2017/12/18
Earthtasia -Requested from Wishreal by
土屋です。
今回で終わりとなる歌詞解説は、FreyMENOW曲3曲目、「アースタシア」についてお届けします。


Earthtasia -Requested from Wishreal by "Loved-One" style-
作詞・作曲:影山さゆり 編曲:前口渉

mother 遠い昔から
貴方の温もり知ってたような
precious 光る旋律は
命が尽きても空巡るのね

星は生まれ変わり
緑は風と舞う

Earthtasia 大地揺るがす歌 歌え
Earthtasia 愛は険しき故
目を覚ませ
願いを叶えよ

Loved one 一人にしないで
灰色の世界を共に壊して
Precious 一人で行かないで
貴方の涙はわたしが救う

永久に
Earthtasia 大地揺るがす歌 歌え
Earthtasia 愛は険しき故
目を覚ませ
願いを叶えよ

輝かせ
願いを叶えよ

Loved one 遠い昔から
貴方の温もり 知ってたようだ



この曲は、OP/ED以外では最も早く収録され、完成した曲でもあります。そして私にとっては、拡張少女系トライナリーの「テーマソング」であり、象徴ともいえる曲です。そのため、アニメではACT4を皮切りに何度か使っていたり、BGM等でもこの曲のアレンジVerが多数存在したりといった仕掛けを作っています。

物語を最後まで見てくださった方には、この曲こそが、この物語を体現しているということを解っていただけたかと思います。そしてこの曲は、私の中では「ラスボス戦の結末(RPGで言えば真の姿にトドメを刺して断末魔をあげて倒れて)からスタッフクレジットの間」で流れることを想定して作っています。ただ、これは原案に書いたプロット想定に含まれるシーンであって、実際のアニメシーンにその場面は存在しません。ただ、楽曲自体は原案に沿って作られているため、それぞれのパート(=ABサビなど)毎に、「ここでは神楽が何をして、千羽鶴がこう行動して…」という想定があります。大元の原案プロットはBlu-rayの特典に収録されていますので、是非そのシーン想定がどこで、どう合わせる予定だったかを考えつつ読むと、世界が広がるかもしれません。実際、作曲家さんとは原案プロットを使って「ここでサビの大盛り上がり!」みたいな楽曲制作書を作っています。
結果的には、とてもラストに相応しい曲になったと思っております。この曲は個人的にもお気に入りで、出来上がったときからしょっちゅうヘビロテしておりました。

なお、本当に神楽がやりたい音楽は、Wishreal(ファンタジックヒーリング)の方であり、Wishphobia(ファンタジックメタル)については、どちらかといえば外からの圧力が強いです。そういったことも踏まえて物語を再度見てみると、神楽の反応(主につばめに対する)にもしっくりくるところがあるのではないかと思います。そしてこの音楽が神楽にとっても大きな鍵になっていることも、お分かり頂けるかと思います。

最後に小ネタを1つ。歌詞の各所にあるLoved oneという単語。これ、元々作詞家さんから頂いたときは全てがMotherでした。それは当然で、お渡しした資料が「母を想い祈る詩」だったからです。それを後半だけLoved oneにしたのは、神楽がこれを唄うシチュエーションで、この歌詞に登場する対象(=一人にしないで、と叫んでる相手)が原版と違うからです。設定上も、アルバムWishrealに収録されているこの曲は、すべてMotherのままです。ですが、最後のライブで神楽が唄った時だけ、即興でLoved oneに差し替えられているというわけです。この曲名の長いサブタイトルには、実はそういう意味が隠されているのです。


というわけで、10回にわたりお送りしてきた歌詞解説も今回で終了となります。
歌に強い想いを載せた本作ですが、実際にどんな想いを載せていたかについて、少しでも感じ取っていただけたなら幸いです。

2017/12/17
Commiato ~光は闇へと消え、そして訪れる光~
土屋です。
今回はFreyMENOW曲2曲目ということで、いわゆるラスボス戦曲である「Commiato」についてお届けします。


Commiato ~光は闇へと消え、そして訪れる光~
作詞:石川絵理 作編曲:姉田ウ夢ヤ

FreyMENOW
  神の怒り触れし者
  其の血を以(もっ)て贖(あがな)う

  驕(おご)る咎人(とがびと) 謳う
  今は虚しき歌声
  従わざるも 渾(すべ)て
  正しき神の手のなか 

つばめ
  理(ことわり)に背けど 
  揺るがぬ我が想い
  身を賭して汝を救わん
  果てるとも汝を護らん

FreyMENOW
  光 疾(と)うに 取り戻すこと叶わぬ
  世界 御心に由(よ)りて生まれ
  そして 神の御心のままに在る
  Dies irae(怒りの日)
  Dies irae venit(怒りの日来たれり)
  Dies irae venit

アーヤ
  ここに生を受け 自由生きる
FreyMENOW
  幻想(げん/そうorげんそう)

ガブリエラ
  自由与えなぜ 神は拒む
FreyMENOW
  懲らしめ

みやび
  誠なのか問う 貴方の神
FreyMENOW
  誠とは?

トライナリー4人
  自由ならば道 違(たが)うも有り
FreyMENOW
  与うなら 奪い(うばい)去れる

FreyMENOW
  何も成らない 待つのは終(つい)無き闇
トライナリー4人
  たとえ神に背を向けても 救い求めて闘う 
FreyMENOW
  果敢無き夢を追い 滅びゆく者達こそ…
トライナリー4人
  貴方こそが かけがえのない 仲間だから 
トライナリー4人
  闇を超えてひとつに 信じる心翼に
  共に行こう光射す未来へ



「トライナリーには普通の曲が無い」とよく言われますが、これがその最たるものかもしれません。曲の中で掛け合いをしています。それも本来はソロ曲のところに、勝手につばめたちが割り込んでかけ合い曲になってしまう、という、かなり特殊なシチュエーションです。更には楽曲には物語があり、その物語にも本来の形と、つばめたちによって変形された形がある、という4段構えくらいで変に変を重ねた曲でもあります。そして「アニメの中でどのようなシーンで、どう使いたいか(=演出想定)」もあるわけです。普通こんな仕事投げますよね。自分で曲を作るときは毎度普通にこんな感じではありますが、今回は自分ではありません。こんなの投げられても「できるかー!」と言われるのがオチです。ですが、姉田ウ夢ヤさんはやってくださいました。しっかりとその無茶な希望に添った曲を創ってくださったのです。

具体的には6行目「正しき神の手のなか」までが原曲、それ以降が即興ということになります。原曲のママ楽曲が進んでいくと、訪れるのはバッドエンドです。この物語は、FreyMENOWのアルバム(ガストショップにて2018年1月10日発売:2800円)にバンドルされている冊子に収録されていますが、非常に生々しく露骨なものとなっています。理由は、それこそがこの楽曲の目的だからです。すなわち、つばめが思い抱いている一つの希望という原動力、これがWishrealという物語によって支えられているわけですが、そのWishrealを否定し破壊する為にこの曲があるわけです。ですから、これ見よがしな結末を迎えます。
ですが実際には、つばめを皮切りにトライナリーのみんなで結末を変えてしまいます。それがこの曲になります。つばめたちはこの歌を書き換え結末を変えて、また、その元の物語であるWishphobiaの結末も変えてしまうのです。この曲、そして本作最大のギミックがここにあります。

私は昔から、こういった「楽曲の中に何かギミックを仕掛ける」のが大好きです。例えばアルトネリコ2のメタファリカのように、2つの曲が1つに合わさる、であるとか、ライゼフュラー(エリーのアトリエ・ボーカルアルバム)のように、アルバムの世界に誘う導入曲とこちらの世界に戻ってくる終曲が存在するアルバムであったりといった、その楽曲がその在り方をする意味を考えます。そうすることで、音楽は音楽というジャンルを超えて、世界になり得ると考えていたからです。今もその考えは変わっていません。

というわけで、今回はこの辺でお終いとさせていただきます。
次回は最終回、アースタシアとなります。

2017/12/16
Epyllion ~其は希望と謳う絶望の地での譚詩~
土屋です。
歌詞解説も残り3曲となりました。お待たせしておりますFreyMENOWの曲たちです。FreyMENOWの曲をいつ解説するかは非常に悩ましいところでしたが、いろいろ考えまして先にやってしまおうという結論になりました。
一部楽曲についてはフルVer公開前になりますが、歌詞を見て想像するか、もしくはフルVerリリースまで待たれるかご自身でご判断ください。


Epyllion ~其は希望と謳う絶望の地での譚詩~
作詞:石川絵理 作編曲:本田光史郎


神代(かみよ)の昔 荒ぶる世界に
遣わされたは 正しき神の僕(しもべ) (A long time ago)    
歓べ 讃えよ 尊き其(そ)の業(わざ)を
御心(みこころ)果たされ 光と静謐(せいひつ)
覆い尽くした


幾世(とき)は流れて 僕(しもべ)を戴(いただ)く 
黄金(おうごん)楽土(らくど)で はぐれし歌(うた)女(め)は視た

蔓延(はびこ)る咎(とが)の根 狂い廻(めぐ)る歯車
謳(うた)えよ 唱えよ 光取り戻すために

御宿星(みほし)出逢う 鐘楼(しょうろう)の頂(いただき)
通わせる心は何時しか
禁じられた 恋へと堕ちた
密やかなる唇 真紅(あか)く染まる (Give me your kiss)

贖(あがな)え 畏(おそ)れよ 
奇蹟は泡影(あわ)と消え 力は途絶えて
神の雷(いかづち)と嵐襲う
謳えよ 唱えよ
封(とざ)された檻(おり)のなか 囚(とら)われ鎖(つな)がれ
最期の刻(とき)まで 止むことなく


訊(き)くがいい 咎(とが)人(びと)
愛しき姫君(ひと)は云う 正しき教えに
背きて触れたる 神の怒り
泡沫(うたかた)の光明(ひかり)は 
常闇(とこやみ)を越ゆる辜(つみ)   
聖裁(さば)かれ 誅(う)たれよ    
吾(わ)が手の剣(つるぎ)で 貫かん
   

Cantate Deo, Cantate Deo, Cantate Deo, Jubilate Deo
神に歌え   神に歌え  神に歌え   神に歓喜せよ

Cantate Deo, Cantate Deo, Cantate Deo, Jubilate Deo
神に歌え   神に歌え  神に歌え   神に歓喜せよ

Laus Deo, Laus Deo, Laus Deo, Laus Deo
神を讃えよ  神を讃えよ 神を讃えよ  神を讃えよ

Laus Deo, Laus Deo, Laus Deo
神を讃えよ  神を讃えよ 神を讃えよ

Domine
主よ!
                                                     


FreyMENOW新事務所移籍後のファーストアルバム「Wishphobia」の1曲目です。Wishphobiaに限らず、FreyMENOWのアルバムには必ず「物語」がつきます。本来ならその物語と対になる形で歌詞を説明すべきなのですが、その物語を載せてしまうとこのブログがオーバーフローしてしまうので、今回は歌詞だけとさせてください。

実際この歌詞は、物語をほぼ忠実になぞっています。本当に、驚く程物語をよく表現している歌詞です。作詞をしてくださった石川さんには大感謝です。
Wishphobiaには、ひとつの大きな役割があります。それがWishreal(イシュリール)を破壊する、というものです。Wishrealとは、FreyMENOWが昔作ったアルバムであり、つばめが大好きなアルバムでもあります。それは希望を唄ったものであり、逆にこの曲はその希望を打ち砕くことを目的として作られた曲なのです。何故そのような(自らが作った曲を)打ち砕くようなことをするのかについては、ストーリーを追っていただければお分かり頂けると思います。

楽曲については、基本的にはメタル風味のハードなビートを刻むものとしながらも幻想的でファンタジックな旋律を持つという、やはり無理難題に近いことを依頼しています。この楽曲も他の歌曲同様5~6曲の候補の中から選んでおりますが、この曲については選んだ後にも作曲家さんに大変色々なお願いしており、完成した楽曲は最初の時とは随分と変わりました。色々我が侭な要望に対応してくださった本田さんには感謝の気持ちしかありません。

そして歌ですが、作中では徹底してFreyMENOWという形のアーティスト名しか出しておりません。これも世界観を大事にするために敢えて徹底した部分ではありますが、物語も一応の結末となりましたので正式にお伝えしますと、「Alternative-world artists of FreyMENOW(別世界におけるFreyMENOW)」は、神楽役の声優さん、平山笑美さんご本人です。
トライナリーでは、声優さんをオーディションで選出している話は様々な媒体で何度かしておりますが、ここでは更に突っ込んだ1つのエピソードに触れてみたいと思います。オーディションでは「歌唱力」を見る為に、審査項目にはセリフ以外にも「歌」がありました。そして、選出にあたり「歌が上手であること」が最優先として組まれました。その中でも神楽はFreyMENOWということもあり、尚その傾向が強かったと思います。神楽はその声イメージの性質上ウィスパー系の可愛い声を求めたわけですが、しかし歌唱力とウィスパー系ボイスはなかなか両立しづらいものでもあります。その為、理想はあくまで理想として、実際は妥協必須だろうと考えていました。わざわざオーディションに先だって「歌唱力とキャライメージの両立が難しい場合、キャライメージを優先にせざるを得ませんが、その場合はFreyMENOWとしての歌手は別立てで検討させてほしい」と東映アニメーションの関係者に相談していた程です。ところが、平山笑美さんはそのどちらも持っていたのです。歌手専業の方よりも歌唱力があるのではと思いますし、その歌唱表現の引き出しも多様でした。そしてこの曲もアースタシアも、ほぼ一発で殆どメインメロディを取り終えてしまうくらいの力量でした。
今でもたまに「FreyMENOWの歌は誰が唄っているのか」という話題がネット上で起こることがありますが、そういった話を見る度に、彼女の表現力の多様さにただ感服する次第です。

さて、次回は終章で唄われた歌、Commiatoについてお話したいと思います。

   
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