至高の兄(骸骨)と究極の妹(小悪魔)   作:生コーヒー狸
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 思うところがありタイトルを変更しましたが、今後ともよろしくお願いします。
 


究極の妹

 お兄ちゃんと第六階層の闘技場で色々と試したけど、スキルや魔法もバッチリだった!フレンドリーファイアの事とか、多少の齟齬はあったけど想定の範囲内ってやつだ。

 お兄ちゃんがノリノリでスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを見せびらかしながら、《サモン・プライマル・ファイヤーエレメンタル/根源の火精霊召喚》で召喚したモンスターとアウラ&マーレ姉弟が戦うのをワクワクしながら見学したりした。

 モンスターを的確なチームワークで撃破した姉弟に、お兄ちゃんが「無限の水差し」でお水をご馳走していたのを見たので、私も手持ちのアイテムにあった「ぺロスター」という星型のぺロぺロキャンディーをあげたら凄く感激された。

 それにしても第六階層の守護者アウラ&マーレ姉弟可愛すぎー!!この子達の創造主であるぶくぶく茶釜さんには、とても可愛がってもらっていたから、この第六階層のジャングルによく招待されたな~。同じ女性メンバーの餡ころもっちもちさんや、やまいこさん達も集まって、4人でお茶会とかしてたな~。

 ちなみに第六階層のジャングルには、調合スキルに使用出来るレアな希少植物が定期的にポップするポイントがある。他の階層にも様々な希少金属が、定期的に採掘可能な鉱床が存在しておりナザリックの資産形成に寄与している。

 

 そうこうしているうちに続々と階層守護者達が集まって来た!アインズ・ウール・ゴウンに入ってすぐの頃、案内をかねてナザリック地下大墳墓を巡った時に、ギルメンの皆さんが、自分で作成したNPCの事をそれは熱心に語ってくれたから、彼らの事はよ~く知っている。

 

 一部を除いて階層守護者が集まって、アルベドが「忠誠の儀を!」とか、お兄ちゃんが「お面を上げよ」「素晴しいぞ!守護者達よ!!」とかやってる。あっ何か光り出した!?これって絶望のオーラ?凄いな~、これならナザリックも安泰だね!

 あれ?向こうからセバスが小走りして来てる?何かあったのかな?え?ナザリックの周辺が草原になっている?これってどうゆう事?お兄ちゃん説明プリーズ!!

 

 とにかく異常事態という事で、引き続いてさらなる警戒という話になったが、お兄ちゃんの「ナザリックの隠蔽」という問いかけに、マーレ君が「ナザリック表層を土で隠蔽」と進言すると、アルベドが「栄光あるナザリックを土で汚すと?」と揉め出した。

 

「ちょっとぉー!?そんな事したら、ナザリックにお客さんが来なくなっちゃうよ!!」

 

 

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 ナザリック地下大墳墓は、ユグドラシルのサーバーの一つである「ヘルヘイム」の、グレンデラ沼地にあったダンジョンである。そこを新進気鋭の異形種ギルドだったアインズ・ウール・ゴウンが攻略して、自らのギルド拠点としたのである。

 ユグドラシルには攻略する事で、ギルド拠点として所有する事が可能なダンジョンや遺跡が多く存在した。このようなギルド拠点を所有した場合に、その拠点に任意のプレイヤーを侵入者として受け入れる事で、プレイヤーの侵攻度合いに応じて、拠点に対して金銭やアイテムのボーナスや、様々な事に使用できる拠点EXPが収入として計上されるというシステムだった。特に拠点に配置するNPC達は、この拠点EXPでしか成長させる事が出来ない。

 ちなみに「伝説のプレイヤー1,500人大侵攻」において、全てのプレイヤーを撃退して、拠点の陥落を最後まで許さなかったアインズ・ウール・ゴウンには莫大な収入が齎されて、おおいにメンバー達の溜飲を下げる事になった。

 侵入者の受け入れは、ある程度ギルド側でコントロール可能で、ダンジョンを「開店モード」にしていれば、侵入者というデメリットがある代わりに、撃退時の収入や拠点維持費用の低減といったメリットがあった。

 また拠点に配置するNPCやシモベには、拠点内での戦闘時に3~5レベル分に匹敵するバフ効果がある。これが「ボス扱い」として特定の階層や領域の守護者に設定されている場合は、最大で20レベル分にも達する。これはギルドに所属するプレイヤーにも適用される。このようなキャラを撃破した場合は特別な報酬が発生する為、プレイヤーはこぞってNPCを撃破しようと試みる。

 ナザリック地下大墳墓の例では、ギルド長のモモンガが第十階層の玉座の間において、ソロで戦う際には特殊スキル「大魔王の矜持」により、ワールドエネミー並みのステータスとなるのだが、ユグドラシルにおいて、このスキルが発動される事は終ぞ無かった。

 逆に「閉店モード」にしていればプレイヤーの侵入を阻止できるが、ユグドラシルの拠点監視システムである「システム・ アリアドネ」に抵触する為、一定時間を過ぎると強制的に解除されてしまう。この為にどのギルドも、拠点防衛用のNPCにはかなり力を入れていた。

 

 そういった理由から適度な侵入者は、ナザリックにとっては実に美味しい収入源なのだった。なにせナザリック地下大墳墓は運営の公式発表で、九つあるサーバーにあるプレイヤーが攻略可能な、全てのダンジョン・遺跡・施設の中でも総合攻略難度において第2位にランキングされていた為、ユグドラシル最盛期においては、ナザリックの24時間あたりの来場者数は数百名にものぼっていたのだった。

 

 ※公式発表の総合攻略難度第1位は「エルナーク大神殿」という遺跡で、ユグドラシルが運営されていた12年間で、最後まで攻略者が出現しなかった。さすが糞運営である。

 

 

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「まさにさっちん様の仰られるとおり!」

 

「ナザリックへ土足デ立チ入ル不埒者ヲ誅殺スル事コソ我ガ使命!」

 

 NPC達が妹を讃えるのを聞きモモンガは焦っていた!

 

(またやってしまったぁぁ~!あいつに言われるまで気付かなかった!でもさすが俺の妹だ!偉いぞ幸子!)

 

「そのとおりださっちん!よってナザリックの隠蔽については中止とするが、先程の事もあるので、ナザリックの警戒レベルはデフコン3とする。最初に侵入者と相対する事に為る、第一~三階層守護者のシャルティアは特に警戒せよ!」

 

「ははぁ!このシャルティア・ブラッドフォールン。この身に代えましても、果たして御覧にいれます!」

 

「最後に守護者達に聞いておきたい事がある。お前達にとって私達兄妹はどういった存在だ?」

 

 これはモモンガが是非とも知っておきたかった事だ。NPCの離反など心配しないが、自分達へのイメージは知っておくべき事である。

 

「まずはシャルティア。」

 

「モモンガ様は美の結晶。その白きお身体に比べれば、宝石すらも見劣りします。そしてさっちん様は、そのモモンガ様すら霞む究極の美を体現する御方…その玉体をクンカクンカペロペ…」

 

「ぺ、ぺロロンチィーーーノォォ……」

 

 あまりも酷い内容にモモンガはドン引きする。

 

「次、コキュートス」

 

「モモンガ様ハ守護者各員ヨリモ強者デアリ、ナザリック地下大墳墓ノ支配者。ソシテさっちん様ハナザリック全テノ者二愛サレシ、ナザリック究極ノ至宝デアラセラレマス。」

 

「ほーう……アウラは?」

 

「モモンガ様は慈悲深く、配慮に優れた御方で、さっちん様は勇敢で、カッコ良い御方です!」

 

「ほほーう……マーレ」

 

「モモンガ様はす、凄く優しい方で、さっちん様は強くて、頼りになる方だと思います。」

 

「ほほほーう……デミウルゴス」

 

「モモンガ様は知勇に優れた、まさに端倪すべからず、という言葉が相応しい御方であり、そのモモンガ様の妹君であられるさっちん様は、ナザリックの全てに優先されなければならない究極の存在でございます。」

 

 守護者達の美辞麗句が続き、モモンガのライフが削られていく……

 

「あー、セバス。」

 

「モモンガ様こそ至高の方々の総括に就かれていた御方。そしてさっちん様は、全ての至高の方々に慈しまれた、まさに究極の御方です。そして御二方とも最後までナザリックに残っていただけた慈悲深き御方です。」

 

「さ、最後になったがアルベド。」

 

「至高の方々の最高責任者であるモモンガ様は、私達の最高の主人です!そして私がモモンガ様を愛する事を定めて下さったさっちん様は、私が全てを捧げて感謝しても足りないほど御恩のある御方です。」

 

「……なるほど。お前達の考えは理解した(とはいってない)。今後とも忠義に励め。」

 

 拝謁の姿勢を保ったままの守護者達の前から、モモンガとさっちんはモモンガの自室へと転移する。周囲を何度も見渡して誰も居ない事を確認して、どっと息を吐く。

 

「「ぶっっっはぁぁぁーーー」」

 

「何あの高評価?美の結晶?至高?慈愛?支配者?端倪すべからず??あいつらはいったい何を言っているんだ?」

 

「私なんて究極だよ~!?何で?私はただのザコメンバーだったのに~。」

 

「いやいや、そんな事はないぞ!さっちんが究極に可愛いのは当然だぞ!」

 

「お兄ちゃん!!」 「妹よ!!」

 

 骸骨と小悪魔がひしっと抱き合う。とりあえずNPCの忠誠心に問題は無いという事で2人は安心し、今後について相談をしている時、第六階層に残された守護者達の美辞麗句は続き「さすがはモモンガ様!」「さっちん様を守護らねばならぬ」との結論に至っていた。

 

 

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「とりあえずは何とかなりそうだよね~。明日になったらナザリックの中を色々と見て回ろうか。」

 

「お前ってポジティブなんだな。まあ、外の事も気に為るが、まずは足元を固めておくのが重要だな。」

 

 能天気な妹のおかげで癒されるな~とモモンガは思っていたりする。リアルでの厳しい暮らしの中でも、妹は明るく元気に振る舞っていた。そのおかげで自分がどれだけ奮起できた事か!

 

「そういえばNPCも外に出られるんだよね!?」

 

「ああ、ちょっとした思いつきでセバスに命令してみたら、ソリュシャンとエントマを連れて偵察に行って来たからな。やっぱりユグドラシルとは違う世界だからか…他にも異なる事がありそうだ。」

 

「それじゃあ私、NPCを連れて外に行ってみたい!ここしばらくは狩りやクエストも、いつもお兄ちゃんと2人だけだったでしょ。」

 

 モモンガは妹の言った事に、成程…と納得する。ほぼ兄妹2人きりの状態になってしまっていたアインズ・ウール・ゴウンは、かなりプレイに制限が掛かっていた。戦力・人数の不足から断念したイベントもたくさんあった。

 

「ふぁ~~何か眠くなってきた…そういえば今何時なんだろ?ここに来てから気にしてなかったけど??」

 

「あ~、どうなんだろうか?確か時計機能が付いたアイテムがあったはずだが…それより眠くなったのなら、部屋に戻って休みなさい。体調を崩しては大変だからな。もう会社へ行かなくてもいいんだから、好きなだけ寝てていいんだぞ!」

 

「はーい。それじゃお兄ちゃんおやすみなさーい。ぷーにゃんも行くよ~。」

 

「あー、エトワルにシクスス…だったな。私はよいのでさっちんを部屋に連れて行って休ませてやってくれ。」

 

「「かしこまりましたモモンガ様。」」

 

 恭しく頭をさげたメイドがさっちんに付き添って退室していく。彼女達はナザリックの第九階層に配置されていたレベル1の一般メイド達だ。第六階層から戻っていくらも経たないうちに、セバスから謁見の申し出があり、何事かと聞いてみれば「至高と究極の御方に供が付かないとは大変に由々しきことでうんぬん…」と苦言を呈されてしまったので、そういえば?と特に重要な理由もなく、せっかくだからという事で第九階層に配置されていたメイド達を思い出して、側付きを命じてみたところ、その事に対しての反応は劇的であった。

 異様に気合いの入ったセバスと、ナザリック地下大墳墓のメイド長であるペストーニャ・S・ワンコがあっという間に人員編成を済ませて、モモンガとさっちんには、常にメイドが侍る事が決められてしまったのだった。

 

「ふむ…セバス達も言っていたが、NPCは仕事を与えると喜ぶのか。じっさい配置したままで放置状態のNPCも結構いたしな。深い階層の守護者たちなんて普段はどうしているんだ?設定された事の他にも命令が可能なのは確認できたのだ。NPC達のさらなる活用を考えていかないと…」

 

 さっちんが退室した後も、アンデッドの特性により食事・睡眠の必要も無く、疲労も感じないモモンガは、ナザリックの今後についてあれやこれやと考えたり、遠隔視の鏡を使ってナザリック周辺を探ろうとして、使い方が分からずに苦労したりして、気付けば徹夜で朝を迎えてしまった。

 

 

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「お兄ちゃんおはよー。」

 

「お早うさっちん。よく眠れたか?」

 

 ナザリックで最初の目覚めを体験した私は、メイドのシクススちゃんに手伝ってもらって、簡単な身支度を済ませるとお兄ちゃんの部屋へとやって来た。目が覚めた後に寝室から出た私は、寝る前に着替えとかを手伝ってくれた彼女が、寝室の前で待機していてビックリした!

 

「お早うございます。さっちん様。」

 

「あれ?お、お早うございます?もしかしてシクススちゃん…あれからずっとここに居たの!?」

 

「もちろんでございます。さっちん様に命ぜられた際に、即座に応対可能な様に待機しておりました。」

 

「ええっーー!?!?眠くならないの?大丈夫!?」

 

「はい。私達はナザリックで24時間休みなく働ける様にと、睡眠・疲労を無効にするアイテムを与えられておりますので。」

 

(なんというブラック企業!!社畜!社畜だよー!ブラック企業断固反対!これはお兄ちゃんに言って何とかしないとダメだよね!)

 

 この後シクススちゃんから「朝の湯浴みはいかがですか?」と言われて、自分の部屋に併設された浴室に行って驚いた。ゲームの設定上では存在したけど18禁どころか15禁でも厳しかったユグドラシルには、入浴なんて行為はなかったので、こんな設備が自分の部屋にあった事を忘れていた。

 もちろん貧困層出身の私はスチームバスくらいしか使った事が無かったので、シクススちゃんに「それじゃあお願いするね(好きにして!)」と言ったら、それはもう凄い笑顔で全部やってくれました!身体中の隅から隅まで、あ~んなところやこ~んな所まで手とり足とり……ヤバい、コレは癖になりそうだ♪

 

 そんなわけで隣にあるお兄ちゃんの部屋へとやって来たのだが、部屋の中にはお兄ちゃんの他にも「アルベド」「デミウルゴス」「セバス」「ソリュシャン」がいた。

 

「シクススよ、さっちんの面倒を見てくれて感謝する。下がって休むが良い。」

 

「とんでもありません。さっちん様のお世話という大変にな名誉に与かれて光栄です。直ぐに代わりのメイドと交代します。」

 

(お~、さすがお兄ちゃん!ブラック企業への勤務歴が長いだけある!)

 

「あー、今は守護者達と大事な相談をしているのでな…それにセバスとソリュシャンが控えているので問題は無い。」

 

「モモンガ様、メイド達の勤務体制については、改めてメイド長と相談いたしますので。シクスス、この後についてはメイド長の指示を仰ぐように。」

 

(うん、この様子ならみんなに任せておけば大丈夫だね。)

 

「それよりさっちん、朝食はまだなのだろう。私の事は気にしないでいいから、何でも好きなものを食べなさい。」

 

「お兄ちゃんオーバーロードだもんねー。他のみんなはどうなの?もうご飯食べちゃった?」

 

「む!?そういえばお前達も、食事はどうしているのだ?飲食不要のアイテムを装備はしているのだろうが…」

 

(何という事だ!ナザリックの暗部を垣間見てしまった!NPC達は食事も休息も取らずに酷使されていたなんて!?いくら仕事とはいえ…仕事?仕事になるの??あれ?じゃあ給料とかどうなってるんだろう?そういえばぷーにゃんに給料なんてあげてなかった……でもぷーにゃんはペットだったし、でもエサとかはどうしてたんだろう??)

 

 そんな兄妹のやり取りを眺めていたNPC達の動きが氷のように固まる。さっちんのお腹が「グ~~」と可愛らしく鳴ったからだ。

 

「モモンガ様っ!そのような細事は後程でかわないと愚考いたします。まずはさっちん様に朝食を摂っていただきませんと!」

 

「料理長に伝えて、大至急でお食事を用意させて頂きます!」

 

 

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 朝から大騒ぎになったけど、お兄ちゃんから「とにかく食事をすませてからまた来てくれ」という事で、アルベドとシクススを連れて食堂へ向かっている。一般メイド達はホムンクルスという種族で、大喰らいという設定があったのを、全てのメイドのデザインをたった一人で手掛けたホワイトブリムさんから聞いていたのを思い出して、シクススに「メイドさん達のご飯はどうしてるの?」と聞いたら、食堂の存在を教えてくれたからだ。

 

 アルベドを連れて来たのは、やっぱり一人で食べるのもどうかと思っていたら、お兄ちゃんがアルベドに命じてくれた。何でアルベドにしたんだろう??

 わざわざ食堂に行かなくても、自室までお持ちいたしますって言われたけど、ビュッフェスタイルと聞いたら是非とも行ってみたくなったのだ。だって「ビュッフェ」だよ!あの上流階級にしか許されないという「伝説の食べ放題!!」だ。しかもナザリックの食材の素晴しさは実証済みだ!これはもう行くしかないよね♪

 

 伝説のビュッフェに期待して食堂に着いたら、入った途端に室内の空気が固まった。私の事を見た瞬間に、それまでキャピキャピしていたメイドさん達が、一斉に立ち上がっておじぎをしたまま微動だにしない。

 

「お、おじゃましま~す。私は朝ごはんに来ただけですので、み、皆さんも気にせずに食事を続けて下さい…」

 

(わーーっ、何か予想外の事になっちゃった!どどど、どうしよーう??)

 

「そうだ!アルベドさんっ、皆さんに言ってあげて下さい。上司として!」

 

 なんとか私の意向を伝える事に成功して?皆は食事を再開してくれたが、食堂内の雰囲気がおかしい。すごい視線を感じる。みんなニコニコして私の事を見ている…まあ、避けられてるとかじゃないみたいだからいいのかな?

 とりあえずやり方を聞いて、食事を始める事にした。シクススはすご~く私の世話をしたがっていたけど、それじゃシクススがご飯を食べられないし、私も自分でビュッフェしたかったので、アルベドも連れて3人で色々と料理を選んだ。

ふかふかのパン、プリプリのソーセージ、瑞々しいサラダ、チーズと野菜がたっぷりのピザ、いいにおいのコーンスープ…どれも凄く美味しそう♪よーし食べるぞ~!

 

 やっぱりナザリックの食事は最高だった。シクススや他のメイド達がもの凄い量をモリモリと食べていたのにビックリしたり、アルベドが「さっちん様が口にされるならもっと高級な食材を…」とか言って、これ以上があるの!?とか思ったりした。

 デザートにメイド達のイチ押しという、パティシエ謹製ケーキを食べた。おいしい…本当においしい。こんなにおいしいのに……どうして涙が止まらないんだろう……

 

 昨日まで私達兄妹がいたリアルの世界は、弱者にとって凄く厳しい世界だった。自然が失われた劣悪な環境での重労働、食べるものは料理ではなく、栄養摂取のみを目的とした「物体」だ。

 ナザリックで食べたものには遥かに劣るけど、私は年に数回だけリアルの世界でも「料理」を食べる事が出来た。全てお兄ちゃんのおかげだ。今食べてるケーキよりずっと小さくてみすぼらしいケーキだったけど、お兄ちゃんは私の誕生日には、必ずケーキを用意してくれた。クリスマスとかにも私にだけ、ふだん食べられない様なご馳走を食べさせてくれた。

 お兄ちゃんは「俺は食事なんてどうでもいいから」「たいした物でなくてすまないな」と言っていたけど、そんな物でさえ入手するのが、貧困層の人間にとってどれだけ大変だったんだろう……

 

「「「どうなされたのですか!?さっちん様!」」」

 

 泣いている私を心配して、アルベド達が大騒ぎになってしまった。彼女達の誤解を解く為に、私はリアルでの事情を説明する事にした。もちろんゲームのNPCには理解出来ないだろうから、色々と言葉を換えてだけど、ナザリックに来るまでの私達兄妹が、両親を亡くして貧しい生活を送っていて、そんな中でもお兄ちゃんが身を削るようにして私を育ててくれた事を語っていった。

 

「な、なんと御労しいっっ、至高の御方ともあろう方が満足な食事も出来ず、あまつさえ奴隷のごとき扱いを受けていたはっ!?!?」

 

「そのような過酷な状況でありながらも、命をかけてまでさっちん様をお守りしていたなんて!モモンガ様はなんと慈愛に溢れた御方なのでしょう!」

 

「私は我が身の無能が恨めしいっ!栄光あるナザリックの料理人でありながら、モモンガ様が食する事のできる料理を創り出せないとはっ。」

 

 なんか周囲がどんどんと騒ぎ出しているのを見て、ちょっと醒めてきた。お兄ちゃんにも美味しい食事を体験してもらいたいとは思ったけど、オーバーロードじゃどうにもならないよね。それを選んだのはお兄ちゃんなんだし!どうしてあんな骸骨にしたんだろ?同じアンデッドでもヴァンパイアや肉体があるゾンビとかなら飲食出来たかもしれないのに!

 あっ…でもさすがに腐った死体は引くかも。臭そうだし!しかも名前が「モモンガ」とかおかしくない?あの見た目でモモンガとか…私がアバターの名前を相談した時も「ムササビなんていいんじゃないか」とか言ってたし!前から思っていたけど、お兄ちゃんってセンスが「何か変」なんだよ!

 

「ああっ、我が創造主であるタブラ・スマラグディナ様っ!どうして私を創造する際に「モモンガ様でも食事可能な料理」を創るスキルを、お与えして下さらなかったのですかっ。」

 

「守護者統括のアルベド様にも不可能だなんて!?やはり至高の方々の御力がなければ、私たちはなんて無力なのでしょう。」

 

「そうよっ!至高の御方であるモモンガ様なら、如何にか出来るのではないかしら?私達には考え付かない凄い魔法やアイテムをお持ちのはずだわ!」

 

「いや、そんな都合のいいもの無いからね。外装を変化させるアイテムとかはあったけど、種族特性は変わらないし。だいたい、都合良く願いを叶えてくれる魔法みたいな事なんてあるわけない…………あったぁぁぁぁっ!!」

 

 魔法あるじゃん!私魔法使えたじゃん!って、そうじゃなくてユグドラシルにはあったじゃないか!願いを叶えてくれる超位魔法《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》が!これを使えばお兄ちゃんにも美味しい食事をしてもらえるんじゃない?

 

 超位魔法《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》は、経験値を消費する事で、その量に応じて用意された願い事から、好きなものを選んで叶えてくれる魔法だ。かなり取得条件が厳しくて私には使えないけど…ウフフ♪私にはあるんですよ♪この超々レアアイテム「流れ星の指輪」が!

 これは本当にスーパーレジェンドレアなアイテムで、アインズ・ウール・ゴウンでもたった2人しか所持していなかった。一人はやまいこさん。何でもお試しでやった課金ガチャで一発で当てたらしい。るし★ふぁーさんなんて「夏のボーナス全突っ込み」しても出なかったのに!!と悶絶していた。

 

 そんな「流れ星の指輪」をやまいこさんが引退する時に「モモンガさんには内緒よ♪」と言って、私にプレゼントしてくれたのだ。あまりにもったいないので今まで一度も使った事がない。やまいこさんも使わなかったので。使用回数は3回まるまる残っている。

 もう一人の所有者はなんと我がお兄ちゃんだ!それも課金ガチャではなく、お兄ちゃんの「特殊能力」で手に入れたのだ。お兄ちゃんは「ゲームに課金するなら、妹に課金する」と言って、殆ど課金をしていなかった。ギルドの為の共同での課金とか以外では、自分のプレイを有利にする為の課金を全くしていなかった。

 それでもあの能力のおかげで、他より少ないプレイ時間でもあれだけキャラを鍛え上げて、多数のレアアイテムや装備を入手できたのだから、お兄ちゃんもチートだよね。

 

「そのような魔法が存在するとは!?」

 

「さすがは究極の御方!!」

 

「ちょー、ストップストップ!落ち着いて!」

 

 とりあえず私は超位魔法《ウィッシュ・アポン・ア・スター/星に願いを》と「流れ星の指輪」について説明して、皆と相談の上でお兄ちゃんに指輪の力を使う事にした。今は私個人の所有アイテムだから、例え失敗しても誰にも迷惑に為らない。

 もしこれがダメなら、後は宝物殿にあるワールドアイテムの「アレ」しかないけど、さすがにアレはお兄ちゃんが許さないだろう。そんな事を考えていたらアルベドが、物凄~くイイ笑顔で私に聞いてきた。

 

「さっちん様♥こんな事を言うのは畏れ多いのですが…、わた…コホンッ…モモンガ様の為にも、是非とも願い事に加えて戴きたい事があるのですが……」

 




ナザリック地下大墳墓とモモンガ様にオリ設定。
アルベドのお願いは分かってるでしょ?







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