「青頭巾」[『雨月物語』より]の続きだよ!
ねえ、ねえ、早く誰か、僕にも青頭巾を被せてよ!
※この記事では、霞亭文庫の画像を適宜改変して利用しています。
霞亭文庫書誌詳細
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【翻刻】
とも哀(かな)しとも。ためしさへ希なる悪因(あくいん)なり。夜(よひ)/\里に出て
人を害(わざわひ)するゆゑに。ちかき里人ハ安き心なし。我これを聞て
捨るに忍びず。特(わざ/\)来りて教化(けうけ)し本源(もと)の心にかへらしめんと
なるを。汝我をしへを聞や否(いな)や。あるじの僧いふ。師ハまことに佛
なり。かく浅ましき悪業(あくごう)を頓(とミ)にワするべきことわりを教(をしへ)給へ。
禅師いふ。汝聞とならバこゝに来れとて。簀子(すのこ)の前のたひら
なる石の上に座せしめて。ミづから帔(かづ)き給ふ紺染(あをぞめ)の巾を脱(ぬぎ)て
僧が頭(かうべ)に帔(かづか)しめ。證道(しやうだう)の哥の二句を授(さづけ)給ふ
江月(こうげつ)照(てらし)松風(せうふう)吹(ふく) 永夜(えいや)清宵(せいしよう)何(なんの)所為(しよゐぞ)
汝こゝを去(さら)ずして徐(しづか)に此句の意(こゝろ)をもとむへし。意觧(とけ)ぬる則(とき)
はおのづから本来の佛心に會(あ)ふなるはと。念頃に教て山を
下り給ふ。此のちハ里人おもき灾(わざハひ)をのがれしといへども。猶僧が
※赤字が前回のくずし字クイズの答えです。
[くずし字クイズの補足説明]
【現代語表記】
とも哀(かな)しとも、試(ためし)さえ稀(まれ)悪因(あくいん)なり。
夜々[宵々](よいよい)里に出て、人を害[禍](わざわい)する故に、近き里人は安き心なし。
我これを聞て、捨つるに忍びず。
特[態々](わざわざ)来りて教化(きょうげ)し、本源[元](もと)の心に返らしめんとなるを、汝(なんじ)、我が教えを聞くや否(いな)や。」
主(あるじ)の僧言う。
「師は真(まこと)に仏なり。
かく浅ましき悪業(あくごう)を頓(とみ)に忘るべき理(ことわり)を教(おし)え給え。」
禅師言う。
「汝、聞くとならば、ここに来たれ。」
とて、簀子(すのこ)の前の平(たいら)なる石の上に座せしめて、自(みずか)ら被(かず)き給う紺染(あおぞめ)の巾を脱(ぬ)ぎて、僧が頭(こうべ)に被(かず)かしめ、証道(しょうどう)の歌の二句を授(さず)け給う。
江月(こうげつ)照(てらし)松風(しょうふう)吹(ふく) 永夜(えいや)清宵(せいしょう)何(なんの)所為(しょいぞ)
「汝、ここを去(さ)らずして、徐[静](しずか)に此の句の意[心](こころ)を求むべし。意解(と)けぬる則[時](とき)は、自(おの)ずから本来の仏心に会(あ)うなるは。」
と、念頃[懇](ねんごろ)に教えて、山を下り給う。
此の後は、里人重き災(わざわい)を逃れしと雖(いえど)も、猶(なお)僧が
【さっくり現代語訳】
(快庵禅師は、「里人が語るのを聞いたが、お前は一時(いっとき)の愛欲におぼれて精神に異常をきたし、鬼畜に成り下がってしまったのは、愚か)でもあり、悲しくもある。
それにしても、こんなことは聞いたことがないので、さぞかし悪い因縁があったのであろう。
お前が夜な夜な里に下りて、人々に危害を加えるから、この寺に近い里の住人は、安心して暮らすことができなかったのだぞ。
私は里人の訴えを聞いて、放っておくわけにはいかなかったから、わざわざここまでやってきたのだ。
お前に正しい教えを説いて、前のような良い心持ちに戻してやろうと思うのだが、お前は私の教えを聞く気はあるか?」
と聞きました。
住職は、
「あなた様は、まぎれもなく仏様でございます。
このような悪い行いをする心を、とっとと忘れる方法を教えて下さいませ。」
と頼みました。
快庵禅師は、
「お前が、私の教えを聞く気なら、ここに来なさい。」
と言って、縁側の前にある平べったい石の上に座らせ、自分が被っていた紺染(あおぞめ)の頭巾を脱ぎ、住職の頭に被せて、証道歌の中の二句を授けました。
月が川を照らし、松に風が吹く。
長い夜、清らかな夕暮れは、何のためにあるのだろうか?
快庵禅師は、
「お前は、ずっとここにいて、じっくりとこの句の意味を考えなさい。
意味がわかった時、自然と本来の仏のような心に戻っているであろう。」
と、しっかり言い含め、山を下りたのでした。
この後、里人が住職に危害を加えられることはなくなったのですが、やはり、住職の
【解説】
とうとう出てきました青頭巾!
と言っても、タイトルでは「青」の字を使っているのに、なぜか本文では「紺」の字を使っているのですよね。
ちなみに、青頭巾は、その2ですでに出ていました(笑)
kihiminhamame.hatenablog.com
勘違いしている方も多いようなのですが、青頭巾は人食い住職のことではなく、あくまでも快庵禅師が被っていた頭巾のことなのです。
証道歌というのは、禅の本質が詠まれた詩なのですが、快庵禅師、この中の二句を取り出して、住職に意味を理解しろと言います。
これが禅問答と言うやつですかね!
とりあえず、ここではそのまま訳しましたが、この句にどういう意味が込められているかは、次回以降で改めて。
で、快庵禅師はそのまま山を下りて、住職を放置プレイするわけですが、はてさて。
次回に続く!
次回予告とくずし字クイズ
今回の最後の部分からの続きですね!
今回もノーヒントで!
一応、○印が漢字で、あとは平仮名という事だけ言っておきます♪
三つ目コーナー
わ~い、青頭巾被せてもらったよ♪
イマドキ、泥棒でもそんなの被らないよ。。。
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