リハビリを兼ねての雑な作品ですが・・・
「俺はやつが嫌いだ」
子供のような言葉。
「もし今度目の前に現れたら、俺は奴を殺す」
悪魔のような敵意。
雷神は、自らの右腕を棄てた。
より大事なものを得るために。
失うものの大きさなど、見えはしなかった。
いや、見ないふりをしたのだろうか。
それは恐らく、本人にもわからない。
「兄上!」
戦場に響く、凛とした声。
フリージ家の騎士オルエンと、その兄ラインハルト。
二人は敵として、望まぬ戦いの中で出会ってしまった。
「オルエン、久しぶりだな・・・会えて嬉しいぞ。みな心配しているぞ。一緒にフリージへ帰ろう」
戦場に似つかわしくない穏やかな笑顔を浮かべ、ラインハルトは手を差し出す。
だが、オルエンは悲しそうに首を振った。
「兄上・・・私はフリージへは戻りません」
驚くラインハルトに、オルエンは言葉を続け、その決意をラインハルトに語った。
フリージがロプト教団に加担し、子供狩りを行っていた現実を知った事。
そして、それを止めるべく、オルエンは兄とは別の道を行く決心をした事。
ラインハルトとて、その事実を知らなかったわけではない。
ただ、それでも。
それでも彼は、この道を選んだ。
ただ、彼の一番大切なもののために。
「・・・これも運命か・・・」
ぽつりと呟いたラインハルトは、一振りの剣をオルエンに託した。
かつてイシュタルから託された聖剣。
オルエンが驚き、ラインハルトを見つめる。
それがどれだけ大切なものか、オルエンは知っていた。
そして、それを自分に譲るということが、ラインハルトにどのような決意をさせたのかも理解した。
「兄上・・・」
「話は終わりだ。次に出会った時は妹とて容赦はしないぞ!」
そう言ったラインハルトは、オルエンの方を振り返ろうとはしなかった。
騎士として国を守れず、兄として妹を導くこともできず。
私は何も為す事ができなかった。
だが、それでも。
せめて願うことが許されるなら。
貴女の選んだ道が、どうか幸せであるように・・・
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