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【社会】

本紙が入手 打ち合わせ「発言録不要」  経産省が文書で指示

 経済産業省が、公文書管理の運用ルールをまとめた内部文書に、省内外の打ち合わせの記録について「議事録のように、個別の発言まで記録する必要はない」と記していたことが分かった。本紙が複数の文書を入手した。三月に担当課から文書の説明を受けたという経産省職員は、「四月以降、政治家の発言や省庁間でのやりとりは一切記録に残すなと指示された」と本紙に証言した。 (望月衣塑子、藤川大樹、中沢誠)

 森友学園や加計学園の問題を受け改正された公文書管理のガイドラインでは、行政の意思決定の過程を検証できるよう文書の作成を求めている。経産省の運用では十分な検証ができない恐れがあり、行政プロセスの透明化をうたった制度が形骸化しかねない。

 本紙が入手した複数の文書には、「公文書管理について」との表題が付き、「平成30年3月 情報システム厚生課」と経産省で文書管理を担当する部署名が記載されている。いずれも、ガイドラインや経産省の規則の改正を受け、四月から省内で運用される文書管理の新たなルールを解説している。

 このうち三月九日付の文書はA4判で八枚。経産省関係者は「三月下旬、省内職員向けに配布されたもの」としている。

 この文書では、改正のポイントとして「政策立案や事務・事業の方針等に影響を及ぼす打合せ等の記録についての文書作成」と紹介。その補足説明として「『記録』は『いつ、誰と、何の打合せか』が分かればよく、議事録のように、個別の発言まで記録する必要はない」と記し、補足部分に下線を引いている。

 最終ページでは「今回の規程改正は、法律の趣旨を明確化する趣旨」だとして、改めて「議事録のように、発言の詳述は必要はない」と赤字で強調している。

 経産省の情報システム厚生課は「あくまでも最低限の記述、『いつ、誰と、何の打ち合わせ』かがわかれば良く、一言一句残しておく必要がないということを言いたかった。現場の職員たちの受け止めや実際の運用が、そうでない形になってしまっているとしたら、今後、変更し、周知していくことも検討していきたい」と話している。

 加計学園の問題では、関係機関の協議が記録に残っていないため真相究明が阻まれている。

 政府は、公文書管理を巡る一連の問題を受け、二〇一七年十二月にガイドラインを改正。意思決定過程や事業実績の検証に必要となる行政文書について、「原則として一年以上の保存期間を定める」とした。それに基づき、各省庁も行政文書の管理規則を見直し、今年四月から新たな運用を始めている。

◆「管理法の趣旨 逸脱してない」菅官房長官

 経産省の内部文書について菅義偉官房長官は三十日午前の会見で、「ガイドラインの趣旨にのっとり、議事録に限らず、合理的な跡付け、検証ができるような記録を残すように(指示するもの)と聞いている」と説明。運用上の問題について、「そこはありません。経産省ではしっかり対応している。(情報公開法や公文書管理法の趣旨に)逸脱してやっていることはないと思う」と否定した。

(東京新聞)

経産省が作成した内部文書。「発言の詳述は必要はない」と書かれている

経産省が作成した内部文書。「発言の詳述は必要はない」と書かれている
 

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