街のコミュニケーションを下から支えます。
当サイトで「街をのぼりが埋めつくしている」という事を看破したのは編集部の石川さんだった。そこまでは言ってなかったかもしれないが。
しかし、のぼり以上のボリュームで街なみに跋扈しているのがそれを下で支えるベースである。もはや本来の目的を逸脱してのぼりを付けずに重なったり、ぼこぼこにへこんだりしながらも路上にはりついている。そんな健気なさまを大特集です。
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。
前の記事:「巣立ったツバメはどこにいる?「ツバメの集団ねぐら入り観察会」」 人気記事:「夏は池袋で毒づくし! 毒毒毒毒毒毒毒毒毒展(もうどく展)」 > 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー 新卒で入社したばかりの頃、一緒に働いていた私より遥かにキャリアが上のデザイナーに言われたことがあった。
「伊藤君、俺はね、あののぼりが大嫌いなんだよ。あんなものはね、景観を汚すノイズだよ」 補聴器大集合。
社会の荒波にただおろおろするばかりだった当時の私はそのかっこいいもの言い(特にノイズ)に一も二もなくくんくんとうなずき、「あれ、景観汚してますよね。ノイズですよね」と同じ事を繰り返してなにか理念のようなものを持った気になって悦に入っていた。
かわいいけどなんでよ。
あの頃のくにゃんくにゃんの俺よ、よく聞け。15年後の未来、すっかりおっさんになったお前はのぼりの魅力に取り憑かれ、一眼レフカメラを向けて「ほほう」と微笑をたたえながら商店街を徘徊しているのだ。オロカモノメ!
すいません、こんな写真ばかりです…
まずは様々なベースを観察一般的にはポールスタンドなどと呼ばれているこのベース達。色も形も様々だが大別するとポリエチレン等の樹脂、コンクリート、スチール等素材で分類ができる。
■ 樹脂製
中に水を入れ、重さをつけて安定させるタイプ。その軽さ(水を入れていない時の)と安価さから、昨今では一番シェアを伸ばしているのではないだろうか(散歩調べ) 形、色、設置シーン、全てにおいて多種多様である。 わりとよく見かけるタイプ。縦横フレキシブルに読める「家系」の記名もいい。
太陽を思わせるビジュアルがかっこいい。デザイナーズのぼりベース。
形状、カラーともになかなかレア。「上へ」というポジティブなメモがアクセント。
ビビッドなピンクも。どこかのパティスリーがマカロンみたいなお菓子にすればいいのに。
より安定感を増すために4隅から足が伸びるのもある。
これが…
キシャーン!
この足でがしゃがしゃ動き出してスターシップトゥルーパーズみたいに襲ってきたらこわい。「冷やし中華はじめました」とか「パチンコAKB」みたいなかわいい旗をはためかせながら大量に走ってくるのだ。やめてくれ、やめろ。
■ コンクリート製 家庭用の物干し台などはコンクリート製のものが多いので土台といえばこの素材のほうが親しみがある方も多いのではないか。 円筒形。カラーリングがおしゃれ
こちらもよく見かけるデザイン。
時おり家庭用の物干し台がのぼりベースに転用されているのを見かける。中央ののぼりを差し込む穴「のぼりホール(勝手に命名)」が長丸のタイプのものは物干し用である可能性が高い。
こういうの。
物干しの支柱は反対の方向に曲がっている2本の柱をくっつけている仕様が多い。(物干し台で画像検索するとわかりやすいです)したがって、差し込むための穴もポール2本分の長い丸穴になっている。心の底からどうでもいい話だ。
よりふっくらしたタイプ。平たくてコンパクトなカメラのレンズをパンケーキと呼んだりするがこれは頭に「蒸し」がつくほうだ。
沖縄で発見。サポートブロックがかっこいい。ロールス・ロイスと呼ぼう。
■ スチール製
なんせ鉄で重いので前出の2タイプより厚みを必要とせず、平べったい形状が多いが、醸し出す重厚感ははんぱない。 ローカルな商店では古いテーブルの脚などを転用した、やたら味わい深いベースに出くわすこともしばしば。 スチール製はたいがい錆びている。
この重厚感たるや。
ソフトクリームとの競演。筑波山の強風にもびくともしない。
繊細な細工。いい仕事してますよ、いい仕事してるベースですよ。
もっと見ていきましょう中央に「α」マークがあるのは店舗販促の大手「アルファ」社のものだ。名作ゲーム「ゼビウス」のアンドアジェネシスを思わせる要塞感がかっこいい。
中央にブラスターを撃ち込みたくなる。
グレーなんて特にほら。
このウェザリング(よごし)がまた。
フジカラーやリポビタンなど、ブランドにカスタマイズされたベースも存在する。
取り扱い店舗に販促用の備品として配布もしくは販売されていたものと思われる。 フジカラーを象徴するグリーン。取っ手がおしゃれ。
リポビタンは同じ形でブルー。集合するとかわいい。
四角バージョンも存在する。こちらのほうが新しいのかな?
リポビタンはほとんど薬局だがフジカラーはクリーニング店や雑貨屋など様々な業態の店頭に分布している。DPE取り次ぎの間口が広かった事も影響しているのだろう。
それにしても甘栗屋で見つけた時は彼の経てきた旅路の長さを思わずにはいられなかった。 甘くない世の中を渡ってきたベースが掲げる甘栗。
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