(イラスト:タニグチコウイチ) 日経マネーの個人投資家調査で、2015年から3年連続でリスク資産の運用成績が5%以上プラスだった「3連勝さん」。また、16年と17年の2年連続で20%以上プラスの「大勝ちさん」。彼らは、15年の世界同時株安や16年のブレグジット・ショック、その後のトランプ米大統領の言動に振り回される相場などを乗り越え、勝ちを収めてきた腕利きの投資家だ。そんな3連勝さんや大勝ちさんの投資手法について、具体的に見ていこう。前回記事「「市場昇格」や株式分割先回り 5年連勝投資家のワザ」に引き続き、「株主優待狙い」を紹介する。
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のんりにあさん(ハンドルネーム)は、株主優待狙いの日本株投資で生活のかなりの部分を賄っている。専業投資家として以前は短期売買も頻繁に行っていたが、現在のメインは圧倒的に優待株だ。
「資産額が増えたことや、移住で身の回りの環境が変わったこともあって、投資スタイルも穏やかなものにシフトしました。今住む首都圏には、優待券を実際に使える場所も多いですしね」
現在、保有する優待株は約450銘柄。2017年末の相場上昇時に50銘柄程度を利益確定で売り、18年2月以降の急落相場で100銘柄程度を新たに購入した結果がこの数だ。「急落時には、それまで狙っていた銘柄が安くなったのでまとめて買いました。人気の優待株は普段値下がりしにくいので、相場全体に連れ安する時がチャンスです」。
のんりにあさんの売買ルールは優待内容によって異なる。QUOカードやギフトカードなどの金券類の場合はシンプルで、優待利回りと配当利回りを足した総合利回りが4%あれば買いを入れる。「その後、株価が上がって3%を割り込んでくると売りを考え始め、2%に近くなればまず売ります」。優待改悪や減配で総合利回りが下がった場合も、この基準は同じだ。
一方、食事券や買い物券、現物がもらえる優待銘柄の場合はケースバイケースで判断する。「自分にとって使い勝手がいい優待、本当に欲しい優待なら、利回りが下がっても持ち続けるケースはあります」。一度売ってしまうと、株価水準が高いままでは買い戻しにくくなるためだ。
■銘柄情報データベース、優待券マップを作成
のんりにあさんは、全ての優待銘柄の優待内容や必要株数などをまとめたデータベースを表計算ソフト「エクセル」で自作。株価を随時更新して利回りをチェックし、優待の魅力度を考慮しつつ売買の判断に生かしている。
のんりにあさんの勝ちワザ:表計算ソフト「エクセル」を使い、全ての優待銘柄の情報をまとめたデータベースを自作。株価を半自動で更新する仕組みも取り入れ、各銘柄の総合利回りがすぐに分かるようになっている 過熱感が出てきた銘柄は、妻と相談して売るかどうかを決めることも。買い物やレストランでの食事など、優待を夫婦で使うことも多いため、妻の意見も重視するという。2017年後半に急騰したペッパーフードサービス(東1・3053)は、優待を使い続けたいのでホールドすることにした。
複数単元持っていても優待利回りが変わらない銘柄、利回りが高まる銘柄は株数を厚めに持つ場合もある。「ただし、自分で使い切れる分までというのが基本方針です」。例えば、リンガーハット(東1・8200)は300株保有で年7560円分の食事優待券をもらい、「夫婦で年4~5回食事に行くくらいがちょうどいいですね」。
のんりにあさんはまた、各種の優待券が使える店舗を「グーグルマップ」上に記録したオリジナルマップも作成。「今いる場所の周辺でどんな優待が使えるのか、すぐに分かります」。株の売買に加えて、優待品の効率的な利用も優待投資の成功には欠かせないのだ。
17年からは、RIZAPグループ(札ア・2928)や東和フードサービス(JQ・3329)のように株式分割で株数が増えた銘柄を、妻の口座に一部移管して優待を2人分取るという手法も取り入れた。優待投資をブラッシュアップし、一段の資産拡大を目指す。
(日経マネー 小谷真幸)
[日経マネー2018年8月号の記事を再構成]

著者 : 日経マネー編集部
出版 : 日経BP社
価格 : 730円 (税込み)
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