至高の兄(骸骨)と究極の妹(小悪魔) 作:生コーヒー狸
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西暦二一三〇年代の日本で、その常軌を逸した完成度と自由度で、最も隆盛と人気を誇ったDMMO-RPGである「ユグドラシル」。そのユグドラシルにおいて最強最悪のDQNギルドとして名をはせた「アインズ・ウール・ゴウン」のギルド拠点である「ナザリック地下大墳墓」の第九階層にある「円卓」において、全ギルドメンバーが参加する定例会議が開催されていた。
ギルドメンバーであるぺロロンチーノは、会議の進行を退屈そうに眺めていた。定例会議といっても、開催されるのは月に一度。特に重要な議題が有るわけでも無く、ゲーム内でのイベントやアイテムについての雑談が殆どだ。彼にとっては、現在攻略中のゲームである「幼稚園ソドム」のほうが重要だったりする。
実際、ギルドメンバーの何人かは、ログインの頻度も減ってきており、こうして全ギルドメンバーが円卓に揃うのも、定例会議くらいのものだ。普段は仲の良いメンバー同士で狩りやダンジョンへ行ったり、ナザリック地下大墳墓のどこかの階層で駄弁っている事が多い。
アインズ・ウール・ゴウンはギルドメンバーが社会人である事と、ゲーム内でのアバターが異形種である事以外は、特に制約の無いギルドである。ガチなギルドに有りがちな、イベント参加やログインの強要といった行為や、ギルドを優先したキャラクターのビルドや装備への指定などもなく、雰囲気の緩い、居心地の良いギルドである。
しかしながら一癖も二癖もあるメンバー達は、廃人プレイヤーにも匹敵するキャラクターを造り上げており、アインズ・ウール・ゴウンはギルドメンバー41人という規模からはあり得ない、ユグドラシル内でのギルドランク9位という実績を誇っていた。
そんなギルドのトップであるモモンガから、会議の最後に、とある議題が提起されたのだった。
「私事で申し訳ないのですが、アインズ・ウール・ゴウンのギルド長として、皆さんに是非お願いしたい事があります。」
ギルド長であるモモンガの一言に全員の注目が集まった。変化の無いアバターの表情からは読み取れないが、言葉の節々に緊張と申し訳なさが感じられた。
彼はギルドのトップというよりは、調整役としてのイメージが強く、自分の意見や要望を強く出す事は殆どなかった。普段から癖のあるギルメン達(虫と悪魔、肉棒と鳥)の間の緩衝材のように立ちまわっている事が多く、ぺロロンチーノもよく世話になっていた。
そんなモモンガの今までにない言動に、ぺロロンチーノの興味は高まっていた。
「モモンガさんがお願いなんて珍しいですね~。何なんだろ?」
「ギルド長にはいつもお世話になっていますから。遠慮なく言って下さい」
ギルメン達の屈託の無い返答が、彼の仁徳を証明していた。この場に居る全員が、よほどの事でない限りは、彼のお願いを聞く事を受け入れていた。「ギルド長として」のお願いなのだから、ゲームに関する事なのだろう。どうしても欲しいアイテムでも有ったのだろうか?などとぺロロンチーノは考える。
自分としても、ギルメンの中でも特に仲の良いモモンガの為なら、現在鋭意行楽中の「幼稚園ソドム」を中断してでも協力する事に吝かではない!そんな雰囲気を感じたのか、モモンガはとても嬉しそうに、そして頭を深々と下げながら、ギルメンに対して告げた。
「私の妹を、アインズ・ウール・ゴウンの四十二人目のメンバーとして加入させる事を、皆さんにお願いしたいのです!妹は以前からユグドラシルに興味があって、小学校の卒業記念にインターフェースを買ってあげたのですが、これを機にユグドラシルを始めると言ってまして、それで私の所属するアインズ・ウール・ゴウンに入りたいと頼まれたのですが…」
思いがけない内容に全員の動きが止まった。アインズ・ウール・ゴウンは随分前から、様々な理由を勘案して新規メンバーの加入を打ち切っていたが、それ以上に「モモンガに妹が居た」という事に驚いていた。彼はゲーム内ではリアルでの事情を殆ど語らなかったからだ。
そんなギルメンの様子に動揺したのか、モモンガは怒涛の如くあれやこれやと語り出した。貧困層の家庭に生まれ育った事や、年の離れた妹の為に、小学校を卒業してすぐに働き始めた事。両親は既に亡くなり、二人きりの家族で、妹をとても可愛がっている事、そんな妹を進学させてやれない事が情けなくて、それならせめて興味を持ったユグドラシルで少しでも楽しんで欲しいと思った事等…
「もちろんギルドメンバーの条件は理解しています!妹は小さい会社ですが就職も決まっていますし、アバターについても異形種を選択させます!当たり前ですが、わがままな姫プレイなんて許しませんし、ゲームのやり過ぎにも注意して、課金の額もしっかりと制限して…」
「モモンガさんストップ!ストップ!落ち着いて下さいっ!!」
モモンガの余りの狼狽ぶりに、ギルメンから待ったがかかる。何とか周りがモモンガを落ち着かせると、彼の隣りの席に座っていたタブラ・スマラグディナが、モモンガに代わってギルメンへ問いかける。
「私は良いと思いますよ。アインズ・ウール・ゴウンの理念にも反しませんし、モモンガさんの妹さんなら、信用の面でも心配は無いでしょうし…皆さんはどうですか?」
「「「「「賛成!!」」」」」
アインズ・ウール・ゴウンで何かを決定する場合は、多数決を重んじていた。重要な決定ではメンバーの過半数の賛成を必要としていたが、今回のモモンガからの提案は全会一致で可決される事になった。
「み、皆さん…ありがとうございますっ」
モモンガは立ちあがると、本当に嬉しそうにギルメンへ礼を述べた。
「新規メンバーなんて何年ぶりだ!?わくわくするなぁ!」
「モモンガさんに妹が居たなんてビックリしましたよ!早く会ってみたいですね。」
「いや~、ウチは女の子が少なくて、肩身が狭かったから嬉しいよね~」
「ホントホント!これで女性の意見も通りやすくなるといいね~♪」
「「「えっ??」」」
メンバーが口々に歓迎の意を表している事にモモンガが感動していると、彼とは特に仲の良いぺロロンチーノが、モモンガの席まで訪れて来た。
「モモンガさーん!「小学生の妹」がいるなんて聞いてませんでしたよ!水くさいな~もう!!何で紹介してくれなかったんですか!?大親友のモモンガさんの妹なら、俺にとっても妹も同然です!妹ちゃんが加入したら、しっかりと面倒見てあげますからね!!アバターのデザインは任せて下さい!妹キャラなら一押しのキャラが居るんですよ!いまハマっている「幼稚園ソドム」っていうゲームに登場するヒロインで、主人公の妹なのは当然として…」
「おい!それ以上は黙れ弟!」
「ダメだぁっ!!お前の様な変態に、大事な妹を近づけるかぁぁっ!!!」
こうしてアインズ・ウール・ゴウンに四十二人目の、そして最後に為るメンバーが誕生する事となった。そしてギルドメンバーはギルド長が重度のシスコンだったことを初めて知るのであった。
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私は鈴木幸子12歳。両親は私が小学校にあがる前に亡くなっているが、10歳以上離れた悟という兄が居る。両親が亡くなってからは、お兄ちゃんが私を育ててくれた。
この春、小学校を卒業して地元の小さな会社に就職する事になった。私が住むアーコロジーは貧民層が大部分を占めて居て、治安や経済状態もあまり良くない。通っていた小学校でも、同級生で進学出来たのは三割以下で、私の友達も殆どが、卒業後に働かなければ生きていけない貧困層の出身だ。中にはお金の問題で学校に通えなくなって、卒業出来なかった友達も少なくなかった。
だからちゃんと卒業まで小学校に通えた私はとても幸せだ。お兄ちゃんは、私に「不甲斐ない兄でごめん。」と謝っていたが、とんでもない!お兄ちゃんが私の為に、どれだけ大変だったかを知っている。
私が生まれる前は両親も健在で、家族は貧しいながらも、ささやかに暮らしていたと、亡くなった父が言っていた。成績の良かった兄は中学校へ進学するはずだったが、私が生まれた事と、母の産後の肥立ちが良くなくて、働く事が困難になった事もあって、小学校を卒業してすぐに働く事になったのだという。
私は両親にも兄にも申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、亡くなった両親は私をとても可愛がってくれたし、お兄ちゃんもことある事に「お前は俺の宝だ」と言ってくれて、とても幸せだった。
お兄ちゃんは両親が無くなった後は、よりいっそう私を大切にしてくれた。衣食住も私を優先してくれて、私の面倒をみる為に出世も断ってしまった。友人も恋人も作らず、私との生活を最優先にしてくれていた。
そんなお兄ちゃんが唯一ハマったのが「ユグドラシル」だった。父の形見のインターフェースを装着して、一喜一憂しているお兄ちゃんを見て、最初は寂しかったり、少し気持ち悪いかな?と思ったりしたけど、ユグドラシルでの出来事をとても楽しそうに話しているの聞いて、私もユグドラシルに憧れるようになっていった。
その後、無事に小学校を卒業して社会人となった私は、憧れだったアインズ・ウール・ゴウンの42人目のメンバーになった。ユグドラシルを始めるにあたっての最初の作業になるアバター作成は、お兄ちゃんよりも、むしろギルドメンバーの人達がこぞって協力してくれた。
お兄ちゃんと特に親しいという、ぺロロンチーノさんやウルベルトさんのおススメで、プチデーモンという種族を選んだら、タブラ・スマラグディナさんがとても詳細な設定テキストを送ってくれた!
私のアバターである「さっちん(リアルでの愛称をそのまま使う事にした)」の外装は、ホワイトブリムさんがとても可愛くデザインしてくれた!赤紫の髪と瞳で、一見カワイイ女の子だけど、頭から小さな角が生えてて、口には牙があって、背中からはコウモリっぽい羽根と悪魔の尻尾が生えている。真黒なワンピースに真っ赤なグローブとブーツ!武器はフォークみたいに先端が三つ又になった特製の槍。他のメンバーの人達も、もう使わないからという理由で色々とアイテムを譲ってくれたりした。
初心者で低レベルの私を心配して、クエストや狩りにも同行してくれた。特に同じ女性メンバーでもある、餡ころもっちもちさん・ぶくぶく茶釜さん・やまいこさんと、お兄ちゃんの大親友?というぺロロンチーノさんは私を可愛がってくれた。※ぺロロンチーノさんといる時は、何故かモモンガお兄ちゃんが私から離れなかった。
ギルメンだけの特権で、ナザリック地下大墳墓の拠点NPCの作成もさせて貰えた!すでに限界以上に拡張されていたNPC製作可能レベルを、さらにメンバー全員の課金で拡張してまで割り振ってくれた時は、兄妹揃って恐縮しまくりだった!
こんな感じで、私はユグドラシルを心から楽しむ事が出来た。「モモンガの妹さっちん」として沢山の冒険をして、色々なアイテムを手に入れて、数多くの敵と戦った。
異形種PKを繰り返していた敵対ギルドの拠点に、メンバー全員で強襲してギルド武器を破壊して、ギルドを解散に追いやったり、参加メンバーの半数が死亡と言う被害を被りながらも、ワールドエネミー討伐を達成したし、お兄ちゃん曰く「ナザリック地下墳墓を攻略した時より厳しかった」という極悪ダンジョンを制覇して、ワールドアイテムを入手する事も出来た!
ナザリック地下大墳墓に1,500人ものプレーヤーによる、アインズ・ウール・ゴウン討伐隊が攻めて来た時には、私が倒された事に激怒したお兄ちゃんによる「プレイヤー千人殺し」があったりと、沢山の事があった。
そんな楽しいユグドラシルから、ギルメンが一人、また一人と抜けていってからも私たち兄妹は、毎日ログインしていた。2人だけしかログインしない日も多くなり、寂しい思いもしたけれど、兄妹二人きりで狩りやクエストをこなしたり、拠点への侵入者を撃退するだけでも楽しかった。
私にとっては、ユグドラシルが楽しいというよりも、大好きなお兄ちゃんと一緒に遊べる事の方が楽しかったのだろう。
でも、私がユグドラシルを初めて3年目の2138年、運営会社からユグドラシルのサービス終了が発表された…
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「またどこかでお会いしましょう」
そういって古き漆黒の粘体は画面から消えていった……
「最後に来てくれたヘロヘロさんも帰っちゃったね、お兄ちゃん…」
「そうだな…ヘロヘロさんも相変わらずのブラック勤務で大変みたいだったな。さっちんも明日、仕事なんだろう。ログアウトしたらどうだ?」
「ううん…今日でユグドラシルがお終いなんだから最後まで居たいの。それにまだ誰か来るかもしれないし…」
ユグドラシルのサービス最終日、サービス終了まで30分を切った現在、ナザリック地下大墳墓九階層の円卓の間に残っているのは、ギルド長モモンガと妹のさっちんの二人だけだった。
この日を迎えるにあたって、ギルド長のモモンガは、既に引退したメンバーを含む全員にメールを送った。全員から返信こそあったものの、最終日までにログインしてきたギルメンは、先程のヘロヘロを含めても半数以下で、ゲームの終了をナザリックで迎えるのはモモンガとさっちんだけだ。
寂しいという気持ちもあったが、2人は満足していた。久しぶりに会えたギルメンも居たし、攻めてくるプレイヤーも無く放置状態だったナザリック地下大墳墓へ、終了記念にと侵入してくるプレイヤーが何組もいて、久しぶりに充実した気分も味わえたからだ。
「それにしても儲かったよね~♪ここ一週間で100人以上も攻めて来たけど、ボーナスやドロップ品で大儲け!ワールドアイテムまで入手出来ちゃうなんて♪」
「まあ最後だしな…それにしても、とうとうナザリックを攻め滅ぼすような勇者は現れなかったか…ウルベルトさんあたりがいたら「不甲斐ない奴らめ!」とか言いそうだな。」
「あははー、そうだよねー。ウルベルトさん、どうしても外せない事情があるって言っていたけど…最後に会いたかったなー。」
「仕方ないさ。リアルの事情を優先させるのは当然だ。仕事、家族…他にも色々とあるからな…」
ユグドラシルの終焉が迫る中、2人の兄妹の胸に去来するものは……まだ入手していないアイテムがあった、まだ行った事のないエリアがあった、まだ見た事のないモンスターがいた…もっともっとユグドラシルを楽しみたかった!それでも終わりの刻はきてしまう…
「さっちん、最後の時は玉座の間で…と思っていたが、どう思う?」
「そうだね…さすがにもう誰も来ないと思うし、いいんじゃない。」
そう言って2人は円卓の間を後にしようとしたが…
「あっ、そうだ!せっかくだからスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを持って行ったら?それ、お兄ちゃん用に造られたのに、あの時の1回きりしか使わなかったでしょ。装備もしないで、ずーっと円卓の間に飾りっぱなしだったし!最後なんだからビシっと決めてみたら!?」
「アインズ・ウール・ゴウンの心臓部のギルド武器をホイホイと使えないだろ!でも、まあ…これで最後だしな。」
モモンガは円卓の間に飾られたスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に取ると、さっちんを連れて円卓の間を後にする。一部を除いて、ナザリック内部を自由に転移可能なリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使用して、第十階層の玉座の前へ転移すると、扉の前に複数の人影があった。ナザリックの家令セバス・チャンと、彼をリーダーとした6名の戦闘メイド部隊プレアデスである。
彼らは元々、第十階層において、侵入者を迎撃する最終一歩手前という設定をされていたのだが、リーダーであるセバスのみが、カンストの100レベルで、プレアデスの6名は平均50レベルと、第十階層まで到達したプレイヤーに対しては、時間稼ぎにしかならないものだった。
かつてナザリック地下大墳墓に侵攻した1,500人の討伐隊すらも第八階層で全滅の憂目に遭った為、ギルメン以外に披露される事も無く、とうとう役目を果たす事のなかったNPC達である。
そんな彼らを不憫に思ったモモンガ達は、「付き従え」と命令すると、彼らを従えて玉座の間へと入って行った。
「ここに来るのも随分と久しぶりだな。ナザリックの最重要部分って設定だったけど、特に用事がある訳でも無かったしな~。ここのNPCはアルベドだったか?タブラさんの造ったNPCで、ナザリックの守護者統括に設定されていた…あれ!?何でワールドアイテムのギンヌンガガプを持っているんだ?」
「あれ~??お兄ちゃん知らなかったの?タブラさんが「これでお前の愛するモモンガさんを守るのだぞ!」って持たせていたんだよ。」
「全く…タブラさんも勝手に…おいぃー!!「愛するモモンガさん」ってどういう事だよ?」
「あはは~♪前にアルベドの設定に「ちなみにビッチである」なんて書かれていたから、タブラさんにヒドイですよ~って言ったら「さっちんの好きに変えていいぞ」って言われたから「モモンガを愛している」って書き換えたの♪タブラさん大ウケしてたよ!」
「あんのタコがぁ~~!!ウチの妹に何という事を…」
「お兄ちゃんが怒るポイントってソコなの!?」
「いけませんっ!!女の子がそんな言葉を使うなんて、兄として絶対に許しません!」
そんな遣りとりの後、モモンガは最後の時を迎える為、玉座へと腰掛けると、さっちんはモモンガの膝にチョコンと乗っかった。
「もうユグドラシルもお終いなんだね…楽しかったなぁ…」
「そうだな…最後は何時もの言葉で締めくくろう」
「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!」」
モモンガが時計を確認すると、時刻は23:59:51。ユグドラシル終了は間近に迫っていた。コンソールには「ユグドラシルのサービスは間もなく終了します。長らくのご愛顧ありがとうございました」と、メッセージが表示されている。23:59:57、58、59…流れる時間をカウントしていく。サーバーが落ちたらすぐに寝ないと、明日の仕事に差し支える。
23:59:58、59、0:00:00…時間と共に画面がブラックアウトし、ネットとの接続が終了され……なかった!?!?
「「ん…どういう事(だ)!?」」
「ぎゃっ!!何コレ!?キモイっ、痛いっっ!!何で?何で?お兄ちゃん助けてぇ~~」
「ど、どうしたんだ、さっちん??何かに攻撃されたのか??いや、ゲームなのに痛みを感じるはずは…とにかくログアウトだ!さっちん、緊急終了ボタンを押すんだ!」
「モモンガ様!さっちん様!いかがなされたのですかぁぁ!?!?」
「何者かが侵入した??一体どこから?敵はどこから攻撃を?」
「ルプスレギナ・ベータっ、急いでさっちん様に回復をっ!」
「こちら守護者統括アルベド!緊急事態発生!現在第十階層玉座の間において、さっちん様が何者かに正体不明の攻撃を受けているっ!全階層守護者は、各階層に不審が無いか確認…いえ、そのような場合ではないっ!全NPCは大至急玉座の間へ集結して、モモンガ様とさっちん様をお守りするのですっ!不審な者がいれば、命に代えても即時殲滅を命じますっ!!」
「ちょ…何でNPCが喋ってるの?それにもう終了時間は過ぎて…何で?コンソールが開けないぞ!?一体どうなっているんだぁぁーーー」
「キモイよ~痛いよ~お兄ちゃぁぁ~ん」
突然の不快感と激痛に襲われた私は、時間になってもユグドラシルが終了していない事や、NPCが勝手に動き回って喋っている事、コンソールが開けなくなってログアウト不可能になっている事を疑問に感じる余裕も無く、床を転げ回っていた…
この作品のモモンガ様は、リアルの妹ちゃんが最優先で、原作の様な廃人プレイヤーではありません(それでも時間を捻出して一日に1時間はログイン)し、度を超えた課金や、ボーナスをガチャに全額投入なんて暴挙は行っていませんが、ご都合主義により、原作同様のプレイヤースキルや、アイテムを所持しています。