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ナイフでもカミソリでもなく、精巧なノコギリ刃

2013年04月28日
エラブタがコールタールのような黒で縁取られているのが、尾長グレの大きな特徴の一つであることはよく知られています。尾長グレのバラシについて語ると き、鋭い歯とともに、このエラブタでもハリスが切られることがあるといわれます。尾長グレ51.5cmのエラブタもじっくり観察してみました。

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エラブタは魚類学用語では鰓蓋骨(さいがいこつ)と呼んでいます。黒く縁取られている部分は主鰓蓋骨と呼ばれ、「エラブタでハリスが切られる」というと、この部分を連想される方もいますが、ここは骨が皮で覆われていてエッジは鋭くありません。

目を向けなければいけないのは、主鰓蓋骨よりも口側にある前鰓蓋骨と呼ばれる部分です。目の後ろ側から縦に割れ目がのび、下側で湾曲して口元へと続いてい ます。一見すると主鰓蓋骨と前鰓蓋骨はツライチで目立ちません。が、前鰓蓋骨を少し浮かせると驚くほど鋭いエッジが出てきます。

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それはナイフでもカミソリでもなく、1mm以下の刃が密集した精巧なノコギリ刃。こんなのに擦れれば、細いハリスなどひとたまりもありません! 釣った魚 を手に持ったとき、不意に魚が暴れて指をざっくり切り、文字通り手痛いしっぺ返しを食らうのは、この部分に触れたからです。

この尾長の前鰓蓋骨のエッジをよく見ると、何かに当たって、いびつに刃こぼれした部分がありました。釣り上げてから磯で暴れてこうなったのか、それとも……。

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下の写真はシマノ・磯カタログ2012-2013で、平和卓也さんの口太グレとのファイトシーンを撮らせていただいた水面カットですが、グレが反転したとき、ハリと体側に見えているハリスの位置関係から前鰓蓋骨の上にハリスがあると連想できます。

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尾長グレの前鰓蓋骨が刃こぼれしたのは、激しいやり取りでハリスと接触したから……と考えるのは、少し都合がよすぎるでしょうか。