疲労が蓄積する延長戦こそ、スタミナ自慢の素根の土俵だ。世界ランキング1位の金〓程(キム・ミンジョン)=韓国=との決勝は、延長27秒に動いた。素根の渾身(こんしん)の背負い投げに身長183センチの金の巨体が浮き上がる。「担ぎ技は大きい相手に効く。ずっと練習してきた技で投げきることができた」。難敵を倒しての金メダル。表彰台で表情がほころんだ。
負けられない理由があった。今年は4月の全日本体重別に続き、史上初となる初出場での優勝を果たした全日本選手権でも同じ階級の朝比奈沙羅を倒しながら、世界選手権(9月・バクー)代表の座は朝比奈に譲った。2月のグランドスラム・パリでは準決勝で敗退しており、朝比奈より海外勢との相性が悪いとみられたためだ。
「パリでは一瞬の気の緩みで負けた。これからは海外で結果を出し続けることが大事」と素根。練習では外国人選手を意識して、ひたすら大柄な男子選手と組み合ってきた。
「目の前の一つ一つに勝っていくだけ。また朝比奈さんにも直接対決で勝ちたい」。もう外国人に弱いとは言わせない。アジア王者の称号を手にした18歳が、2年後の東京五輪にまた一歩近づいた。 (木村尚公)