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【社会】

民法規定 二審も合憲 「嫡出否認訴え 夫のみ」

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 生まれた子どもの父親であることを法的に否定する「嫡出否認」の訴えを起こす権利を、夫のみに認めた民法の規定は男女同権を定めた憲法に反し、無戸籍となり不利益を受けたとして神戸市の六十代女性らが国に計二百二十万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(江口とし子裁判長)は三十日、「規定は父子関係を早期に確定させ、子に利益がある」とし、憲法違反には当たらないと判断した。

 その上で、請求を退けた昨年十一月の一審神戸地裁判決を支持、原告側の控訴を棄却した。原告側は上告する方針。

 高裁判決は現行の嫡出推定制度の当否について「家族の在り方の問題で、伝統や国民感情を踏まえ立法裁量に委ねられるべきだ」とし、国の対応の必要性に言及。法務省は既に嫡出推定を否認する訴えを、夫だけでなく妻や子も起こせるよう、制度見直しの検討を始めている。

 江口裁判長は、早期に父子関係を確定し子の身分を法的に安定させる利益は、生物学上の父子関係を一致させることより優先されると判断。嫡出推定の否認権は限定的であるべきで、扶養義務や相続関係が生じる夫にのみ与えた制度には一定の合理性があると認めた。

 一方で、夫の不当な要求などで不利益を被ることがあり得る妻や子に否認権を認めることも不合理ではないと指摘した。

 原告は六十代女性のほか、三十代の娘と八、四歳の孫二人の計四人。判決などによると女性は一九八〇年代、暴力を理由に当時の夫と別居し、離婚成立前に別の男性との間に娘を出産。民法の「婚姻期間中に妊娠した子どもは夫の子と推定する」との規定で、夫が法律上の父となるのを避けるため出生届を出さず、娘と、娘が産んだ孫二人が無戸籍となった。

 娘は法的に結婚できず、孫には就学通知や健康診断の案内が届かなかった。三人の無戸籍は夫の死後、認知調停などを経て一六年に解消された。

 

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