2018年08月30日
『カメラを止めるな!』の本当の元ネタ?忘れ去られたアニメ『超変身コス∞プレイヤー』
興行成績15億を突破し、20億円が見えている映画『カメラを止めるな!』FLASHが煽ったパクリ騒動もなんのその、夏映画の話題を掻っ攫っています。
さてそのパクリ騒動の最中、月一で一緒にトーク・イベントをやっている友人Aことアシスタント・トモにこの作品を勧めたところ、「これって『超変身コス∞プレイヤー』に似てますよね?」と言い出すので何のことかさっぱりわからなかった。トモによると2004年にサンテレビで放送していた15分アニメ枠の『A15』で放送していたシリーズだという。14年前!元大学で自主制作映画を撮っていたトモは「撮影本編と劇中劇の舞台裏を描く二重構成の物語がカメ止めと酷似している」と指摘。「むしろ舞台GHOST IN THE BOX!よりもこちらがパクリかも知れない」とまでいうので見てました。以下解説。
『A15』はポニーキャニオンのアニメレーベルm.o.eの15分アニメ枠の総称で、その中の『変身3部作』と呼ばれているうちの第一部にあたるのが『超変身コス∞プレイヤー』だ。
コスプレ好きの女子高生である星野古都は、偶然邪神を復活させてしまい、その結果世界は魔物の徘徊する危機的状況に陥ってしまう。この状況を打破するため、彼女はコス∞プレイヤー(コスモポリタン・プレイヤー)と呼ばれる祈祷師の一人であるミコレイヤーとなり、仲間のコス∞プレイヤー達とともに敵と戦うことになる。
古都はミコレイヤーとして仲間たちと戦い続けるが、強敵・黒祈士の正体が自分が邪神を蘇らせたために異世界に取り込まれ犠牲となったクルスであったことが発覚。クルスの帰還を他のコス∞プレイヤーが喜ぶ中、「本当は彼が黒幕ではないのか?」と疑いはじめ、仲間たちと袂を分かつことに。クルスはコス∞プレイヤーたちを目覚めさせるために彼女たちを無理やりトラウマに向き合わせたり、クルスに愛情を抱くスカーレット/シスタレイヤーをSM責めにしたりする。真相は古都を見守り導いていたタキツヒメこそが黒幕だったのだが最終的にコス∞プレイヤーたちの奮戦によって世界は救われる…という話が全8話に渡って展開されるが、前後のつながりが支離滅裂で破綻しているのだ。あとはコス∞プレイヤーたちが戦闘中に不必要としか思えないパンチラ、エロ描写を山ほど見せられるという出来の悪い(ただし作画レベルは高い)映像を見せられ何が何だかわからないまま完結。
すると翌週からは『ヒットをねらえ!』という第二部にあたる作品が何の説明もなくスタート!
生田美月は映像制作会社・宝竹の新人で、子供の頃に見た刑事ドラマに憧れて入社、ついにプロデューサーとしての仕事を任されることになるが、それは刑事ドラマではなく子供向け特撮番組の『超変身コス∞プレイヤー』であった…実は8話かけて放送されたものは同名のテレビ番組だった!ということが明かされる。生田はプロデューサーとして度重なる脚本制作のトラブル、上層部のワガママ、芸能事務所の方針に振り回されながらもなんとか番組を完成させようと奮闘。その様子をコメディタッチで描くという、おお、まるで『カメラを止めるな!』ではないか!
劇中劇のアイデア自体はこれがオリジナルではないですが、似たようなことを14年も前にやっている人たちがいた!しかも深夜アニメの世界で!この二部では一部の『超変身コス∞プレイヤー』の展開が支離滅裂なのはダイジェスト版だったからということも明かされるし伏線の回収も行われる。『ヒットをねらえ!』はトラブルにもめげず作品を完成させようとする生田の姿に思わずほろりとしてしまい、特撮番組制作の舞台裏を知っている人には思わず頷ける場面も多い。登場人物の名前がいのくままさお(仮面ライダーシリーズで有名なベテランカメラマン)のパロディのかのうたつおとか、大物脚本家の名前が高原進三というどう見ても上原正三のパロディで特撮ファンはニヤリ。『ヒットをねらえ!』はカメ止めのように産みの辛さがきちんと描かれ泣き笑いもあり大変面白く、本作だけソフトを買ったという意見も聞く。しかし、このシリーズは『変身3部作』である。さらに第3部にあたる『LOVE♥LOVE?』がスタートするが、これが大変な問題作なのだ。
タレントを目指す高校生の大泉直人はオーディションに落ち続けるが、ひょんなことから特撮番組『超変身コス∞プレイヤー』の脚本とメイキングビデオのカメラマンを任されることに。プロデューサー生田により大泉は『超変身コス∞プレイヤー』の原作者であり脚本家であることを隠してカメラを回す。メインヒロインである星野古都/ミコレイヤーを演じる八神菜摘は大泉のクラスメイトで彼女に好意を寄せる大泉はつい彼女を中心に撮影してしまう。ところがある日をきっかけに他の出演者の女性たちから大泉は熱烈なアプローチを受けることになる。八神一筋と決めている大泉は懸命に抗うのだが、童貞野郎・大泉を襲うラッキースケベの罠は如何ともしがたい!その裏では度重なる脚本の変更を生田に要求され、「あのチビッコがぁー!」と部屋でひとり悪態をつく日々を送る大泉の精神は崩壊寸前に。そんな中、演技の悩みを抱える八神の相談を受けた大泉は気が付けばラブホテルに二人きりに!
当時の深夜アニメ王道のエロ・ラブコメ描写も極まれりといったところで物語は驚愕の展開に!なんと大泉が原作者であり脚本家であることは八神たち女性出演者全員が知っていて、彼女たちは自分たちの出番を少しでも増やしてもらおうと打算で大泉に迫っていただけだったことが発覚!
真相を知った大泉は自分を馬鹿にしていた彼女たちに脚本上で復讐しようとする(!)ストーリー上不必要なSM責めに遭わせて
「純粋な俺の気持ちを踏みにじりやがって…!謝罪しろぉ!」
と妄想を募らせる。そんな脚本、プロデューサーチェックの段階で引っかからない?と思うが、『ヒットをねらえ!』ではこの時期仕事がうまくいきすぎている生田がそんなことが起きてるとはつゆ知らず、大泉を信じて脚本をノーチェックで通していたことが描かれていたのだ!(まさかこんなところに伏線が)なのであとからこのシーンって必要なの?とぼやく生田に「脚本通したのは生田さんですよね!?」と強気に出る大泉!この後まあ色々あって(とても書けない)番組は打ち切りになってしまうのだった。
「二重構成で本編&劇中劇の舞台裏を描く」という『カメラを止めるな!』のスタイルを14年前に完成されているのがスゴイ。こちらは二重どころか三重だもの。
しかしこの『変身3部作』が『カメラを止めるな!』同様の熱い支持を受けて今も語り継がれる作品なのかというと疑問。僕も全然知らなかったし(この枠でやってた『鋼鉄天使くるみ』は見てたのに)、このカメ止め騒動で類似点を指摘しているような意見もほとんど聞かない。
でもその理由もわかる気がする。3部作のうち面白いのは二部の『ヒットをねらえ!』だけで『超変身コス∞プレイヤー』はイマイチな出来の萌えアニメで、『LOVE♥LOVE?』は人間のドロドロした部分を描きすぎで、視聴者が応援できる部分がほとんどない。『カメラを止めるな!』はその辺が本当に上手くできていて、あの出演者たちを観客全員が応援したくなるようになっているが、『変身3部作』にそれが感じられるのは『ヒットをねらえ!』だけで『LOVE♥LOVE?』であんなスキャンダルを起こしている連中を安易に許すような展開に納得できない。はっきりいって『ヒットをねらえ!』までで終わっておけば傑作として語り継がれたかもしれない。
深夜の萌えアニメにこんなこというのは野暮だけどパンチラもエロも必要以上に多すぎ物語のテンポを削ぐ勢いで入り込むので(ただでさえ15分アニメなのに!)まったく萌えられない。
本シリーズの脚本を書いた荒川稔久さんはスーパー戦隊シリーズでおなじみの人でアイドル好き、萌えアニメでも定評のある人なのになぜこんなことに。『LOVE♥LOVE?』ではヒロインの八神が大泉に「この人の脚本を読んで、ヒーローものが好きなんだなあってことがすごく伝わってきたんだ」っていうけど『超変身コス∞プレイヤー』を観る限り、そういうの全然伝わってこないよ…
しかし、影響された人たちはいたようで二年後の2006年に同じサンテレビで放送されたアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』は本編の劇中劇『朝比奈ミクルの冒険 Episode00』から第一話がスタートして後にその舞台裏が明かされるのだ!まったくの偶然だろうが、類似性や影響力を考えずにいられない。
こういうのを見てみると『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督が同じようなテーマでも観客が応援したくなるような物語にして、カタルシスを与えるのが上手かったのかがわかるね。
上田監督、次回作は『超変身コス∞プレイヤー』と『ヒットをねらえ!』の実写リメイクやってくれないかな?絶対アニメより面白くなるよ。『LOVE♥LOVE?』はやらなくていい。
※変身3部作は別に封印作品でもなんでもないので、DVDやBDもしくはバンダイチャンネル、U-NEXTなどの配信サービスでも観られます
この記事へのコメント
私はそれ全部持ってます、
が!
ナンも考えんと観てました。
やっぱし、頭イイ人は眼の付け所が
違うんですね。
が!
ナンも考えんと観てました。
やっぱし、頭イイ人は眼の付け所が
違うんですね。
Posted by KAITO1412 at 2018年08月30日 02:57
高原進三は(高久進+上原正三)/2 だと思います。
Posted by 名無し at 2018年09月01日 00:36
それだ!
Posted by 縛りやトーマス at 2018年09月01日 01:19
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