不動産関係者の間では、新築時から10年、20年を経ても値下がりしない集合住宅は「ヴィンテージマンション」と呼ばれる。これまでは都内の高級住宅街などブランド力のあるエリアのマンションがほとんどだったが、近年、郊外にもそうした物件が現れているという。
その具体例が千葉にあるとの話を聞き、さっそく訪ねてみた。
人工知能でマンション価格を推定するサービス『家いくら?』は、前回の「郊外マンションの購入者は「人口減少・空き家時代の負け組」なのか」(https://gendai.ismedia.jp/articles/-/54014)でも、紹介したが、今回もこのサービスを使って、具体的な値段を見ながら、ヴィンテージマンションの実態に迫りたい。
(写真・的野弘路)
検見川、あるいは検見川浜という地名をご存知だろうか。
東京駅から電車で40〜50分ほど、幕張メッセや千葉マリンスタジアムのある幕張エリアの東南に位置し、千葉街道の宿場町として栄えた京成千葉線の検見川駅周辺(千葉市花見川区)と、高度成長期に埋め立て造成された検見川浜駅周辺(同美浜区)の二つのエリアに分かれる。街の形成過程はまったく異なるが、いまはどちらも住民の高齢化が進む古い住宅街だ。
不動産関係者が紹介してくれたヴィンテージマンションは、検見川駅側のエリアにあるという。駅近くの商店街にある老舗菓子店で、最近の街の変化について尋ねてみた。
「長いこと住んでるけど、大きな変化はないね。数年前に近所に新しいマンションができたけど、商店街に人が増えたわけでもなし、相変わらずです」
京成の検見川駅から500メートルほど東に歩くとJR総武本線の新検見川駅があり、銀行やスーパー、病院など街の機能はそちらに集中している。その新検見川駅でも、平均乗降人員数がこの30年間でおよそ7000人も減っていることを考えれば、街は停滞というより衰退に向かっていると言っていいだろう。
本当にこのエリアにヴィンテージマンションなどあるのか。疑念を抱きつつ、不動産関係者が教えてくれた住所に向かうと、確かにあった。
「ガーデンプラザ新検見川」。新検見川駅から徒歩20分、東に東京大学の総合運動場や研究施設の敷地が広がり、西には花見川が流れる。15棟ほどのマンション(1031戸)が立ち並ぶ敷地内は植栽が豊かで、小学校とスーパーが隣接する。あらゆる意味で住環境に恵まれ、外形的な事実だけでもそのグレードの高さがわかる。
人工知能を活用したマンション価格推定サービス『家いくら?』を使うと、敷地内で最も目立つタワー棟(14階建て)最上階の4LDKが2896万円。15年前の分譲時から平均して300万円程度しか価格が下がっていない(『家いくら?』調べ)というから驚きだ。
それにしても、衰退していく街のなかにあって、局地的な環境の良さや設備のグレードの高さだけを根拠に、ヴィンテージマンションであり続けることは本当に可能なのだろうか。実は、このエリアにはマンションの永続的な価値を支えるポテンシャルが他にもあるのではないか。
宿場町から発展した伝統的なエリアをいったん離れ、埋め立てで造成された海岸寄りのエリアを調査してみることにした。