな男に好意を抱いた。

 

「降りかかった火の粉を払っただけの事ですが、戦士長殿の感謝は受け取っておきましょう。」

 

「それでは詳しい事情をお聞かせ頂きたいのだが?それにゴウン殿のような方が、このような開拓村に何の用で?」

 

「それについては…セバス、あれを戦士長殿へ。」

 

 渡された書状を見てガゼフは驚愕する。その書状にはエ・ランテル都市長のパナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイアの署名が押されていた。今回の任務の途中にエ・ランテルへ補給に立ち寄った際は、ガゼフも時間が惜しかったので面会はしていなかったが、彼は王に忠誠を誓う数少ない信頼出来る貴族の一人で、ガゼフも面識がある。

 書状には「至高の御方であるアインズ・ウール・ゴウン様とその妹君については、自分の名でその身分を保障するので、最大限に便宜を図る事。絶対に無礼が無い様にする事」という事が、これでもかと大仰に記されていた。

 

「こ、これは大変失礼いたしました!何卒ご無礼を御許し頂きたい。」

 

 書状に書いてあった事が事実なら、彼は他国の重要人物である。只でさえ周辺国との軋轢に悩まされている王国としては、絶対に無碍には出来無い存在だ。それに王派閥のパナソレイが発行した書状を所持しているのだから、ガゼフが忠誠を誓う王にとっても重要人物のはずだ。

 このアインズ・ウール・ゴウン殿については、王から何も知らされていなかったが、平民出身であり、政治的な問題について距離を置いている自分には知らせる必要は無いと考えていたのだろう。そうガゼフは結論する。

 

「それでは後の事を任せて構わないでしょうか?そろそろ帰宅しようと思っているのですが。」

 

「今から?他にもお聞きしたい事が…いえ、ゴウン殿のような方を煩わせる訳にはいきませんか。日を改めて御話を伺いたいのですが、どちらに滞在されているのですかな?」

 

「そういった事は全てパナソレイ氏にお任せしているので、何かあればそちらにお願いします。」

 

 アインズとしては、今回は王国戦士長であるガゼフと面識が出来た事で充分だった。いずれ王国の上層部とも関わりが必要だが、王国上層部には良いイメージが全くない。ガゼフの様な者は少数だろう。お近づきにはなりたくないと思っている。国との関わりについては相互不干渉で良いと思っている。落ち着いてきたら交易をしても良いかくらいは考えている。

 

 かつて自分達が暮していた世界では「国家」という枠組みが崩壊していた。人々は各地に点在する大企業が所有するアーコロジーで生活を送っているが、庶民達が物理的にアーコロジー間を移動する事は殆どない。

 アーコロジーの特性上、一旦完成した後に施設を拡大する事は困難な事と、資源の枯渇から新規アーコロジー建設が途絶えていた事もあり、領土問題と言うのは存在しにくかった。

 欧州や中東では、思想や宗教による紛争があったが、鈴木兄妹の住む日本では、国民性からもアーコロジー間の関係は良好・活発とはいえないが緩い相互干渉という情勢だった。

 

 だからアインズは、ナザリック地下大墳墓の周囲が誰も住んでいない平原だった事もあり、ここがリ・エスティーゼ王国の領土とされている事、自分達が国境侵犯の状態にあるとは考えもせず「まあ、そのうち近所に挨拶にいくか」くらいに考えているのだった。

 

「それでは戦士長殿、また機会があればお会いしましょう。」

 

 こうしてアインズの現地人とのファーストコンタクトが終了した。

 

 

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「お兄ちゃん♪私とってもイイ事を思いついたんだけど。」

 

「どうしたんださっちん。心配する事は無いぞ。何があってもお兄ちゃん達がいるからな。」

 

「そうじゃなくってさ!ここに向かっている集団がいるんでしょ?そのうちの村を襲ってきた奴らの仲間の方をさ、ナザリックに送ってみない?」

 

 私が考えたのは「ナザリックへようこそ作戦」だ。広告宣伝活動の不備から1週間も来客が途絶えたナザリックに、罪も無い村人を害する悪党どもを招待(拉致)して、「おもてなし」してあげようというものだ!とにもかくにも移転後初のお客様だ。せいぜい歓迎してあげようじゃないか!ウケケケケケ…

 

 転移でナザリックに戻った私は、玉座の間にデミウルゴスとシャルティアを呼び出した。侵入者を招くのだから、ギルドの№2(実質的序列1位)として、玉座で指揮をとる必要がある。

 アインズ・ウール・ゴウンのモットーとして「侵入者を拒まず、勇者に敬意を!」というのがあった。これは自分達もナザリックを攻め落として、その所有権を手にしたのだから、他の物にもそれに挑戦する権利はあるべきだという考えと、この難攻不落の鬼畜ダンジョンに挑む勇気を讃えて、どんな弱者だろうとも可能性を否定せず、侵入者が来た場合は必ずギルメンの誰かが玉座に座して、堂々と侵入者を待ち受けるというものだ。まあ、例外もあったけど。

 

「デミウルゴスさん、これから報告のあった集団の片方を、この特殊アイテム《ハイエース》を使ってナザリックに拉致しちゃいます。お客さんは第二階層に転移させるので、シャルティアはそいつらを生かさず殺さずで、適当に相手してやって。侵入者をどうするかはお兄ちゃんが帰って来てから相談するから。OK?」

 

「かしこまりました(でありんす)!」

 

「今回のお客は「相応しくない」ヤツらだから、セーフゾーンも宝箱も必要ないからね。但しナザリックの外には逃がさない様に!」

 

 ナザリックには侵入者への救済措置&接待として、一定時間モンスターに襲われない「セーフゾーン(但しお得意様に限る)」や、ダンジョンのお約束として「宝箱(なお50%でトラップの模様)」を用意してあるが、相手が敵対ギルドやマナーの悪いプレイヤーだった場合は、それらのギミックを停止して、ガチで殺しにかかる体制に移行する。

 

 実際、ユグドラシル時代の侵入者の半分は「ファンによる聖地巡礼」だった。DQNギルドとして有名だったアインズ・ウール・ゴウンだが、それゆえにヒールとしてのファンも多かったので、「あこがれのナザリック地下大墳墓」を訪れる者も大勢いたのだ。

 難攻不落のナザリック地下大墳墓に正々堂々と挑戦したいプレイヤーは、事前にギルド宛てにメッセージを送って日時を伝えてくる事が多かったし、一部のファンには「シャルティア様に吸血され隊」「アウラちゃんにムチ打たれ隊」「マーレ君に撲殺され隊」という意味不明なリピーターもいた。

 ワールドチャンピオンだった、たっち・みーさんやバトルマニアの武人建御雷さんなんかは、知り合いの有名プレイヤーを第六階層の闘技場に招待しての公開PVPを開催してたりもした。

 ギルド長だったお兄ちゃんにも結構な数のファンがいて「非公式ラスボス」とか呼ばれていて、お兄ちゃんを真似てオーバーロードの種族を選択するプレイヤーまでいた位だ。

 

 

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「あ、あ、ありえるかぁ~!総員傾聴っ!とにかく天使を召喚し続けよ!」

 

 スレイン法国が誇る「六色聖典」のひとつ「陽光聖典」の隊長ニグン・グリッド・ルーインは混乱の極致にあった。法国の最高執行機関である神官長会議で議決された「リ・エスティーゼ王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ抹殺」の指令を受け、囮部隊による陽動作戦の結果、ガゼフ率いる戦士団を追い込んでいた最中に、謎の転移に巻き込まれて何処とも知れぬ地の底で、人類の敵であるアンデッドと激戦を繰り広げる事態に陥ったのだから。

 

 突如として足元に魔法陣が出現し、気付けば目の前の風景が変わっていた事に困惑した。自分達はガゼフがいる村へ向かっている最中だったはずだが、現在は石壁で造られた通路に居る。窓が一切無い事から、この場所が何処かの建物の地下であると推測されるが、この肌に感じる邪悪な気配は何だ?

 

 うろたえる隊員達を宥めながら、ニグンが今後の対応を考えていると隊員から報告があった。

 

「敵襲!敵襲!前方にスケルトンの集団!数は多すぎて判別不可能!」

 

 そして激戦が始まった。本来、亜人やモンスターの殲滅を得意任務としている陽光聖典にとって、最下級アンデッドであるスケルトン程度なら、1000体以上であろうと敵ではない。

 陽光聖典は全員が最低でも「第三位階」の信仰系魔法を行使可能な、一流の魔法詠唱者のみで構成された精鋭部隊であり、ニグン自身は第四位階魔法まで習得している。自分達にとって生者を憎むアンデッドは最も得意とし、そして憎むべき敵だ。得意とする集団戦法「召喚した天使を盾としながら神聖属性魔法で攻撃」で数百体のスケルトンを無傷で殲滅する事に成功した。

 

 その後現れたゾンビ、アンデッド・ビーストにも陽光聖典は完勝したが、続いて出現した10体ものエルダーリッチには苦戦させられた。《ファイヤーボール/火球》や《ライトニング/雷撃》といった魔法攻撃で、召喚した天使を倒されたところを、スケルトン・ウォリアーとの白兵戦に持ち込まれて、かなりの被害を被った。

 

 そして満身創痍の陽光聖典の前に新たな敵が現れた。先程のスケルトン・ウォリアーに似ていたが身に纏う武具は一見して最上級クラスと判るものだった。炎や雷を宿した武器、禍々しいオーラを発する鎧や盾等、全てが魔法の力を宿した武具であった!そんな存在が20体!

 神々が残した様々な伝説の武具を有するスレイン法国でさえ、一部隊でこれだけの装備が揃えられているのは、六色聖典最強の「漆黒聖典」ぐらいのものだろう。ニグン自身は国から与えられた、かなり上位の武具、アイテムを身につけているが、それに匹敵する装備だ!

 

 そこからの戦闘は筆舌しがたいものだった。次々に倒されてゆく部下達。幸い死者は出ていないが、わざとトドメを刺さない様に嬲っているのだろう。そんな様子を見てニグンは思う。

 

「やはりアンデッドは邪悪な存在だ…あの御方以外は…」

 

 自らが召喚していた《プリンシパリティ・オブザベイション/監視の権天使》が消滅し、立っている者が自分を含めても片手の指にも満たない数になって、ようやくニグンは決断する。出撃の際に与えられた切り札というべき存在を使う事を。

「万が一の際にはこれを使ってガゼフを抹殺せよ」と最高神官長より与えられたのは「魔封じの水晶」と呼ばれる超希少マジックアイテムだ。

 かつて大陸中を荒らし回り、世界を滅ぼしかけたと伝えられる「魔神」という超常の存在。その魔神を単騎で滅ぼす事が可能な最高位天使《ドミニオン・オーソリティ/威光の主天使》。この魔封じの水晶にはそれが封じ込められている。

 

「これより最高位天使を召喚するっ!それまで何とか時間を稼ぐのだ!!」

 

 ニグンが叫んだ時、再び足元に魔法陣が発生する。光に包まれたニグンが目をあけると、そこには思いがけない光景が広がっていた。

 

「こ、ここは一体?またしても魔法による転移か!?」

 

「夜空だって?ここは地上なのか!?」

 

「な、何だあの化け物たちは…もう、おしまいだ…」

 

 部下達の声はニグンに届かない。ニグンはあまりの驚愕に打ち震えている。あまりにも信じられない存在を目にしてしまった為、それ以外の何も目に入らず、部下達の叫びも耳に入らない。

 

「はじめまして、諸君。そしてようこそナザリック地下大墳墓へ。私は――」

 

「ス、スルシャーナ様あぁぁ!!!!!」

 

「は?」

 

 ニグンの絶叫が第六階層のコロシアムに響き渡った。

 




ナザリック地下大墳墓が、良心的な営業の優良店だったという驚愕の事実。







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