2018-08-30

開発者向けイベント危機

技術力が高いことで有名な、あるIT企業名前を冠した開発者向けの大規模イベントが、この週末に開催される予定だ。

参加者数は4桁になるらしい。

だが、裏でイベント運営炎上している。

俺は当日だけ運営を手伝うボランティアとして、このイベントに誘われた。

この手のボランティアは何度か参加しているので、特に抵抗はなかった。

ただ手伝うのは当日だけなので、このイベントが誰によって計画され、どのように運営されてきたのか、詳しくはわからない。

しかし今、イベント運営グダグダ状態なのは間違いない。

グダグダ最初に気付いたのは、当日ボランティア向けの説明会に参加したときだった。

説明会は、本番の数日前に1回だけ開催される。

説明会の日時は応募時には知らされなかったので、仕事などの都合で参加できないボランティアもいる。

そのためだろう、説明会の数日前にBcc

ボランティア説明会を○月×日にやりますが参加しますか? 参加できない人には、中継用のURLSlackで通知します」

という内容のメールが来た。

今どきBccかよ! と思ったが、それ以上に気になるのは、Slackだ。

どこのSlackだ。

ボランティア用のSlackがあるのか。

誘われたときにはSlackを使うなんて説明はなかった。

誘ってくれた人にも聞いたが(彼女も当日ボランティアの一人だった)、よくわからないという。

一方、回答を記入するGoogleフォームは、氏名と参加可否のチェックボックスコメントだけしか記入項目がなく、メールアドレスを入力できない。

これじゃあフォーム質問を書いても、返事をもらえないじゃないか

とにかく

説明会へは参加するが、Slackへの参加方法がわからなくて困っている」

コメント欄に書いて送信した。

しばらくして、Slackへの招待URLが書かれたメールが来た。またBccだ。

きっとメール送信者は俺の質問に返信してくれようとしたのだが、返信先のメールアドレスがわからず、ボランティア全員に送ったのだろう。

このときから運営への不審感が生まれた。

とりあえずSlackには参加できたが、俺のIDと、フォーム質問してきた人を、運営は(俺自身が申告しない限り)マッチングできない。

このフォームを作った奴は、SELECT文を書いたことがないのだろうか。

イベントネームバリューとの落差にがっくりする。

そして説明会の当日が来た。

開始時刻の直前にまたBccメールが来て、「このメールを受信した人の担当部署は××です」という本文と、同じ部署担当するボランティア全員の名簿が送られてきた。

名簿には、氏名しか記入されていなかった。リーダー格のボランティアにだけ、SlackID併記されていた。

これは本格的にやばい、と思った。

今日説明会に来なかった奴に連絡する方法がない。

最初ボランティア全員へのメールBcc送信したのは理解できるが、今回のメールは、名簿に名前が載ってる人だけに送られているはずだ。

当日は仲間になるのだから、必ずしもBccで送る必要はない。

というか、ボランティア用のSlackがあるのだから名前よりSlack IDを書いてくれた方が有難い。

現在は、全員が1つのチャンネルに押し込まれているので、どのIDが何を担当しているのか、俺にはさっぱりわからない。

というか、招待されたときIDを申告していないのだから運営も俺のIDと氏名を一致できない。

アホだ。運営はどアホだ。

さて説明会の会場に行くと、十数人が集まっていた。誘ってくれた彼女は欠席だった。

名簿の人数とイベントの規模から俺が予想した人数より、ずっと少なかった。運営側は5人くらいだった。

説明会が始まったが、俺と同じ不安を持っていたボランティアがいたようで、運営が設営手順の説明を始めるとすぐに

「この名簿を使って、同じ担当ボランティアにどうやって連絡するんですか?」

質問していた。まともな神経を持っていれば当然の質問だろう。

しかし、運営質問意味をすぐに理解できなかったようだ。

質問者と2、3回やりとりをして、質問意図を悟った瞬間、運営の全員が目を丸くした。

彼らは、こんな質問が来ることを夢にも思っていなかったのだ。

メールアドレスを他のボランティア知らせないという、個人情報保護施策だけを馬鹿正直に、忠実に実行したのだ。

このとき、はっきりと「このイベント炎上する」と悟った。

そして、俺の予想通り、説明会は紛糾した。

運営が事前に作ったボランティア向けマニュアルは穴だらけで、不備が大量にあった。

他のボランティアも少しずつ事態に気付いて、次々と運営質問を浴びせてきた。

説明担当していた運営スタッフ

「そこは我々が何とかします」

検討するので後で回答させて下さい」

などとかわしていたが、次第に声が上ずってきた。

テンパっているのが目に見えてきた。

そして運営は、ついにマニュアルの全面改訂約束した。

しかし、本番まであと数日しかないのだ。

説明会を仕切り直せる日はもうない。

マニュアル改訂にも膨大な時間がかかるだろうし、事前レビューなどできないだろう。

改訂後も不完全なマニュアルが俺たちボランティアへ渡されることは目に見えている。

説明会が終わると、事態を悟ったボランティア達が勝手チャンネルを作り出した。

運営が信用できないから、自分達だけで何とかしようと動き出したのだ。

俺も帰る前に同じ担当ボランティアを見つけて、チャンネルを新しく作って一緒に入った。

とりあえず仲間ができたことで、ほんの少しだけ安心した。

次の日には、Slack複数ボランティアから、膨大な量の質問運営へと投げられていた。

説明会ときには出なかった質問もたくさんあった。

運営にも解決できそうにもない質問もあった。

俺はただ見ているしかなかった。

仕事から帰ったらすぐに、PCの電源を切って寝た。

仲間はできたが、今Slackで打ち合わせをしてもマニュアル改訂でひっくり返されそうだ。

ならば何もしないで、ただ待っていた方がいい。

運営解決できない問題が起きたら?

マニュアル改訂が間に合わなかったら?

ま、俺の責任じゃないからな。なるようにしかならないな。

…このイベントに参加しようとしてる人、トラブルに巻き込まれたくなかったら、参加するのやめた方がいいと思うよ。

トラブルに巻き込まれる悪感しかしないよ。

…って言いたいけど、伝える方法あるのかな。

俺の担当じゃないから、知らないけどな。

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