至高の兄(骸骨)と究極の妹(小悪魔)   作:生コーヒー狸
<< 前の話 次の話 >>

5 / 15
ようやくカルネ村到着です。
一部にかなりのキャラ崩壊
そして怒涛のオリジナル展開


初めての外出と戦闘

 この世界に私達兄妹が、ナザリック地下大墳墓と拠点NPCごと転移して1週間がたった。圧倒的に情報が不足している状況で、ナザリックの外での活動をお兄ちゃんから禁止されていた私は、ナザリックで引き篭もって第九階層「ロイヤルスイート」にある様々な施設に入り浸っていた。

 

 ロイヤルスイートには「何でこんなのが??」という施設がいっぱいある。「ネイルサロン」や「エステサロン」に「美容院」なんて生れて初めてだ♪女性メンバーの為に造られたはずだけど、私は利用した事がなかった。私以外の女性メンバー(粘体とか半巨人とか)は外見的に利用不可能だろうから、誰が何の目的で造ったんだろ?

 

 お兄ちゃんに聞いたら「ナザリック・ショッピングセンター」という計画があったらしいが、途中で中止になったそうだ。そういえば空きテナントがちらほらと見える。他にも「ナザリック学園」なんて計画があったみたいだけど、担当メンバーが居なくなって、データも行方不明になってしまったと言っていた。

 

 そんな感じで私がナザリックライフを満喫しているのをよそに、「アインズ・ウール・ゴウン」と名を変えた我がお兄ちゃんは、優秀なNPC達を使って世界征服(笑)の準備を進めているらしい。

 

 あれは気分転換にお兄ちゃんと一緒に、ナザリック地下大墳墓の外に出てみた時だった。指輪で地表部の霊廟まで転移すると、デミウルゴスとその直轄の悪魔たちがいた。同族?だけあってなんとなくシンパシーを感じるけど、どうしてこんな場所に居るんだろ?地表部にはNPCもシモベも配置されてなかったよね?

 

「防衛体制見直しの一環でな。それに地表部やナザリック外で敵を倒した際の収入の有無の確認も必要だからな。」

 

「ふーん。そういえばお客さん来た?私もそろそろ戦ってみたいな~。」

 

「おいおい、現地産キャラの種類や強さも不明なんだぞ…この周囲は草原で虫や小動物しか居ないらしいが。」

 

「小動物って…ここってそんな初級者向けフィールドだったの!?」

 

 我がナザリックもぬるくなったものだ。ユグドラシル時代は、レベル80オーバーのツヴェーク系モンスターが闊歩する、無耐性なら3分で死ねる猛毒地帯のど真ん中という、カンストプレイヤー以外お断りのエリアだったというのに!

 

「現在は周辺地域の偵察を兼ねながら、MAP作成に取り組んでおります。これもアインズ様にお借りしたアイテムのおかげで、大変スムーズに進んでおります。」

 

 へぇ~NPC達がそんな事までやってくれるんだ!これなら他の事も頼んでみようかな?

 

「ところでこちらへはどんな御用で?供も連れておられないようですが?」

 

「さっちんと一緒に散歩でもと思ってな。ここ数日ナザリックに籠りきりだったからな。」

 

「左様で御座いますか。しかしこの状況下で供を連れずに、となりますと、私も見過ごすわけには…」

 

「じゃあデミウルゴスさんも一緒にどう?」

 

「っ!?よろしいのですか?」

 

 こんな感じで夜空の空中散歩に出発して、素晴しい星空に感動していたら「キラキラ輝く宝石箱」「星々が私の身を飾る」「世界征服」とか聞こえて来た、うわぁ~またお兄ちゃんの病気が始まったよ…デミウルゴスも凄い笑顔!なんかウルベルトさんにそっくりだ!

 

 翌日からデミウルゴスを責任者とした「プロジェクト・ナザリック」が開始された。周辺の地形情報も整理されてゆき、ナザリック近辺にある都市や集落の情報も続々と集まっているらしい。

 南東にあるこの近辺では最大の都市には、冒険者という武装した人間がいるみたいだけど、多くが10レベル以下のザコで、一番レベルが高いのでも20ちょいみたいだけど、低すぎじゃないだろうか。

 複数の人間をアイテムとスキルで詳しく分析したら、ユグドラシルとほとんど同じ職業構成になっていたそうだ。スキルや魔法も同様(但しレベルは低い)で、ここってやっぱりユグドラシル?と疑いたくなるような結果だった。ちなみにアイテムについては、お兄ちゃん曰く「ゴミ」との事だ。

 

「ナザリックも落ち着いてきたから、明日は外に出かけてみないか?どこか行ってみたい所はあるか?」

 

「お兄ちゃん、わたし町や村を見てみたい!ユグドラシルみたいに偽装していけば大丈夫でしょ?」

 

「そうだな。この世界ではシステム的なペナルティが無いみたいだから、さっちんは装備でちょっと外見を誤魔化すだけで大丈夫だと思うぞ。おれは適当なマスクでも探してみるか…」

 

 ユグドラシルでは異形種ペナルティがあって、ステータス等が低下する偽装アイテムで外見を変えていないと、人間種の都市に入れないシステムだった。他にも一定のカルマ値でないと入場不可の場所、特定の種族以外お断りとか色々あった。この世界では「バレなければOK」という、異形種にやさしい?仕様になっている。

 

「プレアデスを連れて行ってあげたいんと思うだけど、どうかな?」

 

「ん?そういえば、最近プレアデス達といる事が多いみたいだな。一緒に遊んでもらっているのか?」

 

「遊んでもらっているって……一般メイド達は掃除とかお仕事があるし、他のNPCもお仕事があるみたいだから邪魔しちゃいけないと思って。」

 

「そういえばク・ドゥ・グラースさんが「第十階層で立っているだけのお仕事です(笑)」とか言っていたな。」

 

 その後、アインズがデミウルゴスに外出予定を告げ、「供周りは如何なさいますか?」と問われ「さっちんがプレアデスを連れて行きたいそうだ。ついでにセバスも誘ってみるか」と応えると、デミウルゴスの尻尾がピシッピシッと跳ねるのを見て、どうしたんだコイツ?と思ったりした。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「お兄ちゃん、始めて見たけど、そんなマスク持ってたんだ?おもしろい(変な)デザインだね~。どんな特殊効果があるの?」

 

「これは「嫉妬する者たちのマスク」といってな、毎年クリスマスに限定配布されていたらしい。特に何の効果も無いんだがデザインが気に入ってな、毎年異なるデザインで配布されていたんだが、取得条件が厳しくて一度も入手出来なかったんだ。それが全年度コンプリートセットが売り出されていたので買ってみたんだ。安かったしな。」

 

「へ、へぇ~…そうなんだ~(やっぱりヘンだよお兄ちゃん!)」

 

 鈴木悟は、クリスマスを毎年必ず妹と過ごしていた。彼にとって少なくない金額を費やして、妹の為にプレゼントや料理を用意して、妹と一緒に遊んであげていた。

 そんな彼が、この呪われたアイテムを入手出来る筈もなく、同じく嫉妬マスクを入手せずに済んだたっち・みーと共に、男性メンバー10名VSモモンガ&たっち・みーという変則PVPで執拗に叩かれたのも良い思い出だ。

 ちなみにぺロロンチーノも嫉妬マスクを入手していなかったが、彼がその事でギルメンから責められる事はまったくなかった。

 

「しかし素晴しいな!こんな大自然溢れる景色を見る事が出来るとは!」

 

 彼らがいた世界では遥か昔に失われた景色に兄妹は感動していた。もちろんリゾートや研究目的で自然が残されたアーコロジーも存在したが、選ばれた階級の人間しか往く事が許されなかったので、彼らには縁のないものだった。

 

「これから行く村はどんな所なのかな~?」

 

「ちょっと待て、フムフム…デミウルゴスによると120名程の人間が住む開拓村、住人も平均2~3レベルで危険は無し。最低限の施設、住居に畑があるだけ……」

 

 アインズがデミウルゴスに相談して実行された、この「兄妹はじめてのおでかけ」は順調に進んでいた。楽しそうにしている妹を見て、アインズも満足していた。

 

「もう一度確認するが、俺達のロールプレイは覚えているな?」

 

「うん、ばっちり!お忍びのVIPと執事&メイドさんでしょ?なんか何処かで見た設定だね~。」

 

「別に戦いに行くわけじゃないんだ。のんびりといこうじゃないか。」

 

「何かイベントでも起こらないかな~。村の若者が勇者として旅立って、村の近くにある最初のダンジョンに入ったら、チュートリアル用だと思ったら隠しダンジョンで、そこで冒険が終わってしまうとかさ!」

 

「ハハハ!そうだな…こういうシチュエーションだと、俺達が乗っている馬車が盗賊に襲われて、そこにチート主人公が助けに来てくれるんだったか?」

 

 アインズとしては、この機会にこの世界の住人とコンタクトをとって、色々と情報収集をする予定だ。元サラリーマンとしては自分が現場に出てみないと安心できないという点もある。油断などしているつもりは無かったが、妹の雰囲気につられてほっこりしてしまう。

 万が一に備えて、不可視化したシモベが周囲を散会して警護しているし、デミウルゴスの部下が上空からの監視体制を執っている。プレアデスで対応不能な敵に遭遇した場合は、シャルティアを隊長とした強襲部隊が《ゲート/転移門》で駆けつける事になっている。何より自分が居る限り、目の前でむざむざと妹を傷つける事を許しはしない。

 

 近隣に危険な戦闘力を持つ存在は確認出来なかったが、デミウルゴスからの報告書では「周辺国家最強と言われる王国戦士長」「アダマンタイト級冒険者」「バハルス帝国の主席魔導師」「評議国の竜王」という存在が確認出来た。

 過去には「13英雄」というプレイヤーの気配を感じさせる存在も確認されている。油断は出来ないが、必要以上に不安になる事もないとアインズは考えている。仮にプレイヤーが居たとしても、彼らは同郷人なのだから交渉の余地は充分あると思っている。

 

 何故ここまで詳細で膨大な情報が入手出来たかと言えば「デミウルゴスがやってくれました」の一言に尽きる。近隣で最大の都市である「エ・ランテル」に配下を送り込んだデミウルゴスは、そこの都市長を洗脳・支配・調教して、情報を根こそぎ奪取してしまった。

 さらに配下に一部の貴族や商人から財産を収奪させ「ナザリックの財から見れば砂粒にも満たぬものですが…」と大量の財貨と物資を持って来たのだ!さすがにこれ以上はマズイ!とアインズは中止させたが、ナザリックの利益になった事は事実であったので叱責する訳にもいかなかった。事実、スクロール素材等のナザリック内で調達が難しい資源もあるのだ。

 

(それにしてもデミウルゴスを働かせすぎだ…アルベドがあの状態ではやむを得ないが、今後の状況次第ではニグレドやコキュートスも動かせなくなる可能性がある。やはりアイツを宝物殿から呼び出すしかないのか…)

 

 微笑ましく見える兄妹の「お出かけ」には、あらゆる事態に対応可能な、万全の警備態勢が敷かれていた。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「アインズ様、さっちん様。間もなく到着いたします。到着後のやり取りは手筈どおりに行いますので、こちらからお声掛けするまで、今少しお待ち下さい。」

 

「うむ。たのんだぞセバス。」

 

「ハッ、お任せ下さいアインズ様!(俺って執事として輝いてるぜ)」

 

 セバス・チャンをリーダーとするプレアデス達はナザリックが転移して以来、我が世の春を謳歌していた。今回の転移後初の外征(兄妹はピクニック気分)にも、綺羅星の如き戦士が集うナザリックの拠点NPC達の中で、護衛として最初に随行を許されるという栄誉に与かった(実はデミウルゴスが達成済み)のだ!

 

 不敬となるので決して口に出したり、いや考えることすらおこがましい事だが、自分達プレアデスは創造されて以来、長く無聊を託っていた。ナザリック地下大墳墓への侵入者を、最後に迎え撃つ最終絶対防衛線(只の時間稼ぎ)という大役を仰せつかっていたが、至高の方々があまりにも偉大なおかげで、侵入者共がナザリックの最奥部まで到達する事がなかったからだ。

 只の一度も戦う機会に恵まれなかった自分達は「本当に戦闘未経験!?戦闘未経験が許されるのは一般メイドまでなのではありませんか?」とか「戦ったら負けかなとでも思っているのでしょうか?」や「戦闘(しない)メイド(の仕事もしていない)のみんなは私達の憧れです」などと姦しい一般メイド達に噂されていた。

※そんな事実は一切ありません。S氏の偏見と誤解に満ちたイメージです!

 

 特に同格という扱いになっている、同じ100レベルNPCの階層守護者達からも……

 

※繰り返しますが、これはS氏の偏見と誤解に満ちたイメージです!

 

「つらいでありんすー。3階層も担当していて、しかも最初に侵入者を迎撃しないといけないから、まじつらいでありんすー。」

S氏(真祖・第二階層在住)

 

「ザシュッザシュッザシュッ…ッターン!」

K氏(蟲王・第五階層在住)

 

「ねえねえ、私が闘技場でぶくぶく茶釜様のフォローした話しって聞いてるぅ?」

A氏(闇妖精・第六階層在住)

 

「ぼ、僕が何人プレイヤーを倒してきたか知ってますかぁ?」

M氏(闇妖精・第六階層在住)

 

「昨日ウルベルト様に話しかけて戴けましたよー。ねえ聞いて下さいよ!昨日ウルベルト様に話しかけて戴けましたよー。」

D氏(最上位悪魔・第八階層在住)

 

「私がモモンガ様を愛しているですってぇ♥それってどこ情報♪ねえ♥それってどこ情報よぉ♪」

A氏(女淫魔・第十階層在住)

 

「ホラ、私ってアイテムフェチじゃないですか?宝物殿の管理者じゃないですか?監禁されてて大変ですよ♪」

P氏(二重の影・宝物殿在住)

 

 

 等と揶揄されてきた様な気がする。しかし転移してからというもの、ナザリック外部への偵察任務に始まり、御兄妹の生活のお世話など多くの任務に携わる事が出来た!今回の任務も必ず達成して見せる!

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「あっ第一村人発見!さっそく話しかけてみよう!えーと…こんにちは?で、いいのかな?」

 

「お、お待ちくださいお嬢様!」

 

 事前に打ち合わせていた設定をまるっと忘れたさっちんが、村の中を見て回っているのをみてアインズはやれやれと思いながらも、油断なく周囲に注意を払う。

 

「こ、これは貴族様でいらっしゃいますか?カルネ村になんの御用で?」

 

「我が主人とその妹君はお忍びで村々を見てまわっている最中ですので…皆様に於かれましては、あまり騒がれないようお願いいたします。」

 

「そ、それではとりあえず村長に知らせてきますので…なにぶんお偉い様が、こんな辺鄙な村に来る事などなかったもですから。」

 

 アインズはセバスの応対に満足する。辺境と言えども村長ともなれば、村人よりは色々な事を知っているはずだ。そして随分のんびりとした村だな、と思う。ここに着くまでにオーガとゴブリンに遭遇したが、この村には柵等のモンスターへの対策がみられない。武装している人間もみられないが大丈夫なのかと思ってしまう。

 

 ちなみにオーガもゴブリンも、プレアデス達が一瞬で殲滅してしまった。これでこの世界のモンスターにもユグドラシルでの攻撃が通用する事が証明できた。オーガとゴブリンもユグドラシルでもおなじみのモンスターだが、種族的に最下級ランクの個体だった。

 

 ただ、そんなザコモンスターでもこの村にとっては充分脅威になりそうなのだが、と考えていると、村長らしき老人が慌てた様子で駆け寄ってくるのが見えた。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

「色々と参考になった。感謝しよう。(ほとんど知ってたけどな…しかしこのリ・エスティーゼ王国というのは酷いな)」

 

 それでも実際に生の話を聞いてみないと分からない事もある。どうやらナザリックが転移してきた土地がある国は、庶民にとっては生き辛いようだ。横暴で腐敗した支配層、搾取され続け日々の生活もままならない末端の民の姿は、アインズにぶすぶすとした怒りを感じさせる。

 

「こんなにも素晴しい世界なのに…それでも虐げられる者はいるのか…」

 

 アインズがやるせない気持ちに耽っていると、頭の中に《メッセージ/伝言》の声が響いた!

 

『アインズ様、今は宜しいでしょうか?』

 

「デミウルゴスか?少し待て。」

 

 村長の家を後にしたアインズは、村外れに移動する。周囲はセバスとソリュシャン、エントマが警戒している。

 

「待たせたな。それで何があった?それとセバスにも聞こえる様にしろ。」

 

『はい、アインズ様が居られる村へ、統一した装備で武装した人間の集団が向かっております。この集団は近隣の集落を襲っていたようで、既に複数の集落を滅ぼしていた模様です。後15分程で、そちらに着くと思われます。発見が遅れて申し訳ございません。』

 

「かまわない。それで相手の強さはどうだ?」

 

『最大でも5レベル。人数は50名。脅威と思われる装備やスキルもございません。御許可頂ければ即座に殲滅いたしますが?』

 

「ふむ。少し待て。セバス聞いたな?すぐにさっちん達を連れてくるのだ!」

 

 セバスに命じられたソリュシャンとエントマが駆けてゆく。

 

「デミウルゴス、対処はこちらで行う。引き続き警戒を続けてくれ。」

 

『かしこまりました、アインズ様。』

 

 《メッセージ/伝言》を切ったアインズは考える。それはゲームではない実戦についてだ。アインズは転移後にさっちんと話し合っていた。ユグドラシルでの種族で、この世界で生きていく上で戦いが避けられない事。自分達は突然、強大な力を手に入れたが、それに溺れる事になってはいけない。

 妹の為なら全てをNPCに任せて、ナザリックに永久に籠る事も考えたが、妹自身がそれを望まなかった。妹はちゃんと覚悟を示した。それなら兄の覚悟も見せねばならない。

 実際のところ、今回は戦闘も想定した外出だったのだ。今考えると、村に着く前に遭ったオーガ達は、実に手ごろだったのが悔やまれる。アインズ達も戦ってみたかったのだが、セバス達があっというまにサーチ&デストロイしてしまったのだ。

 

「アインズ様、我々が御二方には指一本触れさせません。ご安心を!」

 

「お兄ちゃーん。」

 

 妹がプレアデスを伴って戻って来た。強い決意を感じられる目だ。ユグドラシルで戦った時もこんな雰囲気だったなと思いながら、アインズはこれからの行動を考えていた。

 

 

○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●

 

 

 村長に敵の襲来を伝えたアインズ達は、村人を避難させたうえで、村の入口で敵を待ち構えた。セバス達には手出し不要と伝え、プレアデスのユリとナーベラルは村人の護衛に付けた。

 念の為にと、ありったけのバフをかけたうえで、スキルで生み出した2体の「デスナイト」を前衛にしているが、相手のレベルを考えればデスナイトだけでも充分だろう。

 デスナイトはその特殊能力ゆえに、アインズが好んで盾代わり愛用していたモンスター。今回も盾として召喚したに過ぎない。

 

「さっちん、相手のレベルは低い。まずは牽制で《ライトニング/雷撃》を打つ。その後はデスナイトを盾にして、スキルや魔法で攻撃だ!白兵戦は避けるぞ!」

 

「わかったよ、お兄ちゃん!」

 

 デミウルゴスからの情報で、相手の目的は判明しているので、いまさら「何をしに来た?」等と話し合う必要も無い。「こんにちは死ね」で充分だ。

 

「よし!行くぞさっちん!デスナイトは前方に見える敵から、私達を守るのだ!」

 

「グオオオオオオァァァアアーーー!!!」

 

 デスナイトが咆哮を上げながら突撃して行く――その動きは疾風の如きだ!その姿にアインズとさっちんは茫然とする。デスナイトは召喚者の傍で待機しながら、あくまでも盾に徹しながら、襲ってきた敵を迎撃するモンスターだったはずだ…間違っても召喚者を放置して、敵中に突貫して殺戮の嵐を撒き散らすような事はなかったはずだ。

 

 

「グエーッ!!」

「ウギャー!!」

「神よ、お助け下さいっ!!」

「かね!かねをやる!500金貨だ!」

 

 デスナイトに殺された者は、殺された者と同レベルのスクワイア・ゾンビとなり、そのスクワイア・ゾンビに殺されたものはゾンビとなる。その設定どおり、騎士たちは次々と殺されてアンデッドとなっていった。

 

「おぎゃああああ!おかね、おがねあげまぢゅゔうう…なんでもじまずぅ…おだじゅげえぇ…」

 

 気付けば生き残りはほとんどいない。アインズは慌てて叫んだ。

 

「そこまでだ!デスナイト!!」

 

 デスナイトがその動きを停止した時まで生き残っていた騎士は、瀕死の隊長ベリュースを含めても10名に満たなかった……

 




次こそガゼフさんとニグンさん登場(するはず)です!







感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。