ざっつなオーバーロードIF展開 作:sognathus
<< 前の話
しかしニグンが彼に降っているという設定を下地にしているので、結果は原作と比べて大きく事なったようです。
「クレマンティーヌ……?」
「あぁれぇ? もしかして私の事知ってるのぉ? おっかしいなぁいくらアタシが強くても、カッパー程度の冒険者が私の存在を知っているなんてちょおっと考え難いんだけどなぁ……誰かに聞いたの?」
自分の名前を聞いて心当たりがあるような素振りを見せたモモンにクレマンティーヌは興味を持った。
正確にはモモンではなく、彼に自分の事を教えた存在にだ。
漆黒聖典を裏切って法国に追われる立場になったとはいえ、まさか法国のクソったれどもが自分の所在を掴む為にカッパー程度の冒険者にまで知れ渡るほど、元秘匿組織所属のメンバーの名前を漏えいさせするとは考え難い。
だとしたら法国とは直接関係が無い自分を知る者がモモンに情報を与えたのかもしれないとクレマンティーヌは考えたのだ。
そして彼女のその予想は半分当たった。
モモンはクレマンティーヌの問いに対して僅かにフルフェイスの兜を揺らして頷くと、件の人物の名を告げた。
「ニグンだ」
「……え?」
「知っているだろう? 陽光聖典のニグンだ」
「え? え? ちょ、ちょっと待ってよ。ニグンってあの? アタシが知っている方のニグン? ただ名前が同じだけの別人じゃなくて?」
「陽光聖典の、と言っただろう? そのニグンだ」
「はぁ……?」
クレマンティーヌはモモンが言っている意味が解らないといった様子で軽く混乱した。
てっきり法国とは関係が無い人間の名が出てくると思ったら、予想に反して実によく知っている男の名前が出てきたからだ。
(え? ニグンでしょ? なんで法国の貴重な陽光聖典の隊長が一介のカッパー風情のブリキ野郎なんかにアタシの情報を漏らしたってのよ……)
個人戦では圧勝できる確信を持ちながらも、クレマンティーヌはニグンがそんな不利な戦いをしない、寧ろ自分が優位に立ったとしても容易に隙など見せない非常に優秀な人物だという事を知っていた。
確かに個人戦で接近できたのなら目の前の男であっても勝機はあったかもしれない、だが先にも述べたようにニグンは決してそのような愚かな過ちを犯す男ではない。
ということは……?
「あんた、どうしてニグンを知っているの? そしてそいつは今何をしているの?」
「質問ばかりで礼儀を知らない女だな。まぁいい、せっかく得た
「は……?」
クレマンティーヌは今度こそ本当にわけが解らないと呆けた顔をした。
こいつは一体何を言っているのだろうか?
よりにもよってこいつがニグンを倒した?
そしてあろうことかあいつを部下にした?
本当にわけが解らなかった。
「ごめん、あんたが言っている事がわけ解んないんだけど」
「私の言葉の意味が解らない? 子供でも解る単語の方が多いはずだが?」
「そういう事言ってんじゃねーよ!!」
モモンの自分を舐めた切った態度に憤慨したクレマンティーヌは、大腿に巻いていたベルトから一瞬で投擲用の小型のダガーを引き抜くと、稲妻のような速さでそれをモモンの顔面に投げつけた。
しかしそこでまたもあり得ない事が、今度は実際に目の前で起こった。
「え?」
なんとモモンは目にも止まらぬ速さで投げつけられたそれを難なくキャッチし、逆に彼女が反応して避ける事ができない速さで投げ返してきたのだ。
「ああああああああ?!」
モモンが投げたダガーはクレマンティーヌの足に刺さるどころかそれを突き抜けて地面に埋没した。
クレマンティーヌは不意に襲われた激痛に思わず悲鳴をあげる。
「ふっ、一々態度が挑発的で品の無い女だと思っていたが、悲鳴はちゃんと女らしいじゃないか」
「!!! っ、て、てめぇぇぇぇ!!」
激情に駆られて思考が沸騰したクレマンティーヌはそのおかげで一瞬痛みを忘れ、本能で身体強化の武技を重ねると、凶悪な表情で人間の身体能力の限界を超えた速さの刺突をモモンに見舞った。
今度はモモンの方がそれを避けれなかったようだ。
怒りに我を忘れた一撃ながら見事にフルプレートの鎧からから覗く腕の付け根という狙い難い弱点にクレマンティーヌのスティレットは当たった。
(やった! ざまーみろ!)
致命傷でこそなかったが、腕と銅を繋ぐ骨は完全に粉砕したと踏んだクレマンティーヌは、これによってモモンが大幅に弱体したと確信した。
こちらも足を負傷したが、この男と比べれば何と言う事は無い。
後は痛みに喘いで満足に武器を振るえなくなったであろうこの男をたっぷりと嬲りながら殺すという楽しみを味わうだけだ。
「ひひ、さぁて……」
痛みより勝利とこれからの楽しみに心が躍ったクレマンティーヌが恍惚の笑みを浮かべた時だった。
「えっ?」
モモンを貫いたスティレットを握っていた手の自由が突如として利かなくなったのだ。
予想外の事態に焦ったクレマンティーヌがその原因を目で追って確認すると驚愕した。
何故なら自分の手の自由を奪っていたのは、先程『自分が』自由を奪ったはずの方のモモンの手だったからだ。
「そんな、どうし……」
クレマンティーヌは最後まで疑問を口にする事は出来なかった。
モモンがそれを言い終わる前に空いた方の手に持っていた大剣で器用にも肉薄していた間合いから彼女のスティレットを握っていた方の手を手首から先で切り落としたからだ。
「ぎゃっ、ああああああ?!」
迸る血飛沫と足の怪我のそれを上回る激痛にクレマンティーヌは再び悲鳴をあげる。
その悲鳴は二人の勝負が完全に着いた事を告げていた。
「ふぅ……っ、ふぅ……!」
ようやく落ち着きを取り戻したものの、焼ける様な痛みに涙を滲ませて惨めに後ずさりをするクレマンティーヌ。
モモンはそれをまるで興味が無い玩具に対するように様子で力なくただ眺めていた。
そしてそんな彼女にようやくモモンがかけた言葉は意外なものだった。
「降伏しろ」
「え……?」
「降伏するれば命だけは助けてやる。命だけは、この場は、な」
「はっ……は! 自分の勝ちが決まったからって、私が大人しく従うとでも……!」
はっきり言ってただの強がりだった。
だが、そんな無様な強がりでもクレマンティーヌはしないよりマシに思えた。
「てめぇの手にかかるくらない私は……!」
先に自分で自分を殺すと言いたかった。
だが、それより先にモモンが絶望を予感させる言葉を掛けてきた。
「自殺するか? ならするがいい。直ぐに生き返らせるがな」
「え……?」
「悪いが、私は蘇生魔法程度容易に何度でも行使できる力を持っている。そう何度でも、だ」
「……」
「頭では意味が解ったようだな。そうだ、お前が反抗的な態度を見せて自殺すれば私はそんなお前を、何度でも蘇らせてその度に殺す。哀れにも弱って抵抗する力がなくなっていくお前を飽きるまで嬲り殺し続け、その後ようやく飽きたら今度は早く死んで楽になりたいと思う様な苦痛が続く地獄に捉え続けてやる」
とてもカッパーのプレート、いや、そんなもの関係ない。
冒険者どころか人間とは思えないようなおぞましい脅し文句だった。
何故見た目はただの戦士なのに言っている事がただの脅しではなく本当だと思えるのだろう。
クレマンティーヌはじわじわと湧いてくる恐怖の波に心が冷えて犯されていくのを感じながら疑問に思った。
そんな時である。
「あっ」
モモンが不意に何故か自文の兜を外した。
クレマンティーヌはその兜の下から現れたモモンの素顔を見て再び驚愕の表情をする。
「見ての通り私は人間ではない。こうしてお前に正体を教えたのは、これが最後のチャンスだという事を理解させる為だ」
兜の下から現れた顔は骸骨だった。
それもただの骸骨ではなない。
双眸に不気味な赤い瞳が光り、ただのスケルトンより凶悪な顔に見えた。
そして兜を脱ぐと同時にモモンの鎧姿は消え去り、代わりに豪奢で重厚そうなアインズの本来の服装へと変わった。
「……」
クレマンティーヌはそれを見てようやく段々理解できてきた。
自分が今まで戦っていたのは職業戦士ではなく、ただの
そしてそれ同時にこれも理解した。
(こいつは人間じゃない……。だから……ああ、だからさっき言っていた私を何度も蘇生させて殺すという言葉は本当だったんだ……。本当にできるんだ……)
「おい、汚いな」
手首と足から未だに出血を続けるクレマンティーヌから新たに流れ出てきたものにアインズは気付いた。
それは鼻を突く異臭を放ち、クレマンティーヌの下腹部を覆っていた衣類に大きな染みを作って溢れ出てきた彼女の尿だった。
クレマンティーヌはついに正体を現したアインズに対する恐怖に気丈を保つ糸が切れ、失禁してしまったのだ。
「まぁ、まだ直接言葉は聞いてないが。どうやら白旗は上げたようだな。では……」
自分に近付いてくるアインズの白く大きな骨の手を、クレマンティーヌは最早なんの抵抗をする気も起こせずただ見つめ続ける事しかできなかった。
そんな彼女の耳にアインズのどこか喜ばしげな抑揚のない声が響く。
「
ただでは転ばないであろうクレマンティーヌをできるだけ苛めてみました。
結構満足してます。